第21話 “守られる側”をやめる
「先生……少し、お話ししたいです」
HR後、櫻は震える声で口を開いた。
アネモネの現状を、すべて告げる。
担任は静かに眉を寄せた。
「……そうか。
彼女は、家の事情に長く苦しんできた子なんだ」
「助ける方法、ありますよね」
「学校ができることには、限界がある」
「でも、退学なんて……!」
「親権者にその権利はある」
「学校は逆らえない」
現実が、櫻の胸に突き刺さる。
「……嫌だよ」
「櫻さん、気持ちは分かる。
けれど――」
「私、諦めません。
アネモネを失いたくない」
言い切った櫻の瞳の強さに、
担任はそれ以上何も言えなかった。
「……櫻?」
寝ていたアネモネが突然起き上がる。
肩が大きく上下し、呼吸が荒い。
「ひっ、はっ……っ……!」
過呼吸。
櫻はすぐ横に駆け寄る。
「大丈夫、大丈夫だから……私がいる」
「やだ……やだ……っ
櫻がいない夢……見た……」
「ここにいる。
ずっと隣だよ」
櫻はアネモネの背を撫で、
指先を優しく絡めた。
「櫻の声、聞かせて……
声だけが、私を止めてくれる」
「アネモネ、大好き。
世界中の何よりも、アネモネが大事」
震えが少しずつ収まっていく。
「……櫻がいるなら、生きていける」
アネモネの涙は温かく冷たい。
恋は、誰かを救う最低限の薬
でも、足りないこともある
櫻は知る。
愛だけでは立ち向かえない壁があると。
だからこそ――
愛を武器にして戦うと決めた。




