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第十二話 珊瑚海海戦

 開戦劈頭、山口多聞率いる第一航空艦隊は真珠湾への奇襲を成功させた。「トラ・トラ・トラ 我奇襲ニ成功セリ」という暗号電は播磨、美濃それぞれの艦橋にも転送され、艦長以下全員が沸き立った。いよいよ始まった、という高揚感と前代未聞の作戦が成功したという嬉しさに包まれていた。

 その時播磨、美濃の第四戦隊は南遣艦隊の一員としてマレー沖にいた。旗艦愛宕に座乗する小沢中将の指揮下で、マレー上陸作戦を支援する任務である。シンガポールに英東洋艦隊、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスが配備されており、こちらを狙ってくるだろうという予想のもと警戒にあたっていた。特にプリンス・オブ・ウェールズは播磨型とライバル格のキングジョージ5世級2番艦であり、「真珠湾の機動部隊に後れを取るな、我々も!」と播磨美濃乗員はライバル心をむき出しにしていた。

 しかし、陸攻隊が英東洋艦隊を粉砕し、水上決戦の前に早々と2隻とも撃沈してしまったことで、出撃は空振り、淡々と護衛任務をこなすことになった。

 

 そのまま機動部隊は破竹の進撃を続け、翌昭和十七年初頭にはインド洋に殴り込んでセイロンを空爆、空母ハーミーズと重巡ドーセットシャー、コーンウォールを撃沈しパーフェクトゲームを収めていた。

 一方第四戦隊播磨美濃は南遣艦隊から分離し本土へ帰還していた。座礁し離脱した空母加賀の護衛と休養のためである。その間に呉、横須賀の海軍工廠では改播磨型の進水式が執り行われた。三番艦は近江、四番艦は筑後と命名された。この2艦は改播磨型であるが、何が違うのか、外見からはほとんど見分けはつかない。まだ上部構造物も整っていない2艦は、その船体構造から実は姉たちと異なる部分がある。

 それは妥協せざるを得なかった防御力の拡大である。装甲を対15インチ防御に引き上げて、水密区画数が増加、機関も駆逐艦島風でテストした高出力のものに換装されている。その結果排水量も増加したが、出力も17万馬力に引き上げられ、ついに30ノットの大台に届くことになった。

 


 インド洋作戦終了後、軍令部はポートモレスビー攻略を目指してMO作戦を下令。真珠湾からインド洋までフル稼働の第三戦隊の金剛型に代わって第四戦隊の播磨美濃に機動部隊護衛の任務が回ってきた。第五航空戦隊の空母2隻、翔鶴瑞鶴を護衛して、ポートモレスビーを目指す原忠一少将指揮下のMO機動部隊は、旗艦翔鶴以下輪形陣を組んで南下していく。

 播磨、美濃両艦の士気は高く、これまで後れを取った分を取り返そう、ここで新鋭艦の力を見せつけると意気込んでいた。


MO機動部隊

空母

翔鶴(旗艦)、瑞鶴

戦艦

播磨、美濃

重巡

妙高、羽黒

駆逐艦

6隻


攻略部隊

空母祥鳳

重巡古鷹、衣笠、青葉、加古

駆逐艦3

 

 機動部隊は珊瑚海に入り、空母から索敵機として97艦攻が発艦していく。ポートモレスビーから飛来したと思われるB-17が上空に姿を現したあたりから緊張感は一気に高まる。高角砲が仰角を取って空を睨むが、高高度のB-17には手が出せないまま、ジリジリと戦闘は進んでいく。

 初日は米艦隊からの攻撃機により祥鳳が撃沈され、こちらからの攻撃隊で給油艦ネオショーを撃沈するという双方決定打を得られないまま過ぎていった。


 珊瑚海海戦2日目、前日の祥鳳が空襲を受けた際に艦載機が襲来したことから米空母の出現は決定的とされ、朝から徹底的に索敵機を出すことになった。

 索敵機を見送りながら、播磨は翔鶴右後方、美濃は瑞鶴左後方に付き従い、対空警戒に当たっている。今か今かと実戦での発砲の機会を持ち、焦れた雰囲気さえ漂う艦内。

 ついに索敵機から敵発見の報告が飛び込んできた。翔鶴、瑞鶴が次々と攻撃隊を送り出していき、発艦作業が終わった30分後、南東の空にポツポツと黒い点が現れた。

 「敵機接近!対空戦闘!」スピーカーががなり立て、播磨の高角砲が敵機の方角へ一発発射。上空の直掩隊の零戦に敵機接近を知らせると同時に零戦隊が敵機の頭を押さえようと加速していく。

 零戦隊の迎撃をすり抜けたTBDバスデーター、SBDドーントレスが艦隊上空へと進入してくる。瑞鶴は美濃を引き連れて手近なスコール雲に飛び込んだが、翔鶴、播磨上空に遮るものはない。

 高角砲が黒い花を空に咲かせ、艦首が波をきり裂いて30ノットで回避運動に入る美濃。翔鶴上空の艦爆進入点に弾幕を張って援護する。甲板には空薬莢が転がり、機銃と高角砲の発砲音が止まることなく響く。

 「敵機、翔鶴直上!急降下!!」美濃艦橋トップの見張員が絶叫する。真っすぐ一列でなだれ落ちてきたSBDが次々と黒い点=爆弾を投下していく。翔鶴は全速力34ノットで大きな図体を左に旋回させている。艦橋からその様子がスローモーションのように見える。ズルズルと向きを変える翔鶴、空から大きくなってくる爆弾。

 翔鶴右舷の海面に立て続けに大きな水柱が立つ。なんとか至近弾で回避できたようだ。美濃艦橋ではほっと胸となで下ろす艦長以下、その瞬間「敵機左舷、我が艦に向け雷撃態勢!」との絶叫が響く。「回避!面舵いっぱい!!」

 美濃は図体の割に俊敏に向きを変え、左舷側を白い泡の筋が通り抜けていった。「回避成功!」息が止まるような瞬間を耐え伸び、再び高角砲の発砲音が耳に飛び込んてくるようになった。

 その後2空母は再び攻撃隊を送り出し、夕刻には敵空母2隻を撃沈したという報告が入った。初めての実戦、敵空母という大戦果に艦隊は沸き立ち、もはや十分な戦果を挙げたとして撤退が下令された。

 史上初の空母決権を完勝で収め、美濃は敵機を1機撃墜する戦果を挙げた。新世代の戦い方では戦艦は空母の横に控えて見えた敵機を撃つだけ、戦果は見えないところで上がるという形で現れた。

 条約に縛られて生まれた播磨型戦艦にとって初めての実戦であった。



珊瑚海海戦

日本側損失 

空母祥鳳 駆逐艦菊月 航空機70機


米側損失

空母レキシントン、ヨークタウン

給油艦ネオショー

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