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天国のマセル  作者: 中至
ナモクの怠慢
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ナモクを長とする統治が始まってからすでに六百日が過ぎていた。


地獄の会衆が統一されたとき暦が制定されたことは探索の進捗や体制の管理上非常に便利であった。ただし、この暦は決して客観的な正確さを伴うものではない。その決め方はなんと、ナモクが眠り、起きたことをもって「一日」とする、というものだった。


ナモクたちは、基本的にはアジョ会衆の生活習慣を下地に全体を取りまとめる体制を維持しつつ、探索によってもたらされる情報を待った。しかし、探索が始まってみると、ここまで手を広げているにもかかわらず目新しいものは何一つなかった。それでタミルノたちが新たな天光源を発見したという知らせはすぐに広まり、本拠地に残る住人たちや他の各隊の人々は驚いた。ある者は喜び、ある者はタミルノの功績だと讃えたが、それは同時に様々な不安や憶測も呼んだ。


その中で、イリアエルだけは別の点に執心して憤っていた。


「ナモク! タミルノはなぜ統治の定めを守らないのだ!」


イリアエルはナモクに食い掛かるように言った。しかしナモクはまるでのほほんと応じている。


「そうは言っても、別に自由な意思の疎通を禁じているわけでもないしな」

「いや、今度のような大事な発見の時には特に、正式な連絡経路を守るべきではないか?住人の中には無用な憶測を煽る者も出ているぞ」


イリアエルは、タミルノが時々ナモクと直接心を通じているのを知っていた。それを咎める理由はなかったが、内心ではあまり快く思っていなかったのだ。自分が、つまりナモクの腹心であり、統治上第二位でもあるところの自分がなぜか蔑ろにされているように思えた。


「まあ怒るな。すまなかったな、イリアエル。だが、、俺がそうしようと思わずとも、だれでも心を読めてしまうのだから、仕方ないではないか」

「別に今回のことだけではない。ナモク、あなた自身の気持ちが緩んでいるから何かに付けて問題が起こるのだ。なぜだ。前はこんなことはなかったではないか? 統治長の座に収まって呆けたか?」


イリアエルはわざとナモクの怒りを誘うようにけしかけた。だが、ナモクは相変わらずゆったりと構え、手製の水煙草を取り出して咥えた。


「そんなことより、臨時の統治会を開くから伝えてくれ。明日一番で集合するよう。俺はこれから寝るからな」


イリアエルの挑発もまったく意に介さず、ナモクは水煙草を咥えたまま席を立つと、不機嫌につっ立っているイリアエルの肩に一度手を置いて


「頼んだぞ。イリアエル」


とだけ言うと、そのまま部屋を出て行った。

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