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第8章 双子②

あたしは、震える体を自分で抱きしめるようにして抑える。


「おねーちゃん?」

「どうしたの?」


そう、双子の声が聞こえるが、あたしは振り向くことができないでいた。まるで、金縛りにあったようだった。手足の指先まで動かすことができない。上手く息をすることもできなくなっていた。


なに?これ?私の身体に何が起きているのか、さっぱり理解できない。どうすればいい?どうしたらいい? そう考えるが、どうすることも私にはできなかった。


その時、肩にポンと手がおかれた。私は糸が切れた人形のようにガクッと崩れおちる。でも、とても温かい腕が身体を支えてくれる。


「大丈夫?」


その手はやはりノアさんのものだった。私はなんとか足に力をいれ、地面を踏みしめる。


「だ、大丈夫です。すいません、ノアさん。」


ノアさんが私の顔をじっと見つめる。


「?」


私が首をかしげると、いきなりノアさんの顔が耳元に近付いてきた。


な、なに!?私は首筋に走るゾワゾワとしたものを感じた。だって、普段そんなに人が近くにくるなんてほとんど経験がない。慣れていないその感覚に身震いを起こしていると、ノアさんの声が双子に聞こえないほど小さい声で私の鼓膜を揺らした。


「安心していい。この双子は無害。」


ただ、それだけ言って私からすぐに離れる。一瞬、唖然となったが頭にその意味が届いた瞬間に、ノアさんが勘違いをしていることを悟った。


「あっ、いえっ、その、別にこの二人が怖かったというわけではないんです。」


誤解を解こうと私は首と手を激しく左右に振る。ノアさんは何も言わず、その瞳で私に続きを促す。


「えっと、なんていうか、私自身もなぜか分からないんですけど、その、感じたんです。」

「何を?」

「えっと、なんていったらいいのか……。とてつもなく大きなものですかね……。大きくて、強い何かを……、背中に感じて。そしてら、急に体が動かなくなって、震えだして……。私にも何が何だかって感じなんです。」


私がそう話終えると、ノアさんは振り返り後ろにいる双子を見た。


「ノアさん?」

「ルカ、ライカ、今、力を使おうとしていた?」


そうノアさんは双子に聞いた。双子は顔を見合わせ、コクンと頷く。


「うん、今からおねーちゃんをね、」

「占おうとしてたんだよ。」


双子は交互にそう答えた。ノアさんは双子が手に持っているマジックカードを見てから、双子の顔に視線を戻す。


「それでその道具に魔力を送っていたということ?」

「うん、最初は僕が魔力を込めるんだ。」

「そのあと、私が魔力を使って占うんだ。」

「そう。」


ノアさんは納得したように頷き、双子の頭を両手で軽く撫でた。


「そういう道具に魔力を込めるのは人前ですることではないはず、奥でそれをしてきなさい。」

「えー、すぐにでもおねーさんと遊びたいのに~。」

「のに~。」


双子は駄々をこね始め、両手をぶらんぶらん振り回している。最初見た、あの無表情クールな双子はどこに行ったのだろうか。私はなんだかさっきこの子たちから感じた恐れのようなものが本当だったのか自信がなくなった。こんな子供たちが私に何をしたのか全く分からない。


その後、双子はノアさんのいうことを聞いて、しぶしぶカウンターの奥へと消えていった。ノアさんは完全に双子がいなくなったのを見届け、私の方を振り向く。


その顔はいつもの無表情だが、もしかしたら、双子を前にしたときの表情は違っていたのかもしれないなとふっと思った。あーあ、見ていればよかったと少しだけ悔やまれる。私がそんなことを思っていると、ノアさんはゆっくりと話し始めた。


「あなたが感じたものは、きっとあの子たちの力。」

「力、ですか?」

「そう。オッドアイを持つものの魔力は普通の魔界人の何倍もある。そして、一つから生まれおちた二人の子、つまり双子はお互いの力で相乗効果を生み出し、強い魔力を秘めている。あの双子はここら辺の町で五本の指に入るほどの魔力の持ち主と聞く。だから、強く、大きい何かというのはその力だと思う。」

「そ、そんなにすごい子たちだったんですか……。」

「でも、たとえどんなに強い魔力であっても魔界の者でないあなたがそれを感じることはできないはず。それにあの双子もあなたに向けて魔力を使っていたわけでもない。」

「えっ?」


ノアさんのまなざしが私から離れなずに、じっと見られる。その瞳はなにか私の中を探っているような眼に見えて、私は少し怖くなった。しばらく無言で私を直視していたが、考え込むように眼を長めにつぶり、その視線をはずした。


「あなたは普通でないのかもしれない。」

「えっ?今、なんて?」


ノアさんの小さい呟きは私の耳に届かなかった。その後、ノアさんは双子が戻ってくるまで一言も話さず、ずっと何か困惑しているような表情だった。


「準備できたよーーー。」

「おねーさんを占うよーー。」


私は意気揚々と部屋へと入って来た双子を見る。さっき、感じた圧倒されるような力を感じることはなかった。私が感じたのは本当にこの子たちの魔力だったのだろうか?私にはそれを確かめる術はない。だから、今は何も考えず、この子たちの言うとおりに椅子に座った。



今回は短めです。双子の話はもう少し続く予定です。双子の名前、ルカ、ライカというのは完全に思いつきだったりします。双子だし、一文字くらい同じ字がいいだろうみたいな。でも、結構気に入っていたりしています。


そういえば、主人公の名前をあんまり呼ぶ人いないな……。と今気づきました。

まぁ、いっか。


ということで、また次回もよろしくお願いします。

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