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特に役目のない者たちから思い思いに散って休養した。マセルは、ヌルが大人たちの話を聞いて少し不安になっているのを察して声を掛けた。
「いろいろ想像はできるが、どうあれクルのご意思だ。きっと心配ない。」
「うん。そうだよね? 僕もそう思う……」
マセルがまだ不安そうなヌルの顔を見て微笑むと、ヌルも屈託ない笑顔で頷いた。
マセルが少し眠ると言うと、ヌルも横に来ていっしょに眠った。ヌルは父親以外ではマセルにとてもよく懐いていた。
もちろん、マセルに限らず仲間たちはヌルをとても可愛がっていた。しかし、同時に人々はいつも疑問に思っていた。ヌルが、その年齢にもかかわらずこの地獄に送られた理由を。
この地には他にも何人か子供がいるが、自然に考えれば、それはクルの目から見てその子が「否」とされていることを意味した。しかし、少なくとも信仰上、あるいは現世的な意味で言ってもこんな子供が地獄に貶められる程の罪を成し得るだろうか。
とは言え、ヌルが初めから父親とともにいたことは不幸中の幸いと言えた。そしてヌルは自分が地獄の側に分けられたということについてほとんど気にもしていないようで、いつでも子供らしい素直さで元気に振る舞ってくれる。これはむしろ周囲の者にとって救いであった。
ヌルは少しだけ眠ったが、マセルより先に起きてもう辺りを走り回っていた。マセルも目は覚ましたが、手持ちの道具袋を枕に、そのまま寝そべっていた。タミルノが近付いて言った。
「他には何も目新しい発見はないらしいな」
「そうか……」
各隊はどんなに離れても心を読み合うことで互いの様子をある程度知ることができた。しかし、無差別なやり取りだけでは全体が掴めないので、隊を分けるごとに正式に情報を伝達するべき人間を立て、本拠地に各隊の情報が一元的に伝えられる取り決めになっていた。そして最終的にすべての情報が集約される役はイリアエルが担っていた。
このようにすれば、今度は逆にイリアエルの心を読めばだれでも全体の状況がある程度把握できる。この方法は、地を探索するという目標が決まったときイリアエル自身が発案したものだった。
「天光源があったことはもう伝えたが、ナモクは特に計画を変更する気はないようだ。マセル、お前、この先どうしたらいいと思う?」
「うん、今のように全方向に隊を拡散するやり方はもう限界だろう。その辺はナモクたちも考えているだろうが……だが、かと言って今さら本拠地まで戻るのもなあ。せっかくここまで出張って来たのに」