豚
豚と人間の見分け方は簡単だ。ただ鳴くだけか、鳴きながらも行動するか。ただこの違いだけだ。こんな文句を何処かの本で読んだ気がした。それは当たり前だ。豚と人間は違うに決まってる。
体が重い。精神的な物でではなく現実的に重い。既に半年前に体重は三桁近くになっている。今は測定していないので知らない。一生懸命チャリを漕いで、自宅に着く。階段を掛け上がり自室へ向かう。汗を吸って重くなった制服をベッドの上に脱ぎ捨てる。お腹のラインが気になるが、いつでも痩せれるので問題はない。
学校の鞄からペットボトルの炭酸飲料を取り出し飲み干す。口から喉、胃へと刺激が広がる。ふと、鞄に眼を向けると、教科書の合間からテストが顔を覗かせる。30点と赤点ギリギリのライン。いつもそうだった。
努力したところで結果なんて実りやしない。どんなに頑張ったところで周りの奴らが容易に追い抜く。勉学やスポーツ、それらは俺にとって努力の対象ではなく、ただ苦痛を生むものでしかなかった。だから努力することを辞めた。
恋愛は特出して俺に苦痛を与えてくる。素のままの俺のことを愛してくれる人など何処にもおらず、いい出会いなんてものは何処にもなかった。銀幕や電子画面の向こうではモテるのに、何故俺はこっち側ではモテないのか。だからいま現実で恋愛することを辞めた。
パソコンの電源をつける。この箱の中には理想の女性はいくらでもいる。俺の選んだ選択肢で彼女達は頬を赤らめるし、喜び、泣く。俺の恋愛は今のところここで十分だ。
「帰って来たなら少しくらい勉強しなさい」
ばばあが下の階からうるさい声をあげる。
「うるせぇ! ばばあ! しね」
低収入の親父と結婚して満足してるばばあ。そのまま、ずっと家事洗濯を続けて、痴呆になって野垂れ死ぬ運命だろう。
だが、俺は違う。将来が明るい俺はそんな普通の人生とは違う。高校を卒業して、良い大学に入って頭脳職に就くのも良いだろう。綺麗な奥さんをもらい、幸せな家庭を築く。頭脳職といってどんなのか分からない。とりあえず一杯お金が貰える仕事がいい。恋愛だって大学に入学したら俺の良さに気付いて、女性の方から来てくれるだろう。
仕事はラノベを書いてみるのも良いだろう。あれなら俺にも書ける。天使と悪魔の混血の人間が悪魔を倒していくなんて話はどうだろうか。壮大な設定だ。これなら売れるだろう。今まで小説なんてものを書いたことはないが、出来る気がする。
別に今からやろうとすれば直ぐにでも出来る。ただ今はその時ではないから、しない。しかるべき時が来たらする。俺はそういう男だ。
あぁ、だから今は何もしたくないし、何も考えたくない。電子の海に思考を漂わせたい。




