第7章 双子①
双子は私から視線をそらさず、口を開く、私はなんだか嫌な予感がして、背中を冷や汗が伝った。
「お姉ちゃん。」
双子の男の子の方が声をかけてきた。
「んっ?な、何かな?」
私は、腰を少し屈め、目線を合わせて尋ねるが、双子は、私を見つめたまま、何も言わない。
ものすごく居心地が悪い。
助けを求めて、ノアさんを見るが、不思議に光っている琥珀色のような石が並んだ棚をじっと見ていて、私の視線に気づいてはくれない。
うぅー、どうすればいいのー。
眉毛で八の字を作りながら、困っていると、
「遊ぼうよ。」
「私たちと。」
「…………え?」
私が、なぜかさっきより近くに聞こえた声に双子へと視線を戻すと、さきほどまでいたカウンターに姿がない。
「あれっ?」
すると、ガックンと服が下から強く引っ張られる感覚がして、足元を見ると、
「何して遊ぶ?」
「遊ぼ、遊ぼ。」
双子が私の周りを元気に飛び跳ねる。
「えっ、えっ?」
私がどうすればいいのか分からず、目を回している間も双子達は私の周りをぐるぐると歩く。
「何して遊ぼうか?」
「そうだな……。あっ、アレがいいよ。」
「うん、そうだね。アレにしよう。」
「えっ、ア、アレって何?」
そう双子に問うと、お互いに顔を見合せ、可愛く首をかしげた。
「アレは、アレだよねー。」
「うん、アレだよ。」
「いや、何の説明にもなってないから……。」
私の言葉が理解できないのか、双子はまだ首をかしげ、ハテナを浮かべている。
…………とても、可愛い。
はぁ!!!なんてこと、また魔界人に騙されるところだった。つい最近、可愛い子に痛い目にあったばかりじゃないか。年下には要注意なのだ。だから、ここはあまり関わらない方向でいこう。
「お姉さんは今、忙しいから遊べないんだよ。」
私ができるだけ優しくそう言うと、
「うん、分かった。」
「分かった。」
意外なことに双子は素直にこくりとうなずく。その様子にちょっと拍子抜けだ。
「そう、分かってくれたならいいんだけど。」
「うん、今、アレを持ってくるね。」
「二階にあるんだよ。」
「そっか、私の言葉は聞こえていないみたいだね……。」
だが、双子は最初の無表情がウソみたいに、にっこりとあどけない笑みで笑う。私はその笑顔に少しだけなら、まぁいいかと思ってしまうのだった。
アレがなんのことだか全く知らずに…………。
双子はカウンターの奥にある階段を上って行き、五分くらいで、両手で持てるくらいの包みを持って現れた。二人が一つずつ小包を持っている。
「それ、何?」
「アレ、だよ。」
「うん、アレ。」
「……分かった。もう、聞かない。」
私はここ十数分でかなり精神を削られたと思う。
双子はウキウキしながら、その包みを開く。その中から出てきたのは、古いカードみたいだった。
茶色で、それぞれのカードに色々な絵が描かれている。私には、何の絵なのかさっぱり分からなかったが。
「これ、何のカード?」
「ふふん、これはね~、マジックカードだよ。」
「そう、マジックカード。」
「マジックカード?」
マジック?手品師がするやつ?というか、そんな古めかしいカードどうする気なのだろう?でも、よく見るとタロットカードっぽいかもしれない。ということは、占い?いや、ここは魔界だ。そんな日本にもいるような占い師のまねごとをするわけはないだろう。私は、考えても答えが出ないと思い、双子に尋ねる。
「ねぇ、それで何するの?」
「えー、そんな事も知らないの?」
「おねーちゃん、無知だねー。」
「む、無知……。」
そうだけど、そりゃ無知だけども!! それは、仕方ないじゃない。この世界に来たのはつい最近なんだから。
私は、頬の筋肉がワナワナしているのを感じたが、我慢だ、我慢と言い聞かせ、唇の端をむりやり上げて、言葉を返す。
「ご、ごめんね~。おねーちゃん、何も知らないんだー。だから、これで何するか教えてくれないかな~、なんて。」
「もぉー、しょうがないなー。僕たちが教えてあげるよ。」
「うん、教えてあげる。このマジックカードでね、」
「うんうん、マジックカードで?」
「おねーちゃんを」
「占うんだよ!」
「えっ!?そのまんまかい!!」
「?」
「?」
双子は、いきなり大声を出した私を不思議そうな顔して見つめる。
はっ!!つい、あまりにそのまま過ぎてツッコんでしまった。というか、ここ本当に魔界だよね?なぜにタロットカードはそのままなんだろう。どちらから、伝わったものなのだろうか?
「おねーちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ。ごめんね。そ、それで、私を占ってくれるの?」
「うん、私たちの占いは、すごいんだよ。」
「ゆーめいなんだよ。」
「有名?そうなんだ、すごいね。」
私は、女の子の方の頭を撫でながら、ちょっとほっとしていた。だって、ただ占うだけなんだし、なんか魔力を使う遊びだったらどうしようかと思っていたけど。これなら、大丈夫そうだ。私は、何もしなくていいだろうし。
「じゃあ、おねーちゃんはそこに座って。」
双子の男の子の方が後ろにある椅子を指差す。
「うん、分かった。」
私はうなずき、後ろを振り返った。その時、なぜか胸を掴まれるような嫌な感覚が私を襲う。一気に嫌な汗が額から噴き出た。なぜだかは分からない。この占いを簡単にしてはいけない気がする。
なんで、どうして、こんなのただの占いなのに。なのに、どうして身体が震えるのだろう。わたしは、後ろに何か巨大なものを感じた。
そう、後から思えばそれは、双子の魔力だったのだろう。とてつもなく大きな力をあの時のあたしは感じでいたんだ。
本当に遅くなってしまって申し訳ありません。前回投稿したのが、8月だったなんて自分でも信じられないくらいです。
次はこんなに間があかないようにしますので、次回もよろしくお願いします。