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第九話 世界情勢

 昭和十二年に勃発した盧溝橋事件から日本は泥沼の中国戦線へと足を踏み入れ、果てしなき消耗戦を繰り広げていた。南京を陥落させ、支配領域を拡大しながらもパルチザンや便衣兵に悩まされる日本軍。終わりの見えない戦いに消耗しながらも、中国利権への進出を狙う米国の圧力にも対処しなければならない難しい局面が続いていた。

 播磨型戦艦一番艦播磨は昭和十一年起工で十三年竣工、二番艦美濃は昭和十二年起工で十四年竣工予定の裏で、日中戦争は激烈化の一途を辿る。

 史実と比して戦艦の建造費が圧縮=比較的陸軍予算が増加したことで、史実よりは後方の治安も改善し、軍紀を保ったままの帝国陸軍だが、やはり一部の兵の暴行などは発生していた。それらの事件は国際的に大きく報道され、対日世論は次第に悪化していく。

英米仏との外交関係は微妙な均衡を保ちながらも、好転の兆しは見えない。

中国大陸は、日本にとって「前線」であると同時に、「国際的孤立を深める舞台」となりつつあった。


 そして欧州ではドイツのナチス政権による再軍備と領土主張により緊張が拡大。オーストリアは国民投票により昭和十三年にドイツへと併合され、チェコスロバキアのズデーテンラントやポーランドのダンツィヒにむけてドイツは領土野心を隠さなくなっていた。

 英国は当然それに対抗し、フランスと組んで共同戦線を張るがいまひとつ融和による戦争回避、緊張緩和と圧力による抑止力の2択で揺れ動き決められない。

 ナチス政権は、その迷いを巧みに突いた。

再軍備によって拡張されたドイツ軍の存在感と、巧妙な外交交渉を織り交ぜ、列強に次々と譲歩を引き出していく。

 一方で日独は国際的孤立という同じ立場、そして北方にソ連という脅威を抱える共通点から接近を図るが、防共協定は不発で交渉がまとまりきらないまま期限を迎えることとなった。

 そんな中完成したばかりの播磨に初任務が訪れる。中国沿岸に展開する空母加賀の護衛と、対地艦砲射撃任務である。まだ習熟訓練航海が終わったばかりで歴戦の戦艦群と比べてお世辞にも練度が高いとは言えない播磨に、重圧の少ない環境で経験を積ませようという軍令部と艦隊司令部の意図であった。

 播磨ではもちろん敵艦隊への砲撃ではないため本来の役目と違う、ということの落胆もあったものの、絶対に失敗出来ない、という初陣独特のプレッシャーも増していく。艦内の雰囲気はピリついた緊張感にあふれ、訓練もますます厳しくなっていった。

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