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第2章 魔界に到着

ふと気が付くと、日向は茶色くて、硬い、何もない大地に横たわっていた。


「んっ…………、えっ?こ、ここは……どこ?」


日向はあたりを見回すが、人の気配がしないどころか、岩ばかりで植物というものが全く生えていなかった。


「な、何なの、ここ?」


不安になって声を出すが、何の反応もない。


「ルーナちゃん、いるの?悪ふざけはやめて。」


と言ってみるが、やはり何も起らなかった。生き物の気配もせず、風までもなかった。

自分で声を出さなければ、全くの無音だった。


「ウソでしょ……、夢、だよね…………。」


現実の出来事だとは思えない状況に、日向は途方にくれ、立つ気力もわかず地べたに座ったまま、ただただ、目の前の大地に目を向ける。


「まさか、こんなことになるなんて……。本当に魔法使えるなんて、普通思わないよ……。」


日向は空を見上げる魔界は普通の月と真っ赤な月、二つの月が力強く輝いていて、たぶん夜なのだろうが、周りは月の光に照らされていて、明るい。気温は少し低く、肌寒さを感じた。


その二つの月を見ていると、不思議なことだが日向の心は落ち着いてきた。まぁ、あまりに驚き過ぎて、逆に冷静になれるというやつなのかもしれないが。


「はぁー、これから、どーしようかな………。あっ、そういえば、食べ物ないし。」


日向は何かあったなと制服のポケットを探ると、


「んっ?携帯あるじゃん。ま、まさか、つながるわけないよね……。」


ちょっとドキドキしながら、携帯を開く。左上のアンテナマークを見ると。


「えっ?アンテナ、立ってるじゃん。」


そう、携帯のアンテナ三本立っていたのだ。

日向は急いで、電話帳を開き電話をかけようとした。だが、


「……一体、誰に電話をかければ助けてくれるの?」


そう、ここは魔界だ。だれも日向を助けることはできない。救えることができる人物は一人、日向をここに送った張本人、ルーナしかいない。だが、今日会ったばかりのルーナの電話番号を知るわけないし、それに知っていたとしてもあの子が日向を元の所に戻してくれるかは微妙だ。


「うーん、誰にしようかな……。んっ?なんかメール来てる。」


日向の携帯には一件メールが来ていた。日向はそのメールを開いてみる。


『山に行ったけど、お前、どこにいるんだよ?電話しても、出ないし。とりあえず、俺、帰るな。なんか用事あるならまたメールしてくれ。』


日向はそのメールを読んで、一瞬なんのことだか分らなかったが、そういえば、相馬にメールを送っていたことを思い出した。


「そうだった。あの後、すぐにこっちに来たからすっかり忘れてた。でも、ちょうどいいや。相馬に電話しようかな。」


そう言いながら、電話帳で友達のグループのところから相馬を探し、電話をかける…………が、


ツーーツーーツーー、と聞こえるだけで全くつながらなかった。


「えっ?どういうこと?」


今度は家族にも電話をかけてみるが、相馬と同じように全くつながらない。


「マジで……。」


またもや、途方にくれることとなった日向。ちょっと期待していただけあって、その落胆はさっきより大きい。


「もう、やだ。どーすればいいの…………?」


日向は、その乾いた大地に大の字に寝そべった。もうこんな場所で何をすればいいのかも分からない。

空は、暗かった。雲ひとつない空に二つの月。でも、なぜか恐いという感情はなかった。

ただ、これからどうなるのか分からない不安だけが日向の心に渦巻く。


と、その時、唐突にエンジン音みたいなものがかすかに聞こえ始めた。


「えっ?何?」


辺りを見回すが、車が走っている様子はない。でも、そのエンジン音ははっきり分かるほど近づいてきていた。


「どこなの?」


一度のチャンスかも知れないと、耳と目を最大限働かせるが、どこにいるのか全然分からない。でも、ふっと日向は思いついた。もしかしてと上を見上げる。そこには、


ブゥルルン、ブルゥン、ブゥルルン。


日向の真上にあったのは、大型バイクの車輪だった。


「ば、バイクがう、浮いてる?」


そのバイクはどこからどう見ても、完璧に宙に浮いていた。そして、ゆっくりと地面に降りてきているのがわかり、日向は慌てて、横に飛びのく。


地面にどんどん近付いてくると、そのバイクに乗っている人が見えた。そう、人だ。魔界と言われてここに飛んできたが、悪魔には見えない。ゴーグルをつけ、ヘルメットをかぶった女性が乗っていた。


その女の人は、何も言わずにただ日向の顔をじっと見ながら、バイクに乗っている。もうバイクはあと数センチで地面に着く所まで来ていて、その女の人と日向は真正面から見つめあう形になっていた。


日向はその力強い視線と空気に耐えきれず、話しかける。


「あの、助けてください。私、ここがどこだか全然分からないんです。」


日向がそう言うのと同時にバイクが地面にドシンッと着地した。


乗っていた女の人は、バイクからゆっくりと降りる。日向は急に不安になってきた。もしかしたら、言葉が通じていないのかもしれないし、それに何か危ないことが起こるかもしれないと。


女の人がゆっくりと日向に近づいてくる。日向は無意識のうちに足を一歩ずつ下げていた。

逃げるかどうするか迷っていると、もうその人は目の前に来ていて、気がついた時には腕をガシッと掴まれていた。


「逃げなくていい。」

「えっ?」


ただ一言、その人は日向に告げた。よかった、日本語が通じているんだと、とりあえず日向はほっとする。でも、女の人はそれ以上何も言わずに、日向の腕をつかんだまま、もう一方の手でヘルメットとゴーグルをさっとはずした。


そこにあらわれたのは、本当に本当に美しい人だった。髪は黒髪で長いストレートだ。ヘルメットにはまとめて入れていたらしく、ヘルメットをとったときにバサッとその髪が綺麗に舞っていた。羨ましくなるほど、なめらかで艶やかだ。そして、その瞳は深い青。そうルーナと同じ色の瞳だった。鼻はスラッと高く、目のほりは深かい。こんな綺麗な人にはそうそうお目にかかれないだろう。外人のようにも日本人のようにも見えない 。ただただ、美しい人だと日向は思う。


そして、日向はその女性の顔を見ながら、誰かに似ているなと考えていた。


(うーん、誰だろう?あっ、そうだ。映画で見たエルフの人に似てるかも。その人より何倍も綺麗だけど。そんな感じだよね、あー、そういえば、ルーナちゃんも綺麗だったし。魔界の人ってみんな綺麗なのかな)


「ちょっと、大丈夫?」


日向があまりにぼーっとしていたので、綺麗な人が声をかけてきた。その声もなんだかとても凛としている声に聞こえた。


「えっ!!は、はい!だ、大丈夫です。」

「そう、ならいい。」


そう言いながら、女の人は掴んでいた腕を離し、ゴーグルとヘルメットをバイクに置いてから、改めて日向に向き直る。


「なぜ、こんな場所に一人でいるの?」


その声は、淡々としていて、怒っているようにも心配しているようにも聞こえなかった。


「え、えっと、あ、あの、わ、私、いきなりこの世界に魔法で飛ばされたみたいなんです。」

「飛ばされた?どこから?」

「えっと、私をここに飛ばした子が、に、人間界だと言っていました。」


(これって、言っても大丈夫だよね?いきなり、食べられたりしないよね?ここ、魔界らしいし。)


「人間界?つまり、あなたは人間なの?」

「えっと、は、はい。一応。」


日向はチラチラと女の人を見ながら、不安で少しオドオドしていた。でも、そんな日向の様子を何も気にせず、ただ日向の顔をじっと見ていた。


「あ、あの、どうしたら、元の場所に戻れるか知っていますか?」


日向が遠慮がちにそう言うと、少しだけその人の顔が曇る。


「知っている。」

「えっ!本当ですか?」

「でも、あなたはすぐに帰ることはできない。」

「えっ…………。」


一瞬助かったと日向は思ったが、無理と言う言葉で谷底に落とされる。


「ど、どうしてですか?」


日向がそう聞くと、ふぅと女の人はため息をついた。その様子に日向はますます不安になる。


「説明するのは、長くなる。だから、少し待って。」


そう言うと、女の人はバイクから大きな鞄を取り出し、中身を取り出し始めた。出てきたのは、二つの缶詰、毛布、地面に敷くシートのような布、そして、一本の木の古い杖だった。


(それって、ルーナちゃんも持ってたような。まさか、この人も魔女……?)


女の人は、あまりデコボコしていない地面を探し、そこに二人くらいが余裕で寝ころべそうなくらい、大きい布をひいた。そして、布の目の前に赤い石のようなものを置き、そこに向かって杖を構える。


「フレイム。」


と、呟くと杖の先から紅蓮の炎が飛びだし、地面に置いた赤い石を燃やした。すると、その赤い石は、まるで、焚き火のように燃え上がった。


「……す、すごい。……綺麗。」


日向はその火の温かさに少しだけ不安が和らいだ気がした。女の人をみると、日向に布の上に座るよう手招きしている。そこに、日向はとてとてと歩いていき、ストンと座る。

女の人がいつまにか取り出していた茶色いコーヒーみたいな液体が入ったコップを日向に突き出していた。


「飲んで、身体が温まる。」

「は、はい。」


それを素直に受け取り、躊躇いなく口をつけた。見た目はコーヒーみたいだが、味はアップルティーみたいなフルーツの紅茶のようだった。その香りと味に、まったりとした気分になる。


日向がぽーっとしていると、横から女の人が毛布も掛けてくれた。


「あ、ありがとう、ございます。」

「この世界の夜は冷えるから、それに包まるといい。」

「はい。」


(この人、案外優しいのかも。よく分かんないけど、信用していいんだよね…………。)


日向は、とても温かくなったというのと、今までずっと不安だった気持が少し軽くなり、安らいだといので、意識が遠のきはじめ、いつのまにか眠りに落ちた…………。



はい、やっと第2話を投稿できました。ファンタジーって結構難しいですね。

ちょっと甘く見ていたかもしれません。でも、これからも頑張って、もっと魔法とか色々書いていきたいなと思います。


読んでいただき、ありがとうございました。

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