第24話 離れない”と誓った翌日からの世界
朝。
カーテンから差し込む光が、
櫻とアネモネの間に落ちていた。
「櫻、起きて」
囁く声。
ゆさゆさと肩が揺れる。
「ん……もう5分……」
「じゃあ抱きしめる」
「いいよ……むしろして……」
布団の中で、
櫻の背中にアネモネの腕が回る。
「起きる気ある?」
「アネモネのぬくもりが気持ちよくて……」
「じゃあ、毎朝これしよ」
「……それだと余計起きられない気がする」
二人は笑った。
「櫻、髪結ぶ。こっち向いて」
「今日もしてくれるの?」
「毎日する。櫻が綺麗になるから」
結ばれた髪がふわりと揺れる。
「ありがとう」
「……もっとありがとうって言わせたい」
「どういう意味?」
「内緒」
アネモネが櫻の耳にふっと息をかける。
櫻は赤くなって抗議した。
「そ、そういうのは外でしないの!!」
「じゃあ部屋でいっぱいする」
「えっ」
「櫻、全部食べた?」
「アネモネこそ自分の食べて」
「櫻が健康じゃないと私が困る」
「……ほんと面倒見いいよね」
「櫻限定」
周りの寮生たちも微笑ましく見守る。
「相変わらず仲良しだなー」
「夫婦かよ〜」
「お似合い〜」
「ふ、夫婦は言い過ぎ!!」
「言い過ぎじゃない」
アネモネは真顔。
櫻は真っ赤。
二人並んで自習。
「櫻、眠い?」
「眠くない……ふぁ」
「眠いじゃん。肩に頭のせていいよ」
「……いいの?」
「いつもしてるでしょ」
櫻はそっとアネモネに寄りかかる。
「安心できる……」
「櫻が安心してると、私も安心する」
静かで、あたたかくて。
もう奪われない時間。
「櫻、手貸して」
「何するの?」
「今日も指輪、ちゃんとつけてるか確認」
「あたりまえじゃん。
アネモネと繋がってる証だから」
アネモネは櫻の手をぎゅっと握る。
「……櫻。
笑ってる時の顔、好き」
「こ、告白みたいで恥ずかしい」
「告白だよ」
櫻の心臓が跳ねる。
「私も……アネモネの笑顔が好き」
「じゃあ櫻のそばで、いっぱい笑う」
「私がいっぱい笑わせる」
二人は向き合って
額をそっと重ねる。
まだ“恋人”とは呼ばない。
でも、誰より深く愛している。
「おやすみ、櫻」
「おやすみ、アネモネ」
同じ毛布の中、
絡んだ指は離れない。
失う危機を越えたからこそ知る。
この日常が、いちばん尊い。




