表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕組みの外側  作者: Svolik
第二章
19/51

第十九章

あの夜のあと、二人の間から消えたのは気まずさだけじゃなかった。言葉を選ぶ癖そのものが消えていた。何をどこまで言っていいのかを測る必要がなくなり、思っていることを途中で削る必要もなくなった。それは話し合って決めたことじゃない。ただ自然にそうなった。


翌日、それはすぐに分かった。


二人は並んで横になっていた。まだ完全に日常へ戻る気もなく、ただ身体の余韻の中に留まっている時間だった。リラは目を閉じたまま、彼の腹をゆっくり撫で、そのまま下へと手を滑らせる。その動きに遠慮はなかった。確認でもない。ただ触れたいから触れている。


「ねえ」と彼女は静かに言った。「どう感じてる?」


彼は少しだけ顔を向ける。


彼女は目を開け、まっすぐに彼を見る。


「私の中でさ。お前のチンポ、どう感じる?」


言葉はそのままだった。


隠さない。


濁さない。


それがもう当たり前だった。


彼は一瞬だけ黙ったが、それは言葉を選んでいるからではなく、自分の感覚をそのまま掬い上げているだけだった。


彼は彼女の太ももに手を置き、その温度と柔らかさを感じながら答える。


「はっきりしてる」


声は落ち着いていた。


「中が熱くて、締まってて、ちゃんと分かる。どこにいるか全部」


彼は少しだけ息を吐く。


「ただ入ってるって感じじゃない。お前が、内側から掴んでくる感じだ」


彼女は黙って聞いている。


視線を逸らさない。


「時々、もっと奥まで行きたくなる」彼は続けた。「限界とか関係なく。最後まで入ってるはずなのに、それでも足りないって思う」


言葉はそのままだった。


彼は止めなかった。


彼女も止めなかった。


リラはゆっくりと息を吐き、指を少し強く彼に押し当てる。


「分かる」


彼女は小さく言う。


「中に入ってるとき、ただ触れてるんじゃないの。お前がそのまま中に残ってる感じがする」


彼女は少しだけ身体を寄せる。


「離れても、まだいるみたいな」


その言葉に飾りはなかった。


ただの事実だった。


そしてそれは、不思議なほど自然だった。


彼はその瞬間、自分の中で何かがはっきりと理解できた気がした。今までの関係では、ここまで来たことがない。どれだけ近づいても、言葉にできない領域が必ず残っていた。


やることはできても、言えない。


感じても、伝えない。


それが当たり前だった。


ここでは違う。


全部言える。


全部通じる。


そしてそれが、関係を壊すどころか、むしろ強くしている。


彼は初めて、それを完全に実感した。


リラはすでに彼に身体を預けるように近づいていて、足を絡めるように乗せてくる。その動きにも確認はない。ただそうしたいからそうしている。


「じゃあさ」と彼女は言う。「まだ足りないってことだよね」


彼は彼女を見る。


「どう思う?」


彼女は口元を少しだけ上げる。


「もっと入ってほしいって思ってる顔してる」


彼は小さく息を吐く。


否定しなかった。


する必要がなかった。


彼女はそれを見て、軽く笑う。


「いいよ」


その一言に、許可も挑発も混ざっていない。


ただ自然な流れだった。


しばらくして、二人はまた静かに横になった。


今度は会話もなく、ただ同じ空気の中にいる。


その状態が、不思議なほど落ち着く。


彼はふと、自分の過去を思い出していた。これまで関係を持った女たちのことを。悪くはなかった。むしろ良かったと言えるものも多い。


だが、ここまで来たことはなかった。


こんなふうに、何も隠さず、何も削らず、身体も言葉もそのまま出せる関係はなかった。


そして、それがどれだけ違うかを、今になって理解している。


外の世界は、その間にも変わっていた。


最初は噂だった。


次に報告になった。


そして今は、現実だった。


隣国は明確に動いている。兵を集め、資源を運び、境界線に力を集中させている。それは威嚇ではない。準備だ。


戦争の。


そしてそこにも、召喚された存在がいる。


それはもう疑いようがなかった。


彼は窓の前に立ち、報告を聞きながら、すぐに結論を出そうとはしなかった。以前ならそうしていた。すぐに分析し、選択肢を並べ、最適解を探していた。


今は違う。


まず受け入れる。


そのあとで考える。


戦争は起こる。


そして自分もそこにいる。


問題は避けるかどうかではない。


どう関わるかだ。


彼は振り返る。


部屋の中にはリラがいる。何も隠さず、何も取り繕わず、そのままの姿で。


そしてそれは、彼女だけの話ではない。


自分も同じ場所に立っている。


枠の中に戻るか。


それとも壊したまま進むか。


彼はゆっくりと息を吐く。


答えはまだ出ていない。


だが一つだけ、確実に分かっていることがあった。


もう、元には戻らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ