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仕組みの外側  作者: Svolik
第二章
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第五十章

戦場は静まり返っていた。本来なら戦いが始まる直前の緊張に満ちているはずの空間が、どこか異様なほどに静かで、まるで世界そのものが一瞬息を止めているかのようだった。両軍は互いに向かい合い、整然と陣を組み、すべての準備は整っている。それでも、まだ何も動き出していなかった。


彼はすぐに異変に気づいた。


魔術師たちの列。


そしてその前に並べられた盾。


それは通常の装備ではなかった。厚く、重く、明らかにこの状況のために用意されたもので、狭い覗き穴と腕を通すための開口部だけが設けられている。その盾は魔術師だけでなく、その背後にいる者たちまでも覆い隠していた。すなわち、彼女たちもまた完全に視界から遮られていた。


どこにいるのかも分からない。


何人いるのかも分からない。


存在の気配すら読み取れない。


彼はその列をじっと見つめるが、何も捉えられない。そしてそのとき初めて、自分の魔法がこの防御を貫けるのか確信が持てないことに気づく。仮に貫けたとしても、その先に何があるのかが分からない。


それは、明確な対策だった。


敵は学んでいる。


彼は短くアヤノを見る。


言葉は不要だった。


二人は同時に前へ出る。


急ぐことも隠れることもなく、ただ列から離れ、両軍の間の空間へと歩み出る。その距離はすでに単なる間隔ではなく、境界となっていた。


彼はバスタードソードを。


アヤノはエスパドロンを。


互いに抜き身のまま。


並んで立つ。


敵に向かって。


そして、動かない。


沈黙が長く伸びる。最初は理解されていない。ただの異常な動きとして受け止められる。しかしやがて、その波は広がっていく。視線が動き、ざわめきが伝わり、認識が形を持ち始める。


彼女が見られている。


彼らの聖女が。


拘束もなく。


壊されてもいない姿で。


武器を手にし、別の召喚者の隣に立っている。


それは、彼らの理解の枠を外れていた。


二人の召喚者が同時に存在し、同じ側に立っているという事実は、単なる戦力の問題ではない。それは前提そのものを崩すものだった。


沈黙はさらに深まる。


誰も動かない。


命令もない。


風すら止まったかのように感じられる。


そして、その中で。


何も起こらないはずの瞬間に。


事態は動いた。


攻撃は来ない。


隊列も崩れない。


突撃もない。


代わりに、ゆっくりと、しかし確実に。


敵軍の前線が動く。


最初はわずかに。


やがて明確に。


それは混乱ではなかった。逃走でもない。統制の取れた動きだった。


彼らは戦わないことを選んだのだ。


静かに、整然と、隊列を保ったまま方向を変え、そのまま後退していく。戦場を離れていく動きは乱れず、まるで最初からそうするつもりだったかのようだった。


彼はしばらく動かなかった。


何かが続くのではないかと、まだ構えていた。


しかし何も起こらない。


戦場はそのまま、空白のまま残される。


戦いは始まらなかった。


それが、何よりも現実離れしていた。


帰還したあとも、その感覚はすぐには消えなかった。身体には疲労がなく、心にもいつもの重さがない。ただ、静かな驚きと、ようやく訪れた緩みのようなものだけが残っている。


統治者エドラン・ケルヴィスは自ら彼らを迎えた。その言葉は簡潔だったが、そこには隠しきれない理解があった。


「戦の流れを変えたな」


それは評価ではなく、事実の確認だった。


祝福は控えめだったが、だからこそ重みがあった。


翌日、使者が到着する。


和平の申し出だった。


複雑な条件はなく、時間稼ぎの意図も見えない。ただの意思表示だった。彼らは自分たちの聖女に対して剣を向けることを望んでいない。その存在を損なうことを拒んでいる。


それが理由だった。


彼はその報告を聞きながら、自分がまだすべてを理解しているわけではないことを感じていた。世界そのものを変える方法はまだ分からない。それでも、確かなことが一つある。


この瞬間、少なくとも。


戦場での大量の死は止まった。


平和が訪れた。


そしてそれは、初めて空虚ではない言葉としてそこにあった。


彼は窓の前に立ち、城の庭を見下ろす。日常がゆっくりと戻り始めている。その光景を見ながら、これが終わりではないことを知っている。


これは始まりだ。


いつか、彼はこの世界をさらに大きく変える。


そう確信しながら。



終わり

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