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わたしと辺境伯様のお孫さんとの仮婚約の話が進んでいるらしいけど、その前にお兄様方、フレイヤお姉様の婚約者がいないのはおかしいという感じになっている。一番下の末っ子の婚約者が最初に決まるのは変だものね。

ということで、辺境伯様のお城で8歳以上15歳未満の寄り子の子どもが一斉に集まるお茶会をするそうだ。


ルーカスお兄様は14歳。婚約者がいてもおかしくない年なんだけど、貧乏子爵家だったからね・・・。

でも、今回、辺境伯家に多大に支援してもらっている。目をかけてもらっている領ということで、少し価値が上がっているらしい。

ルーカスお兄様は性格もいいし、イケメンだし、細マッチョだし、貧乏以外はすべてその辺の基準よりは上だと思う。

まずはルーカスお兄様に良い方が見つかるといいんだけど。


辺境伯家より、今回はまだ砂糖は出せないから、ハチミツとリンゴとブドウが欲しいとご依頼があった。砂糖の代わりにハチミツを使うクッキーとカップケーキ等のレシピも一緒に入れておいた。ハチミツなら、魔の森で取れるから、まだごまかせるものね。

リンゴもブドウもスキル産はジューシーで美味しい。辺境伯家で穫れる果物も美味しいだろうけど、ほんと食べ比べるとスキル産が美味しい。

お茶会は招待客を驚かしてなんぼのもんなんだろう。寄り子たちしかいないんだから、普通でいいのに。普通で。まぁお世話になっている辺境伯様のご要望は叶えますが。どんどん辺境伯家のマジックバックに詰め込んだわ。ふふふ。お茶会の日が楽しみ。


よく晴れた良い天気。風は少し冷たいが気持ちがいい。辺境伯家のお茶会の日がやってきた。

ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様もみんな綺麗に着飾っている。お父様が引率だ。ヒューゴお兄様はこれが集団お見合いだっていうことに気づいていない。ヒューゴお兄様より幼いフレイヤお姉様はしっかりその趣旨を把握されているというのに。

子どもの頃は女の子の方がおませっていうのを実感しながら2時間耐えた。お尻が痛い。クッションを作ろうと思ったけど、布が高級品でお小遣いで買えなかった。中に詰める綿もわたしの綿花ぐらいしかない。綿花を増やしてもらうまで我慢かな。


無事に着いて、お父様を先頭に執事さんに案内していただく。

辺境伯家のお城に勢ぞろいした子どもの数が思ったよりも多い。お父様によると、辺境伯家の寄り子は、全部で12家、侯爵家が2,伯爵家が2,子爵家が3,男爵家が5という感じだそうだ。適齢の子どもはそのうち、30人ぐらい。年齢はばらけていそう。


イケメンのルーカスお兄様に少しルーカスお兄様より若い女の子が群がっている。ヒューゴお兄様は同じ年頃の男の子とどっかに行ってしまった。フレイヤお姉様は、可愛い年下に見える男の子の手を引いている。一緒に遊んであげるんだろうか。微笑ましい。


わたしは辺境伯様のお孫さんに初めて会った。黒っぽい髪に濃い藍色の目。バランスのいい体つき。この子も辺境伯様と同じ“いずれプロレスラー”のルートを通るんだろうか。8歳の今はマッチョじゃない。当たり前か。

「アスタ嬢、孫のアルヴィンだ。」

「初めまして。オルランド子爵の二女、アスタでございます。」

「アルヴィンだ。よろしく。」

なんか、目が笑っていない。


「この子は武の辺境伯の子なのに、頭も良いのだ。今回のことも説明したらわかってくれたよ。」

「あくまでも仮だ。それ以上でもそれ以下でもない。でも、僕も辺境伯家の名を名乗る以上、契約はきちんと守る。」

「ご迷惑おかけしますが、数年だけ、よろしくお願いいたします。」


後数年と挨拶をすれば、きょとんとされた。なんか自分のスキルを盾にわたしが婚約を強要したとでも思われていたのだろうか。今回の仮の婚約はうちからの申し出ではなく、辺境伯様のご提案なんだけどな。囲い込みと後ろ盾だ。頭が良いと言われていても、まだ8歳にはその辺のニュアンスはわからないんだろうな。


ある日お爺様から、婚約者(仮)が出来たと話され、スキルが危険だから守ってやれとでも言われたのだろうか。

辺境伯家の直系だ。自尊心もプライドも矜持もお持ちだろう。たかが貧乏子爵家の次女と仮でも婚約なんかしたくなかっただろうな。そう思うとちょっと可哀そうだと思った。

わたしのスキルがご迷惑おかけしています。


塩対応のお孫様との挨拶も終わり、同じ年の女の子たちとお話をする。もちろん、男爵家や子爵家など同じレベルのものばかり群れてしまう。楽なんだもの。今の流行りや貧乏について語り合ったところ。結構楽しかった。


いろいろあって、お茶会が終了。今日の成果。ルーカスお兄様が良い感じになった人を見つけられた。同じ子爵家の長女でイングリッド様。細身ですらっとしていて、凛々しい。趣味は武術だそうで、うちに広がる魔の森で魔物退治がしてみたいとご要望だとか。ヒューゴお兄様とも気が合いそう。


ルーカスお兄様によると、さっぱりとしていて男友達と同じように話せるのが良かったとか。ふわふわの綿菓子のような女の子はべたべたしそうだと苦手なんだとか。同じ子爵家で貧乏にも耐えられそうなのも利点だとかで、正式に婚約の手続きを取るそうだ。

イングリッド様にはお兄様がお2人いらっしゃって、どちらも既にご結婚されているとかで、イングリッド様が貧乏子爵家に嫁入りするのは大丈夫らしい。お相手の子爵領もそれほどお金持ちでもないのでお互い様という感じらしい。

それにイングリッド様はお兄様お2人と、ずっと剣士ごっことかで遊んでいるうちに、女の子らしくなれなかったみたいで、向こうの家もお嫁に行けそうでほっとされているそうだ。イングリッド様もルーカスお兄様のことは気に入られたみたいで、一緒に魔物退治行こうとデート?の約束もしたそうだ。良かった。良かった。


後はびっくりフレイヤお姉様。手を繋いでいた男の子は、南の伯爵家の8歳のご嫡男様だった。今回の集まりで一番小さくて一番弱そうで、一番びくびくおどおどしていたのが、ものすごくツボにはまって、可愛くて可愛くて仕方なかったとか。


本来ならば中規模の伯爵家と貧乏子爵家は縁など結べないが、ご嫡男様がフレイヤお姉様にものすごく懐いたこと。フレイヤお姉様が貴重な【回復魔法】の使い手であること、水面下でわたしと辺境伯家のお孫さんとの婚約が進んでいることを踏まえて、婚約を前提にしばらくお付き合いをしてみるそうだ。


まぁ8歳と10歳だ。お付き合いといってもお手紙を書いたり、贈り物をしたり、辺境伯家の集まりで会うぐらいだろう。とりあえず、お互い勝手に他の人と婚約しないっていう程度のお約束だけど、フレイヤお姉様はやる時はやる人だ。小さくて可愛いものが好きなお姉様、嫡男くんが小さいままならこのままいくだろうな。成長後はどうなるのか。ちょっと心配。


ヒューゴお兄様は察しのとおり。何も成果はなかった。同性の友達はたくさん出来たそうだ。ヒューゴお兄様らしいというのか、そのまま素直に大きくなって下さい。


わたしはアルヴィン様とお手紙のやり取りをすることになった。スキル産のサトウキビや砂糖を送るマジックバックに入れれば届けてもらえるそうだ。アルヴィン様はこの仮の婚約をすることになった、わたしのスキルが気になるらしいので、お手紙にはスキルについて書いていこうと思う。辺境伯家とも秘密厳守の契約を結んでいるのでお手紙に秘密について書いても大丈夫だ。仲良くなれなくても嫌われなかったらいいんだけど、数年間だけどよろしくお願いしたい。


辺境伯様へ送ったハチミツを使った、クッキーやカップケーキは大変好評だった。スキル産のリンゴとブドウも、フルーツポンチやそのまま綺麗に飾り切りされて飾られていた。食べた人が絶賛していて、さすが辺境伯様と評判が良かったと、うちにまたいくらか金貨が押し付けられた。

お父様はこれで村の鍬や鋤やオノを更新しようかと思案されている。うちのお父様は貧乏だけど、本当に良い領主だ。


「お父様、追加の肥料も作っていますが、魔の森には腐葉土はないのですか?」

「アスタ、“ふようど”とは何だ?」

「腐葉土とは、落ち葉とかが小さな虫とかによって分解されて黒くふかふかになったものです。通気性や保水性があるので、わたしの肥料が間に合わないところに使えるかもしれません。」

「そうなのか。魔の森は魔物がいるから、魔物ばかりに気を取られて、足元にそれほど気を向けてなかったな。良いものならば取りに行って、東の実験農場で検証してみようか。」

「はい。土壌改良すれば、うちの領地も潤うかもしれません。」

「もしかしたら、辺境伯領が豊かなのはそういう知恵もあるのかもしれないね。」

「辺境伯領は【植物魔法】をお持ちのマミーナ様をはじめ、上級鑑定士、上級魔術師の方々もいらっしゃって、研究者の層も厚いと聞くからな。うちはこれからだな。」


「お父様、魔の森に行かれるのでれば、俺も行きたいです。」

「お父様、わたしも行きたいです。」

「ヒューゴはいいとして、アスタはまだ危険だよ。」

「お父様、魔の森に何があるのか確かめたいのです。できれば藍の葉が欲しいです。」

「“あい”とはなんだ?」

「藍は染物に使うの。ほら、わたしのスキルでできた青い糸、青い布は、ちょっと待ってね。これこれ。これが青い布。この青い色を出すのが藍っていう植物なの。」

「これが青い布か。綺麗だな。」

「そうでしょう。この青い布を領地で作ることができたら、産業にならないかな。今はわたしのスキルでしかできないけど。」

「そうだな。森の中に生えているのかどうかは、わからない。あれば綺麗な青に染めることができれば、高く売れると思う。」

「あと領地では、麻を材料にリネンの布は作っています?」

「ああ、麻を加工したリネンは何か所かの紡績工房で作っているな。領民の服もほとんどリネンだし、うちの服もリネンが多いぞ。」

「綿はどうですか?」

「綿はうちの領地では作っていないな。あ、アスタのスキルに綿花があったな。綿花から種が採れるか。」

「そうです。青い布を作るのに、リネンも綿もあった方が幅が広がります。どっちも欲しいです。」

「スキルで取れた綿花から種を取り育てられるか、これも東の実験農場案件だな。“あい”が森になくても綿は育ててもいいかもな。」

「藍があるかどうかはわかりませんが、お父様の鑑定でいろいろ植物をみて欲しいのです。」

「そうだね。今まで貧乏過ぎて日々の生活でいっぱいいっぱいで余裕がなかったな、アスタのお陰で辺境伯様の支援が受けられて少し余裕のある今ならできるかもしれないね。」

「わたしも手伝います。」

「俺も!」

「お父様、わたしはポーションの材料が欲しいです。【調剤】のスキルを使ってみたいです。」

「ルーカス、ヒューゴ、よろしく頼む。フレイヤ、【調剤】は村のおばばに頼んでいる。おばばの手が空いた時に教えてもらえるそうだ。また、一緒に挨拶に行こう。」

「お父様、ありがとうございます。」


フレイヤお姉様は頑張り屋さんだ。【回復魔法】も持っているのに【調剤】まで練習するとは。下手したら聖女になってしまう。ピンク色系の髪に緑の目に下位貴族出の聖女。やばい。フレイヤお姉様だけ、違う物語の主人公になってしまうかも。変なことに巻き込まれないように、よくよく見張っておかないと。


馬車で2時間。お父様にスキル関連のことでお願いしているうちに、無事に家に着いて、お母様にお迎えしていただいた。

移動も疲れたし、辺境伯様の迫力にもまだ緊張する。スキルの作業もあまりできなかったからレベルアップもしていない。今日はさっさと寝よう。おやすみなさい。



【今日のスキル】

レベル     16

畑       51面

栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ サトウキビ 菜の花 きゅうり 人参 綿花 ジャガイモ トマト


工房      飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料、ミツバチの飼料 小麦加工工房…パン、食パン サトウキビ加工工房…砂糖 牛乳加工工房…チーズ、バター 肥料工場…肥料 製糸工房…青い糸、青い布


牧場      鶏の飼育所…卵 牛の飼育所…牛乳 養蜂施設…ハチミツ


果樹園     リンゴ ブドウ


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