表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕組みの外側  作者: Svolik
第二章
44/51

第四十四章

この日を境に、状況は明確に変わった。それは徐々にではなく、かすかな変化でもなく、ほとんど即座に感じ取れるものだった。それまでのすべてが、この一点へと収束していたかのように。アヤノはもはや自分の内側へと閉じこもることも、距離を保つこともやめていた。むしろ彼女は、自分がこれまで理解できず、拒絶してきた領域へと、意識的に踏み込んでいった――親密さ、性交、身体そのものの感覚へと。彼女は彼を求め、何度も自ら戻っていく。その動きには迷いもためらいもなく、ただ確かめるように、感じ取るように、理解しようとする意志があった。


その在り方には柔らかさはなかった。むしろ決意、あるいは頑なさに近いものだった。彼女はひとつひとつの感覚を、ほとんど貪るように受け取り、途中で止まることを拒んでいた。まるで一度でも手放せば、再びそれを失ってしまうと知っているかのように。それは単なる欲求ではなく、身体を通して自分を再構成しようとする動きだった。かつて自分にとって異物であり、脅威でさえあったものを、今は自分のものとして引き受けようとしていた。


彼にとっても、それは明確な変化だった。彼女はもはや受け身ではなかった。自分から踏み込み、関わり、その中で自分を形作っていく。その動きには従属も適応もなく、選択があった。彼はそれを見ていた。彼女が壊れた形を修復しているのではなく、新しい形で自分を組み直していることを。リラとカイラはすぐには加わらなかった。これはアヤノ自身の時間であり、彼女が自分のペースでそこに到達する必要があると理解していたからだ。二人は距離を保ちながら見守り、やがて数日が過ぎ、彼女の動きの中に確かな安定が現れたとき、自然にその中へと戻っていった。そしてそのときには、誰にとってもそれは侵入ではなく、すでに出来上がった流れの延長だった。


並行して、彼は彼女にもう一つの方向を示した。


「剣はまだ扱えるはずだ」と、ある日彼は静かに言った。「それは失われていない」


彼女は最初、半信半疑のように彼を見る。それでも剣を手に取ると、身体はそれを覚えていた。動きはすぐに戻り、最初は確かめるようだったやり取りも、やがて実戦に近いものへと変わっていく。


彼にとって、それは予想以上に価値のあるものだった。城の中にはもはや彼と拮抗できる者はおらず、彼女との訓練は久しく失われていた「対等な相手との感覚」を取り戻させた。アヤノにとっては、それ以上の意味があった。剣は単なる技術ではなく、自分を取り戻す手段だった。動きの中で、判断の中で、彼女は再び自分自身を感じ取っていく。


ある日の訓練の後、彼は彼女に魔法について尋ねた。


「魔法は使えたのか。それとも剣だけか」


彼女は少し考え、記憶を探るように答える。


「召喚のあと、少しだけ教えられた。癒しの術。でも……強くはなかった」


彼はそれをそのまま受け取り、すぐに言う。


「今やってみろ」


彼女は意味が分からず彼を見るが、彼が肩の痣を示すと、表情が曇る。


「もう……使えない」


それは迷いではなく、当然とされてきた前提だった。


「処女じゃないからか」


彼女は視線を落とし、短く頷く。


「そう」


彼は肩をすくめる。


「だから何だ。試してみればいい」


そこには挑発も否定もなく、ただ単純な提案があるだけだった。


彼女はしばらく彼を見つめ、それからゆっくりと手を伸ばし、彼の肩に触れる。半信半疑のまま、集中する。


そして――変化が起こる。


最初はわずかに。


次に明確に。


痛みが消え、緊張が抜け、痣が薄れていく。


彼女は思わず手を引く。


彼も動かない。


二人はそのまま見つめ合う。


長く。


言葉を挟まずに。


そしてその沈黙の中で、理解が形を取っていく。


当然とされていたもの。


疑われることのなかった前提。


この世界の構造そのものを支えていたはずのもの。


それが、ただの思い込みに過ぎない可能性。


誰もそれを確かめようとしなかったという事実。


彼は先に視線を外す。逃げたわけではない。結論が見えてしまったからだ。


「これは誰にも言うな」


静かだが断定的な声だった。


彼女はすぐに頷く。その意味を理解していたからだ。


もしこれが知られれば、彼女は再び単なる人間ではなくなる。より価値があり、より危険な「資源」として扱われることになる。そしてこの世界では、そうした資源は決して放置されることはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ