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さくらとアネモネ  作者: サファイロス


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第9話 離れた分だけ、恋は強くなる

「櫻、帰るの?」


「うん……実家、心配かけたくないし。

 寮も一週間、みんな帰省するって言われたから」


 アネモネの表情が、

 目に見えて曇る。


「……一週間も」


「大丈夫だよ、すぐ戻るから」


「すぐじゃない。わたしにとっては長い」


 震える声に、櫻の胸がぎゅっとなる。


「寂しい」


「私もだよ」


「嘘。家族に会えて嬉しいはず」


「嬉しいけど……」

 

 櫻はアネモネの指先を包む。


「アネモネさんがいない夜の方が、ずっと寂しい」


「……っ」


 アネモネの喉が鳴るほど、抑えた感情が揺れる。


「帰省なんてなくなればいい」


「そんなこと言っちゃダメだよ」


「でも言っちゃうくらい……

 アネモネさんが私を必要としてくれてるの嬉しい」


「じゃあ約束して」


「なにを?」


「毎日通話して。

 寝る前に“おやすみ”って言って。

 朝は“おはよう”って」


「もちろん。絶対する」


「約束破ったら……本気で怒る」


「怒ったアネモネさんも可愛いけどね」


「……可愛くない。

 苦しいだけ」


 涙が今にも溢れそうで、

 櫻はアネモネを抱きしめる。


「戻ってきたら、

 ぎゅーってさせて?」


「……する」



 櫻は家に戻っても、心だけは寮に置き忘れたまま。



 テレビの音も、家族の笑い声も、

 遠くの出来事みたいだった。


1日目 夜


櫻:


「ただいま。ちゃんとご飯食べた?」


数分後

アネモネ:


「食べた。でも味なんて分かんない」


(また胸が痛くなる)


3日目 昼


アネモネ:


「廊下に響く足音が全部櫻に聞こえるの、気持ち悪い?」


櫻:


「気持ち悪くない。愛しいよ」


5日目 夜(通話)


「……眠れない」


 アネモネの声はかすれていた。


「電気消した?」


「消したら、部屋が真っ暗になった。

 櫻がいない世界みたいで怖い」


「大丈夫、通話切らないよ」


「それでも足りない。

 櫻の温度じゃなきゃ……」


「アネモネさん……」


「帰ってきて。今すぐ」


「明日の朝帰るよ」


「嫌。

 いま帰って――

 お願い……」


 涙を堪える音が電話越しに響き、

 櫻は決意する。


「……待ってて。絶対行くから」



 寮前でバスを降りるより先に――


「櫻!!」


 アネモネが飛びついた。

 腕が、体温が、言葉より先に伝えてくる。


「遅い……怖かった……会いたかった……」


「ごめん、ごめん……ほんとに」


 櫻はその細い身体を、

 自分の全てで抱きしめ返した。


「もう離れないで」


「うん。離れない」


「櫻の手……繋いで」


 指が甘く絡む。

 爪が押し込まれて痛いほど、強く。


「櫻がいないと、私……壊れる」


「壊さないよ。

 なんなら私が

 アネモネさんの支えになるの」


 アネモネの頬を伝った涙の温度。

 それが櫻を動かしてしまう。


 離れていた時間は、

 ふたりの“繋がり”を強くしただけ。


 依存でも愛でも、どっちでもいい。

 これは私たちの生き方だ。

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