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東の実験農場は大賑わいになっている。今までトム爺が主に世話をしてくれていたけど、小麦と肥料、綿花の畑、腐葉土の実験、ショウガと藍も植えた。時期がきたらカボチャとジャガイモも植えるらしい。リンゴやブドウも植えてもらった。【植物魔法】を持つ人がいれば成長の後押しもしてもらえるので果樹も思ったより早く収穫できるそうだ。畑仕事には領民に声掛けして守秘契約して何人か雇ったと聞いた。これらは辺境伯家とも共同研究になっているという。やってしまってからだと遅いもんね。貧乏子爵家目立つな危険である。


今日はお父様にコーヒーを試飲していただいた。

牛乳とお砂糖も準備したので、お母様もお試しすることになった。


「うむ。苦い。だけど癖になるな。」

「牛乳とお砂糖を入れると美味しいわ。それにこの器。とても綺麗ね。」

「そうなんです。お母様。このコーヒーカップもスキルでコーヒー作ると一緒に出来てくるんです。この藍色がやっぱりいいなって。」

「え?この器もスキルでできるのか?」

「コーヒーを作るとセットなんです。器だけは作れないんです。」

「うちの村でも陶芸工房があるが、そこでこのような綺麗な器が作れるといいな。」

「青色、陶器・・・。コバルトですね。きっと。」

「“こばると”とは何だ。アスタ。」

「銅とか亜鉛とか鉱石の中に、青くなるものがコバルトって呼ばれるものらしいです。」

「何やらよくわからんが、鉱石の中に入っているんだな。鉱石が採れるところは少し遠いし、鉱石の中から青い色のものを探すのは大変だから、少し後回しだな。辺境伯家にはお知らせしておくよ。多分、一緒に山に行くことになるとは思う。」


お父様に頼まれて、小麦と肥料と領民のために種芋となるジャガイモをせっせと作り、収穫までの時間が割と短いカボチャもたくさん作る。相変わらず辺境伯様にサトウキビと砂糖を納品。合間に他の野菜をつくり、卵や牛乳、ハチミツ、青い糸も青い布もチーズも醤油もせっせと作る。リンゴやブドウも定期的に採取する。パンやバターは日々消化しているけど、他は少しずつ貯まっていくわたしの【インベントリ】に。凄いな【インベントリ】。

コーヒーも毎回器とセットで【インベントリ】に貯まってきている。お父様とお母様が毎日1杯ずつ飲まれているが、毎日コーヒーカップが2個増えていくことになる。洗って【インベントリ】に仕舞っているけど、使用済みのコーヒーカップって売れるのか?この青い器っていつ出せるんだろう。しばらく保留だよね。


冬の間は、スキルの綿花から、自力で糸が作れるかお試ししていた。東の実験農場でも綿花が育てられている。上手くいけば、村の紡績工房に依頼しようと思う。

また、村の紡績工房で今つくっているリネンの布もお小遣いで買えるだけ買って、村の古着屋さんで、破れそうな服も何枚か買ってきてもらった。

前世の知識では、刺し子は、貴重な布を補強したり保温性を高めたり、願いを込めた文様をいれたりしたのが始まりだと聞いたことがある。


今回、青い糸を使って、古着をほどいて当て布をして刺していく。まっすぐ、斜め、丸く、組み合わせて、矢羽根、十字繋、七宝つなぎ、花刺し、青海波、古いリネンの服をほどいた布にひと針ずつ刺していく。刺し子は幾何学模様のような続く文様が美しいと思う。

出来た!クッション。全部新しい布で作ったら高いので、メインは古布だけど、刺し子して、可愛いのが出来た!中身はスキルの綿花をほぐして入れてみた。種はお父様に渡すつもり。


「アスタ、何?その刺繍、色は一色なのに、とても綺麗だし可愛いわ。」

「フレイヤお姉様。これは刺し子っていうもので、このように幾何学模様を刺していくものなんです。」

「きか・・・なんとかはよくわからないけど、同じ模様が続いていくのはとても綺麗だしこの辺の模様は可愛い。アスタ、わたしも覚えたい。後、青い糸も綺麗だけど、わたしは赤い糸を使ってみたいわ。」

「赤い糸ね・・・茜草か。小さな花が咲いて、根が赤くなるんだっけ。確か薬草だ。月経不順を治すとか聞いたことがあったような。薬になるなら、冒険ギルドに依頼すれば手に入れられるかも。もしかしたら、フレイヤお姉様の通う診療所にもあるかも。」

「診療所に?赤に染まる草があるの?」

「多分だけど・・・。冒険者ギルドで鑑定できる冒険者に、月経不順の薬になって、根を使えば赤く染まるという草を取ってきてもらおう。」


葉っぱは細長くて、小さな花は淡黄色だったと思う。赤い花じゃないんかって思った記憶がある。そこも説明すれば、間違えずに持ってきてもらえるかも。

フレイヤお姉様の可愛いお願いだ。叶えてあげたい。


早速セバスに頼んで、冒険者ギルドに依頼を出してもらった。

後、お父様からミョウバンを少しもらった。

前に青の釉薬になるコバルトを辺境伯家と一緒に探してもらうついでに、ミョウバンも探してもらっていたのだ。藍染にもいるかなっと思って。

ミョウバンはアルミニウムと鉄と硫酸が結合してできたもので、白い石みたいなものだ。火山のあるところにあると聞いたことがある。火山があるっていうことは、うちの領土にも温泉があるかもしれない。火山は遠いから今は後回しだけどね。

前世で藍染を趣味にしようと勉強したことがあった時にミョウバンのことを知った。色止めや消臭剤、殺菌剤としても使えるらしいので、その旨お父様に伝えて、白っぽい石を鑑定して持ち帰ってもらったのだ。コバルトを探す途中なので、もちろん辺境伯家も一緒だったので、簡単に探せたみたい。もちろん知識は共有したという。


お父様に何に使うんだと聞かれ、フレイヤお姉様と赤い染料の実験をするのだと伝える。苦笑したお父様からはほどほどにな、と頭をなでられた。


数日後、茜草は見つけられた。やはり薬として定期的に診療所が依頼していたようで、冒険者も、ああ、あれかっていうことですぐに採ってきてくれた。しっかり根っこが必要よって念をおしたので、大丈夫だった。


フレイヤお姉様と茜草の根っこを細かくくだいて煮込む。そこに買ってきてもらったリネンの糸を付け込む。何度か付け込んで良い色になったらミョウバン液に入れて洗ってできあがり。

めちゃくちゃ彩度の高い赤ではなく、落ち着いた赤色だ。夕焼け色みたいな感じ。

でも、フレイヤお姉様は大喜びだ。

薬草から赤い色が採れるなんて!と驚いてもいた。


この流れで、玉ねぎの皮で黄色にも染めてみた。こっちもフレイヤお姉様は喜んでくれた。

後、緑色も欲しいな。レモングラスで染めた綺麗な黄緑色のスカーフを買ったことがあったな。藍染はもちろん、草木染も好きだったんだよね。また、魔の森に行く時に探しに行こう。

今日は赤と黄色だけでも大成功。

フレイヤお姉様は赤の糸で刺し子にチャレンジしてみるそうだ。


それを見に来たお母様が、

「あらあら。二人とも素敵なことをしているのね。これは変った刺繍ね。青い糸はアスタのスキルの糸よね。この赤い糸や黄色い糸はどうしたの?」

「お母様、赤い糸はアスタと一緒に染めたのです。」

「まぁ2人でこの赤や黄色を?凄いわ。染色は染織工房だけで行っていて、その材料は秘密なのよ。2人で秘密を解き明かしたのね。お母様にも教えてくれる?」


お母様には経緯をお話してみたら、レモングラスを冒険者ギルドに依頼してくれるそうだ。

レモングラスは細くて長くてしゅっとしているの。すっぱい香りがして、虫よけにも使えるし、胃の調子も整えてくれるし美肌にもいいのと伝える。

それを聞いたお母様は俄然張り切って探して下さった。


これで、青、赤、黄色、緑が揃った。あとは藍も早く自分で染めたいな。

そんなこと考えていたら、【調剤】スキル持ちのフレイヤお姉様が草木染にはまった。薬草のことなら鑑定できる【調剤】スキル。そこから研究を重ねて、多くの色を生み出していくことになるのは、もう少し先。

この冬フレイヤお姉様とたくさん刺し子刺繍して楽しんだ。



外を吹く風かまだ冷たい。あまり外には出たくない季節。

2月はジャガイモの植え付けだ。

お父様に頼まれたジャガイモ作りで在庫は結構ある。

お父様の鑑定とトム爺の経験で、ジャガイモ畑に腐葉土を混ぜ込み実験してみることになった。まずは東の実験農場。後残ったジャガイモは領民にお試しで植えてもらうことにした。こういうものは各自少なくても全世帯にだ。争いや憎み妬み嫉みが発生してはならぬとばかりに配布するんだとお父様が頑張った。各世帯約に20個ずつぐらいしか渡せなかったけど、全世帯に渡ったから良いだろう。

それを畑で増やすのも良し。すぐに食べるのも良しだ。好きにしてくれ。

領民には辺境伯様の実験に付き合うという話になっている。辺境伯様いつもありがとうございます。

ヒューゴお兄様は楽しんでジャガイモを植えているらしい。【土魔法】のレベルが上がってきているという。ヒューゴお兄様は戦闘狂になるかもと思っていたけど、力持ちの働き者になるかもしれない。安心した。


3月にカボチャも領民に植えてもらいたい。ということで、カボチャもせっせと作っていたけど、東の実験農場で植えるカボチャの種を確保するため、しばらくカボチャ料理が続く。冬の寒い時期にカボチャは美味しいよね。カボチャのシチュー、カボチャのグラタン、カボチャのコロッケ、カボチャの大学芋、パンプキンパイ、カボチャのプリン。わたしはカボチャのグラタンが好きだけど、領地ではあまり牛乳は手に入らないので、うちの館だけのメニューになるかも。お父様は辺境伯領では大きな牧場がたくさんあるから、そっちから流れてくるから大丈夫だよと教えてくれた。今回のカボチャつくしのレシピも辺境伯家に献上された。まぁ献上といっても金貨は押し付けられてくるんだけど。辺境伯家は義理堅いところだ。

カボチャも無事に領民全世帯に5個ずつ渡せた。カボチャの中の種を植えて下さい。腐葉土とわたしの肥料を混ぜた土は、植えるのが楽しみだと聞く。ジャガイモもカボチャも豊作だといいな。


山から吹く風がぬるんできた。

春になったので山菜採りにも行った。魔の森にはあれからも何回も連れて行ってもらっている。ミントやローズマリー、タイム、オレガノ、ラベンダー、紫蘇、山椒、胡椒などを見つけてきた。これらは裏庭にわたし専用の庭をもらって、植えている。香りが良くてお気に入りだ。お肉を焼く時に使ったりして好評だ。いつかラベンダーでポプリや精油も作ってみたい。まずは生活優先だけどねー。


後、春は社交のシーズンらしいので、お父様とお母様はカボチャを領民に配布した後すぐに王都まで出かけていった。うちは辺境の貧乏子爵家だから、王都にタウンハウスを持っていないため、春の社交シーズンは辺境伯家のタウンハウスにお邪魔しているらしい。すみません。

でも、今年はわたしのスキルのお陰で少しは気が楽になったという。コバルト色のコーヒーカップのセットに、コーヒー豆。他では手に入れられないものをお土産に持っていってもらった。喜んでもらえたのなら良かった。コーヒーカップは辺境伯家にしか今は渡せないから貯まってきた在庫をはきだすためにもたくさん持っていってもらった。結局使用したコーヒーカップはプレゼントしにくいから、スキル産のコーヒーを別の容器に移して、コーヒーカップを使用済みにしないで保管しておくことにした。洗って浄化すれば綺麗になるけれど、気持ちの問題だね。


それにしてもコーヒーゼリーが食べたい。コーヒーは苦くて苦手だけど、コーヒーゼリーは前世好きだったんだよね。

天草の寒天。うちの領地に海があれば良かったんだけど、辺境伯家にお願いしてみるか。まずはアルヴィン様に、天草っぽい海藻って見たことないか聞いてみるか。いや、上級鑑定士様に聞く方が早いか。


天草の特徴、赤い色をしていること。細いというのか細かい見た目、澄んだ海で取れること。収穫は夏が良いこと。煮だすと固まる性質があること。お菓子に使えることを書いて、辺境伯領行のマジックバックに突っ込んでおくことにした。上手くいけば連絡があるだろう。気長に待とう。


お父様とお母様がいない間、ルーカスお兄様とヒューゴお兄様と東の実験農場へいったり、フレイヤお姉様と草木染をしたり、アンナと新しい料理を作ったりしていた。もちろんお勉強もしたし、毎日スキル操作も続けていた。残された子どもだけでも充実していたと思うけど、お父様とお母様が帰って来られた時、おもいっきり抱き着いた。だって、子どもの体だから、感情がひっぱられる。寂しい時は寂しいんだからっていうのが素直に出せる。寂しいを我慢しなくてもいい。2人に抱きしめられて幸せだった。


そうこうしているうちに、初夏。小麦の収穫時期がやってきた。

実験で早く植えたので村で一番早く収穫時期を迎えた東の実験農場へ家族全員で行ってみることになった。

「定期的に見には来ていたが、立派な小麦になったね。」

「お父様、これはいつもの年よりしっかりしていて実も大きそうです。」

「俺も手伝ったー。」

「トム爺、刈り取りはみんなで手伝うよ。」

お手伝いの実験農場と契約している領民と従者と家族総出で実験農場の小麦を刈り取っていく。実験農場の小麦畑は30坪程度、60畳ぐらいだけど人力で刈り取るのは結構大変。収穫後の乾燥は【風魔法】のスキル持ちが活躍してくれた。


お父様はほくほくである。麦の取れ高を見ては笑っている。

「これは、村の収穫も楽しみだな。」

「実験農場ほど、肥料は行き渡らなかったかもしれないが、それでもアスタが頑張ってくれたから、去年よりは収穫高上がっていると思うよ。」

「豊作になりそうだな。税の計算まで楽しくなりそうだよ。そこでこれだけの豊作、数年ぶりの収穫祭をしようかと思っているんだよ。ここ4,5年不作で収穫祭ができなくて、領民にも寂しい思いをさせたからな。」

「お父様、収穫祭賛成です!わたしの【インベントリ】に、トウモロコシ、大豆、カボチャ、きゅうり、人参、玉ねぎ、卵に牛乳が結構たくさん貯まってきているので、それらを辺境伯様からの支援っていうことで皆に放出できたら嬉しいです。」

「そうだな。辺境伯様へのサトウキビと砂糖の分の代金もかなりいただいている。それを使って、エールを購入し皆で盛り上がってもらおうと思っている。辺境伯様にはアスタのスキルの野菜を支援として出していいのか、その旨お伺いをしてみるよ。小麦が豊作になりそうな話も入れといた方がいいしな。辺境伯領にもアスタの小麦と肥料はお試し分で渡したが、その結果も確認したいから、セバスに頼んで辺境伯様の面会依頼しておくよ。」

「お父様、辺境伯様のところへ行かれるのであれば、藍の研究がどうなったのか教えてくださいね。あと、わたしのスキル産のブドウでワイン作っていいのかと。」

「ワインか。それもいいな。領主の主導で作っていいと思うが、材料がスキル産のブドウだからな。うちの領地にワインを作るほど、ブドウがまだないから、ブドウも実験農場で増やすか。これも辺境伯様にお伺いしてみるよ。」


お父様はまだ見ぬワインに思いをはせ、すこし嬉しそうだ。

貧乏だったので、お父様はワインもほとんど飲めていない。飲めるのは辺境伯家のパーティに出席にした時とかお祝いの時ぐらいだと思うから年に数回か。今はサトウキビと砂糖の代金があるから、ワインぐらい買えると思うんだけど、そのお金で、村の道を舗装したり、森側の塀を補修している。東村と西村は少しずつみすぼらしい村から普通の村へと変わりつつある。全部立派なお父様のおかげだ。だからせめて好きな時に好きなだけワインを飲んでもらいたいんだよね。前世わたしもワイン好きだったから、わたしが大人になるまでに領地で作って欲しいと思う気持ちもあるのはある。お父様のためといいつつ、自分のためでもあるのは、一石二鳥?長期計画?いやいや第一はお父様のためだよ。そこは間違いない。



それから数日後お父様が収穫祭の開催について伺いにいった辺境伯家よりお戻りだ。

「お父様、どうでしたか?」

「収穫祭での野菜の放出の許可は取れた。共同研究の各種野菜の改良、腐葉土とショウガの活用、藍の研究も上手く軌道に乗ったことによる褒賞という意味で出して良いそうだ。また、サトウキビの栽培が成功したし、アスタ提供のサトウキビから砂糖を作る手段もついたらしい。

アスタ、後少しで砂糖は解禁になるみたいだ。それに辺境伯でアスタの肥料と小麦を使った実験は成功してむこうでも豊作だったそうだ。今後辺境伯領全部に行き渡るように継続して肥料と小麦は必要だと要望されたよ。ああワインも許可が出たよ。ただし辺境伯領のブドウを購入した実績を作ってからだけどね。辺境伯領で飲むワインを作られているが、そのワイン用のブドウを分けてくださるそうだ。その代わりアスタのスキル産のブドウも実験用に融通して欲しいと要望されたよ。美味しいワインができるかもしれないからね。うちは辺境伯領のブドウとアスタのブドウを両方使ってみることにしたよ。」


始終辺境伯様はにこにこだったらしい。成果がここまではっきり出ていると辺境伯領規模でも嬉しいのかも。大きな領地だからこそのお悩みもあるだろうし。よくわからんけど。とにかくご機嫌で良かった。要望が全部通って良かった。特にワイン!こっちの世界は16歳で大人扱いなのでワインが飲める。後8年でうちの領地のワインも軌道に乗せたいところ。お父様頑張れ!


領地の小麦の収穫も無事に終わったと思ったら、次はジャガイモだ。種芋と提供し腐葉土もお試ししたけどどうなっただろうか。

東の実験農場では豊作だったとヒューゴお兄様がご満悦だった。肥料を漉き込むところからお手伝いしたものね。


1株に大き目のジャガイモが20個ぐらいごろごろ出来ていたそうだ。

村の方でも植えたところはほぼ同じぐらいの実りだったそうだ。

今回、全世帯に20個ほど配ったが、そのまま食べたとこはほぼ無かったそうだ。どこも畑に植えたと聞いた。畑の無い世帯も、畑を持っている家に頼んで借りたり家の前や横を畑にしたそうだ。やはり領主主導のジャガイモ、100日ほど我慢すれば大幅に増えるらしいとの噂に、皆わくわくしながら待っていたそうだ。

20個の種芋、芽が出ているところを切り分けて埋めると3倍ぐらいになる。60種芋ができたとして、それぞれに20個のジャガイモができたら、1200個収穫できることになる。

20個が1200個だ。60倍!結構凄いことになっている。

それをまた、秋に植えるとまた増える。倍々ゲームどころじゃない。皆笑顔になっていたそう。お父様がとてもとても喜んでおられた。


秋植え用にジャガイモの種芋はわたしのスキルで準備しなくても大丈夫そうだ。このまま豊作が定着してくれるといいんだけど。


余裕の出来たジャガイモの料理も辺境伯様への献上レシピが商業組合で登録されて逆流されてきている。ポテトサラダに、コロッケに、フライドポテト、ポトフにハッシュドポテト、少しずつ領地に美味しいジャガイモ料理が増えてきた。

マヨネーズもレシピに入っていた、卵を浄化しないといけないのと、腕がめっちゃ疲れるけど、美味しいと評判で、村の食堂のポテトサラダは人気なんだそうだ。

良かった。貧乏領地が少しずつ良くなってきているのを聞くと嬉しくなる。少しでもわたしのスキルが役に立っているのなら、嬉しい。

もちろん、領主館のご飯も随分美味しくなった。アンナのお陰である。いつもありがとう。


そうしているうちに、暑い夏がやってきて、今度はカボチャの収穫が始まった。

暑い中、みんな嫌な顔せず畑に出る。

腐葉土と肥料を混ぜた畑、小麦畑もジャガイモ畑も広げたけど、カボチャ畑も新規で作った人も多かった。お父様はお優しいから、税は取るけど、畑を広げることについては咎められない。それに、農業している人だけじゃなくて、今回、おうちの庭にカボチャを作った人は黙認だ。税は小麦だけ、それ以外は作った人の成果になるからだ。


カボチャも豊作だった。どの家もどの庭もカボチャだらけになっていた。

カボチャは1世帯に5個しか渡していなかったけど、1個のカボチャに150~200個ぐらい種が出来ているらしいから、5個あれば、最低750個種が採れることになる。そりゃ多いね。

カボチャは1株で10個ぐらい採れるという。7500個のカボチャ?!

いやいや、750個全部植える場所普通はないよね。でも、そこそこ増えただろうと思われる。みんなにこにこだもの。カボチャは常温で2か月ぐらいもつもんね。

ジャガイモやカボチャを商人に売った人もいたそうだ。そこは自由。

カボチャの料理もお砂糖使ったもの以外は商業組合に登録されていたよ。辺境伯家は仕事が早い。きっと辺境伯家でも山ほどのジャガイモとカボチャ食べているんだろうな。

カボチャの大学芋とじゃがバターを辺境伯家のマジックバックに仕舞って、アルヴィン様にお手紙書いた。スキル産の小麦や野菜がきっかけの豊作が嬉しかったって。ただ純粋に嬉しかったっていう気持ちで書いたけど、返事は“辺境伯領の豊作の方が凄かったぞ”という自慢話だった。お互い子どもだからこんなものだね。


そんな中、秋の貴族学校の入学に向けてルーカスお兄様が王都に行くことになった。馬車で20日ぐらいはかかる。

辺境伯家の寄り子の該当する子どもは、いったん辺境伯家に集まって、最終勉強会をしてから、一緒に王都に行くらしい。ばらばらに行くよりは効率的だね。

お兄様は婚約者のイングリッド様と久しぶりにお会いできるのが楽しみだそうだ。

学校を卒業する18歳で結婚するらしい。

ルーカスお兄様に頼まれて、お兄様のマジックバックにプリン、サンドイッチ、クッキーに、パンプキンパイとフライドポテト、リンゴとブドウ、マヨネーズにパンとハチミツを入れておいた。料理のしない男の子が小腹が空いた時につまめるぐらいかな。砂糖はまだ解禁じゃないから、ひとりでこっそり食べてね。


「父上、母上、ヒューゴ、フレイヤ、アスタ、行ってまいります。」

「気をつけて、学業に励みなさい。」

「長期休暇には帰ってきて元気な顔を見せてね。」

「兄上、学校の様子をまた教えて下さい。」

「お兄様王都の可愛いお店の情報を教えて下さいね。」

「ルーカスお兄様。寂しいです・・・。お手紙書くのでお返事ください。」

「ああ、学校の様子も王都のお店も調べてくるよ。アスタ手紙楽しみにしているよ。」


頭なでなでしてくれた後。ルーカスお兄様は行ってしまわれた。

本当寂しい。性格の良いイケメンの損失である。イケオジのお父様で我慢しようか。あ、そんなこと考えたら、たとえ心の中だけといえ、お父様に失礼!ごめん。お父様。イケオジも好物です。



【今日のスキル】

レベル     20

畑       63面

栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ サトウキビ 菜の花 きゅうり 人参 綿花 ジャガイモ トマト 玉ねぎ 


工房      飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料、ミツバチの飼料 小麦加工工房…パン、食パン サトウキビ加工工房…砂糖 牛乳加工工房…チーズ、バター 肥料工場…肥料 製糸工房…青い糸、青い布 製油加工工房…植物油 大豆加工工房…醤油


牧場      鶏の飼育所…卵 牛の飼育所…牛乳 養蜂施設…ハチミツ 釣り場…魚


果樹園     リンゴ ブドウ コーヒー イチゴ


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