第13話 光の下で、ひとりにしないで
賑やかな声が連なって、
校舎全体がまるで別の世界みたいだった。
「櫻ちゃん、写真撮っていい!?」
「もう1枚!ほら、もっと笑って!」
櫻はクラス展示の呼び込みで
注目を集めていた。
「え、えっと……あ、ありがとう!」
無邪気な笑顔。
そのたびに誰かが櫻の腕に触れる。
「……さわらないで」
囁くような声。
けれど誰にも届かない。
笑っている櫻が眩しくて、
手を伸ばしても届かなくて、
胸の奥が、きつく疼いた。
「アネモネも一緒に映ろ!」
「……ごめん。無理」
顔を背ける。
櫻と自分の距離だけが、
いきなり遠く感じた。
「櫻!大道具頼みたい!」
「あ、うん!今行く!」
「え、ちょっと――」
櫻の手が離れる。
追いつけない背中。
アネモネは裏方の暗い廊下に逃げ込んだ。
流れてくる音楽と笑い声が遠い。
「……櫻の馬鹿」
涙が頬に落ちた。
「恋人なんでしょ……
なんでそんな背中を、
知らない子に向けるの……」
声にならない、
全部が涙に変わった。
「……アネモネさん!?どこ?」
人混みをかき分け、
名前を呼ぶ声が震えていた。
焦りと心臓の痛みが走る。
「アネモネさん……!」
「……櫻」
泣いた跡の瞳。
見つけられた瞬間、櫻は駆け寄る。
「ごめん、ごめん!
すぐ戻るつもりだったの……!」
「いいよ。
櫻はみんなに好かれてるから」
「それが嫌だったの?」
アネモネは、息を呑んだ。
「だって……櫻が笑ってた。
私以外の人に」
「アネモネさん」
「私、怖かったの。
このまま櫻が誰かの光になって……
私の手から離れるんじゃないかって」
囁きは涙の味がした。
「離れないよ!」
櫻は強く抱きしめる。
腕の中で、アネモネが震えた。
「私の光は、アネモネさんだから」
「……ほんと?」
「ほんと。
アネモネさんがいないと眩しすぎて見られないよ」
アネモネは唇を噛み――
櫻の手の甲にそっとキスを落とした。
「私の光も、櫻だけ」
嫉妬は恋の痛み。
でもその痛みは、ふたりを強くする。
櫻はアネモネの手を握った。
もう、離さないように。




