第四十六章
研究を続ける中で、彼の関心は観察から実践へと少しずつ移っていった。
これまでは主に分析だった。他人のやり方、他人の制限、他人の前提を見てきた。しかし、どこかで理解した。自分で試さなければ先へ進めない。問題が魔法の「使い方」にあるのなら、別の使い方を試すしかない。
彼は最も分かりやすいところから始める。
形だ。
魔法に形を与えようとする試みは、予想以上に難しかった。手の上に火を灯すのは簡単だし、物体を動かすこともできる。だが、その火を手から離れた位置で「球」として保とうとしたり、土を集めて弾の形にし、それを保ったまま飛ばそうとすると、途端に制御が崩れる。
力が足りないわけではない。
保持ができないのだ。
それには継続的な集中が必要で、ほとんど途切れなく意識を向け続けなければならない。少しでも気を緩めれば、形は崩れ、散り、元の「生の魔力」に戻ってしまう。
そして彼はすぐに理解する。
なぜ誰もそれをやらないのか。
遅いのだ。
戦場では致命的なほどに。
ひとつの動作に時間がかかる。形成し、維持し、調整する。その間に相手は動く。結果として、使い物にならない。
さらに、習得にも時間がかかる。
単なる力ではなく、集中力、精度、持続的な制御が求められる。短期間で身につくものではない。
だから選ばれるのは、単純で速い方法。
放出。
それでも彼は試みをやめなかった。
むしろ、そこで気づいた違いがあったからだ。
同じ魔法でも、形を保つ場合は明らかに消費が少ない。放出のように一気に使い切るのではなく、力を保持し、分配し、無駄に散らさない。
それは彼が最初から探していた問題と直接結びついていた。
もし昔は魔法で女性が死ななかったのなら。
もし回復が可能だったのなら。
原因は魔法そのものではなく、その使い方にある可能性が高い。
その仮説を持って、彼は再び書庫に向かった。
今度は探し方が違った。
そして、ついに断片を見つけ始める。
明確な説明ではない。
体系だった理論でもない。
だが確かに存在する記述。
「形成された術式」
「維持された構造」
「固定されたイメージ」
そうした言葉が、あちこちに散らばっている。本文ではなく、注釈や補足の中に、まるでかつては常識だったものが、今では説明なしに扱われているかのように。
それは証明ではない。
だが、裏付けにはなる。
かつては、そうしていた。
そして、おそらくその時代には、魔法は女性の命を奪わなかった。
その一方で、彼の中にもう一つの疑問が浮かぶ。
より実践的なものだ。
彼自身は、まだ一度も女性から直接魔力を引き出したことがなかった。
見たことはある。
仕組みも、概念としては理解している。流れをつかみ、引き出し、使う。
だが実際にはやっていない。
そして、具体的な方法を知らない。
そこは完全に空白だった。
同時に、彼はもう一つの可能性を試すことにする。
事前に十分に説明し、絶対に外に漏らさないことを確認したうえで、リラとカイラに簡単な魔法の試みをさせた。
誰にも知られない形で。
閉じた空間の中で。
結果は予想以上だった。
二人とも、魔力の素質を持っていた。
未熟で、未訓練ではあるが、確かに存在する。
カイラは反応が速く、力は外へと向かう。押し出す、叩きつける、衝撃として放つ――粗いが、明らかに戦闘向きの性質だった。
リラは逆だった。動きは穏やかで、安定している。保持する、整える、変化させる――破壊ではなく、状態そのものに働きかける方向。
違いは力の強さではない。
向きだ。
彼はそれを観察しながら、同時に限界も理解する。
測る手段がない。
基準がない。
数値も、比較対象もない。
強いか弱いか、速いか遅いか――それ以上は分からない。
だから彼は踏み込みすぎないことを選んだ。
小さな試み。
短い検証。
すべては彼らの内側で完結させる。
なぜなら、ここまでで十分に分かっていたからだ。
もし彼の仮説が正しければ――
それは価値では済まない。
危険だ。
あまりにも。




