第二十章
その数日間、彼はほとんど自分のものではなかった。
時間は途切れずに流れ続け、朝と夜の境界さえ曖昧になっていく。会議は次から次へと続き、場所が変わり、顔ぶれが変わり、しかし話される内容は一つの流れに収束していった。地図の上で線が引かれ、駒が動かされ、距離と時間と兵力が数字として並べられる。そのすべてが、まるで計算の一部のように扱われていた。
彼はそれを聞いていた。
最初はこれまで通りに、分解し、比較し、評価しながら。だが次第に、その聞き方自体が変わっていく。細部ではなく、全体の流れを見るようになる。そしてはっきりと理解する。
これは備えではない。
避けられない流れだ。
戦争は、もう始まっている。
その認識と同時に、彼の中で別の変化が起きていた。
それは突然ではなかった。
最初は、ただの違和感だった。会議が長引くほど、苛立ちのようなものがわずかに積もる。早く終われと思う。ここから離れたいと思う。その感覚が何なのか、最初は分からなかった。
だが、やがて理解する。
以前の自分なら、そんなことは感じなかった。
死ぬかどうかなど、問題ではなかった。
それは選択肢の一つに過ぎなかった。
今は違う。
その可能性に、重さがある。
そしてその理由は、驚くほど単純だった。
彼には、失いたくないものができていた。
部屋へ戻るたびに、それはよりはっきりとした形になる。扉を閉めると、外の世界は一歩遠ざかるが、完全には消えない。戦争の気配は、壁の向こうで確実に動いている。
だが、その中に彼女がいる。
リラ。
彼女はもう「待つ」ことをしなかった。整えることも、隠すこともない。ただそこにいる。窓辺に座っていることもあれば、ベッドに無造作に横たわっていることもある。あるいは、彼が入ってきた瞬間に近づいてくる。
そのどれもが自然だった。
作られていない。
そして彼は、そこへ戻ることを無意識に求めていた。
切り替えるためではない。
繋ぎ止めるために。
夜になると、それはさらに強くなる。
静けさの中で、昼間に押し込めていた思考が浮かび上がる。戦争、死、失う可能性。それらを打ち消すように、彼は彼女を引き寄せる。
もうためらいはない。
彼は彼女を抱く。
遠慮なく。
抑えず。
彼女の身体の温もりが、彼の中の緊張を直接ほどいていく。彼のチンポは彼女の中に入り、その内側の熱と締まりをはっきりと感じる。それは一瞬で消えるような感覚ではない。そこに留まり、動くたびに応じてくる。
彼はそれを強く感じる。
あまりにもはっきりと。
彼女の中の感触が、自分を包み込み、逃がさない。締まり、緩み、また締まる。その反応が一つ一つ伝わってくる。
そして彼はそれを無視しない。
むしろ、確かめるように動く。
彼女を抱きしめる腕に力が入る。離さないように。どこにも行かせないように。
それは優しさではなかった。
だが乱暴でもない。
ただ、強かった。
彼女をその場に留めるための、ほとんど本能的な力だった。
そしてリラはそれを拒まない。
むしろ受け入れる。
彼女の身体は応じる。彼の動きに合わせ、さらに深く引き込むように動く。その反応が、彼の中の何かをさらに強くする。
それは単なる欲望ではなかった。
失いたくないという衝動だった。
その瞬間、この感覚、この関係、この存在を、どこにも逃がしたくないという衝動だった。
やがて二人は静かに横になる。
呼吸が落ち着き、身体の緊張がゆっくりと抜けていく。
その中で、彼ははっきりと理解する。
自分は、恐れている。
痛みではない。
敗北でもない。
死そのものですらない。
それによって、これを失うことを。
リラを。
この関係を。
彼女の存在を。
彼は手を伸ばし、彼女の背に触れる。彼女は無意識のまま少しだけ彼に寄る。その動きが、彼の中で何かを確定させる。
もう、戻れない。
あの空虚な状態には。
何も感じないことが強さだったあの頃には。
外では状況がさらに動いていた。
報告は曖昧さを失い、具体性を帯びていく。隣国は明確に戦の準備を進めている。兵が集まり、物資が運ばれ、境界はすでに前線へと変わりつつある。
そしてそこにいる。
もう一人。
召喚された存在が。
彼は窓の前に立ち、その報告を聞きながら、すぐに結論を出そうとはしなかった。かつての彼ならそうしていただろう。状況を分解し、最適な選択を探し出す。
だが今は違う。
まず受け入れる。
そして、その上で考える。
戦争は起こる。
自分はそこにいる。
問題は、それをどう扱うかだ。
彼は振り返る。
部屋の中に、リラがいる。
何も隠さず、何も恥じず、ただそこにいる。
そしてそれは、彼女だけの話ではない。
自分もまた、そこに立っている。
抑え続ける側に戻るのか。
それとも、このまま進むのか。
彼はゆっくりと息を吐く。
答えはまだ形になっていない。
だが一つだけは、はっきりしていた。
もう、以前の自分には戻らない。




