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おはようございます。秋らしい青空が広がる気持ちの良いお天気。
朝からスキルに集中する。新しく作ることができるものを調べてみると、野菜はジャガイモが登場、小麦の加工工房で食パンが作れるみたいだ。サンドイッチが作れる!牛乳加工工房では、バターだ。クッキーが焼ける!嬉しい。製糸工房では青い布だ。この青い布、藍染の色だ。やっぱり綺麗なんだよね。そしてこの青い布の材料は綿花ときゅうりだ。ゲームをしている時も不思議だと思ったけど、やっぱり今も不思議だと思う。
きゅうりはミツバチの飼料にも使う。やっぱり謎だ。わたしはきゅうりは普通にサンドイッチに使いたい。
今日は、料理をしよう。この間、プリンを作った時に料理をしても怒られなかったので、今回も大丈夫だろう。
目指すのは、クッキーとサンドイッチだ。サンドイッチは卵とキュウリにするつもり。マヨネーズはアンナに作ってもらおう。アンナの腕はしっかりしているし。ひ弱なわたしには無理だろう。でも、サンドイッチにはマヨネーズ絶対いるもんねー。アンナ頑張れ。
メイに綺麗に着つけてもらって、食堂に行く。
「お父様、お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様おはようございます。」
「「おはよう。アスタ。」
「アスタ、昨日はありがとう。無事に領民に小麦と肥料を配布できたよ。皆、喜んでくれたよ。今日はルーカスと配布した小麦と肥料がどう使われるのか農地を視察に行く予定だ。」
「父上、俺も行きたい。」
「ヒューゴか、そうだな。ヒューゴの【土魔法】で畑仕事を手伝えるかもしれんな。東の実験農場でも頑張ってくれたからな。」
ヒューゴお兄様、なんだか誇らしげだ。そうだよね。自分のスキルが役立つのは嬉しいもんね。
「わたしとフレイヤは、今日は診療所でお手伝いです。フレイヤも小さな傷なら癒せるようになりましたわ。」
今度はフレイヤお姉様が誇らしげだ。お姉様は10歳だけど、今から【回復魔法】の練習を兼ねて定期的に村の診療所にお手伝いに行っている。領主のお仕事として週に1回午前中にお母様とお姉様が出勤しているらしい。
診療所は、領地に一つしか無い冒険者ギルドの隣にある。お姉様はとっても可愛らしいので、お手伝いに行ったら人気者らしい。
「アスタは今日はどう過ごすの?」
「はいお母様、今日はクッキーとサンドイッチを作る予定です。」
「アスタ、それらは食べ物かな?“くっき”と、“さんどいち”とは何かな?」
「お父様、クッキーは甘いお菓子で、サンドイッチはパンにお野菜や卵を挟んだ軽食です。アンナと一緒に作って、今日のお昼に出しますね。」
「甘いお菓子!まぁなんて素敵なんでしょう。また美味しいお菓子がいただけるなんて。アスタ楽しみにしていますね。」
「アスタ、わたしも今日のお昼楽しみにしているよ。」
「ええ、頑張ります。あ、お母様、わたしのスキルで青い糸と青い布が出来るのですが、どうしましょうか。村の裁縫の出来る方に何か依頼した方がいいんでしょうか。」
「あの、綺麗な糸ね。この青は普通には染めることのできない色だわ。こんな鮮やかな青。この糸と同じ色の布地ならばドレスに仕立てれば注目の的でしょうけど、出所を探られると少し怖いわ。もう少し在庫が出来きたら辺境伯様にご相談してから、また考えましょう。まだ糸も布も少ないのでしょう。まだ外には出せないから、無理して作ることは無いですよ。」
「はい。わかりました。でも綺麗だから空いている時間に無理しないように作れるだけ作っておきます。」
「アスタ、青い布は楽しみだわ。また出来たら見せてね。」
「はい、フレイヤお姉様。布はまだ1枚も出来ていないので、出来たらお見せします。」
「アスタのスキルは本当びっくり箱みたいね。」
ふふふと笑うお母様につられてわたしも笑ってしまった。スキル授与の日あんなに泣いたのに、こうして笑える日がきて嬉しい。
お父様、お兄様方、お母様、お姉様を見送ったら、アンナと一緒にクッキーとサンドイッチを作ろう。
スキルから、バターと食パンを取り出す。アンナ―。今日もよろしくー。
卵と、キュウリも出して、マヨネーズのレシピをご披露する。植物油は高価なものだと教えてもらったけど、牛脂で作る気にはなれない。ごめん、高い植物油使わせて~。
「アスタお嬢様、これ何ができるんですか?」
「アンナ、大丈夫よ。美味しい調味料ができるの。わたしの腕では難しいのでお願い。」
「いいですよ。わたしは大きなフライパンや鍋を持って腕は鍛えていますからね。」
「アンナ、ありがとう!」
「アスタお嬢様!油がお酢が卵が、なんで白くなるんですか!」
「まぁそういうものだからっていうのでごめん。あんまり理由は知らないの。」
「そうなんですね。でも、とても面白いです。腕は疲れますが・・・。」
「あと少しよ。アンナ頑張って!」
ということで、マヨネーズ無事に完成。卵を茹でて、マヨネーズと塩で味付けして、キュウリも薄く切って食パンにマヨネーズ塗って、全部挟んで、綺麗に三角になるように切って出来上がり!
作った人の特権で、アンナと2人で味見をした。
「アスタお嬢様!これ。凄く美味しいです。この“まよねず”という調味料も油をあんなに使ったのにくどくなくてちょうどいい酸味でキュウリがとても美味しくなっています。これは凄い発明ですよ!卵とお酢と油と塩しか使っていないのに!」
「アンナ、ありがとう。アンナのお陰で美味しくできたわ。みんなもきっと喜ぶわ。」
出来上がったサンドイッチを【インベントリ】に仕舞い、次はクッキーだ。
クッキーの材料は、小麦粉240g、バター100g、砂糖80g、卵1個で出来る。小麦粉はうちの在庫を使って、残りはわたしのスキルから出す。
きっとお母様とフレイヤお姉様はたくさん食べられるだろうな。あー。ヒューゴお兄様も危ない。遠慮なく食べそうだ。
少し多めに焼こう。バターも砂糖も卵も在庫たくさんある。ほんとスキルさまさまだ。
クッキーもアンナが飛びあがるぐらい美味しくできた。
「アスタお嬢様。これはお貴族様のお菓子ですよ。こんなの普通じゃ一生食べられないですよ!」
「アンナ、レシピは渡すので、またみんなにも作ってあげて。お砂糖と卵とバターもキッチン用のマジックバックに入れておくね。たくさん作ったマヨネーズもそこで保管してね。外に出しているとすぐにダメになっちゃうの。」
「かしこまりました。」
「またスキル産のお野菜の余剰品が出たら入れに来るわ。」
「楽しみにお待ちしております。」
「あ、じゃ、今日のサンドイッチもわたしの【インベントリ】から出しておくので、お昼の時間によろしくね。」
アンナにお昼の準備をお願いして、お父様、お兄様方、お母様、お姉様のお迎えの準備をしにいく。
先に戻ってきたのは、お母様とフレイヤお姉様だった。新しい料理が気になって早く帰ってきたらしい。
「お母様、フレイヤお姉様。おかえりなさい。」
「ただいま。アスタ。お昼が楽しみで少し早く帰ってきたわ。」
「わたしも、すごく楽しみなの。」
「お父様とお兄様たちがお戻りになったら食べましょう。」
お母様とフレイヤお姉様は着替えたらすぐに食堂に行くとのこと。どれだけ楽しみなんだろう。
そうこうしているうちに、男性陣も戻って来られた。
「お父様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、おかえりなさい。」
「「アスタ、ただいま」」
「アスタ、本当にありがとう。今日村の農地へ視察に行ったら、どの畑も肥料を撒いて黒々
していて、それでふわふわだったんだ。うちの領地は土地が痩せていてカラカラしていたのに、ぜんぜん違っていて、嬉しくて嬉しくて泣きそうになったよ。全部アスタのお陰だよ。」
「そうだよ。アスタ、畑が生き返ったようだったよ。」
「俺も手伝った。畑に肥料を鋤こんだんだ。いい土だって、お年寄りの人が涙ぐんでたぜ。」
「そうなんですね。土が生き返って良かった。本当頑張って良かったです。」
お父様は少し興奮しておられたのか、顔も上気していた。スキル頑張って良かったな本当。
「お母様もフレイヤお姉様も、もうお戻りで食堂でお待ちです。お父様もお兄様方も浄化魔法で綺麗にして手を洗ってから食堂に来てくださいね。」
「わかった。アスタの新しい料理だから、すぐに行くよ。」
食堂に全員があつまると、アンナがサンドイッチとコーンスープを出してくれた。
「お父様、お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様、これがサンドイッチです。パンの中に、キュウリと茹でた卵を挟んでいます。」
「まぁ。白い大きなパンね。それに切口に黄色と緑が綺麗だわ。」
「美味しそうだな。いただこう。」
「アスタ、これ美味いぞ!手が止まらない。すぐに無くなってしまうぞ。」
「ヒューゴお兄様、たくさん作っていますので大丈夫です、そんなに急いで食べたら喉に詰まりますよ。」
「アスタ、本当にこれ美味しいね。キュウリの食感もいいし、茹でた卵がぼそぼそしていないね。何か入れている?」
「ルーカスお兄様、これはマヨネーズをアンナに作ってもらってそれで和えています。」
「アスタ、“まよねず”とは何かしら?」
「お母様、マヨネーズとは、卵とお酢と油とお塩で作る調味料です。アンナに頑張って作ってもらいました。」
「“まよーねず”というのか、美味しいな。アスタはスキルのせいか、新しいレシピがよく浮かぶようになったね。」
マヨネーズのレシピは、前世の知識だけど、この【ようこそわたしの農園へ】という誰にも想像もつかないようなスキルがあるせいで、変なこと不思議なことは全部このスキルのせいだっていうことになっている。チュートリアルというスキルについて教えてくれるものがあるっていうことから何でも教えてもらえているんだろうって。まぁこのスキル、農業だけではなく牧場や果樹園や各種工房まであるんだものね。もう何があってもおかしくないっていう感じなんだろうか。ごまかせるのであれば、それで良し!
「まぁフレイヤが綺麗に食べているわね。生のお野菜はあまり好きじゃなかったのに。」
「お母様、アスタの作ってくれたこれはとても美味しいです。アスタありがとう。」
嬉しそうに食べるフレイヤお姉様は可愛い。生野菜は今まで塩振っただけだったもんね。アンナが頑張ってマヨネーズを作ってくれたかいがあった。アンナありがとう!
皆でサンドイッチを美味しくいただいた後、クッキーのお目見えである。
「お父様、お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様、食後に少しクッキーというお菓子を作りましたので、アンナに出してもらいます。これは小麦粉と卵とバターとお砂糖を使っています。卵とバターとお砂糖はスキル産のものです。」
「バターもスキルで作れるようになったのか。凄いな。」
「お父様、スキルで先ほどのサンドイッチに使った、大きな白いパン、バター、ジャガイモ、青い布が新しく作ることができるようになりました。」
「ジャガイモは良いな。他のも出来たらまた見せてくれ。」
「はい。わかりました。お父様、小麦は辺境伯様に送る以外は作らなくて良いのでしょうか。」
「種まき用としては皆に配ったけど、何があるかわからないから、作れるのであれば備蓄用として作っておいてもらえると助かる。」
そっか、備蓄用か。うちは貧乏だから備蓄用って本当に少なかったんだろう。レベルアップして畑も増えたから小麦も植え続けよう。また、何をどれだけ植えるのか何を作るのか配分考えないとね。
お父様とお話をしている間、他の4人は戦場かと思うぐらい気迫でクッキーを食べている。
「お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様、クッキーはたくさん焼いてもらいました。まだまだあります。」
「これは、凄いな。本当に凄い。こんなに美味しいものは、先日のプリンを食べた時みたいだよ。」
「ええ、これは王宮のお茶会に出てきてもおかしくないわ。」
ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様の頬がぱんぱんで2人とも子リスのようだ。そんなに詰めて食べると喉に詰まるよー。それにしてもフレイヤお姉様がヒューゴお兄様と同じようになるとは意外・・・。
「とても美味しかったわ。アスタありがとう。」
「「アスタ、ありがとう。」」
「美味しかったよ。また、作ってくれ。」
「それにしても、お砂糖があるだけで美味しさが変わるのね。」
「この国で唯一、砂糖を作っているモーレ領が農場や工場にすべて結界を張っている理由もわかるもんだ。辺境伯領でも軌道に乗るまでは厳密な管理をすると聞いている。皆も家でアスタが作ってくれているが、これは機密だよ。外では絶対口に出さないようにな。アスタが砂糖を作れると知られたら、誘拐されて奴隷のように砂糖を作らされ搾取される可能性が高い。本当に秘密だよ。」
「アスタに危ない目に合わせたくないからそこは厳守するよ。」
「「アスタのために秘密にします。」」
「領民の皆にもいつかプリンやクッキー食べてもらいたいです。」
「辺境伯様に頑張っていただこう。」
皆で目を合わせて頷いた。辺境伯様におんぶにだっこだけどよろしくお願いします。
午後からはお休みしていたお勉強の時間。フレイヤお姉様と一緒にこの国の地理について勉強する。
うちは国の中でも北の方。でも、あまり雪は降らない。前世でいうところの関東地方ぐらいの気候だと思う。一番北の端っこが辺境伯領。北海道ぐらいの大きさがあるそうで、広大。その西隣がうち。隣国とのはざまに魔の森がある。魔の森が切れたところから海になっているが、うちは西側が森で北と東側が辺境伯領で、南側に伯爵領があり、海には面していない。残念。南側の伯爵領も辺境伯様の寄り子仲間である。うちの大きさは岩手県ぐらいで、その半分ほどが魔の森である。後は山や川があり、人の住める平原は少ない。うちの南側の伯爵領は長野県、群馬県、栃木県を足したぐらい。横に長く広がっているみたいだ。
うちの領主館から、馬車で2時間ぐらいの位置に辺境伯様のお城があるが、伯爵領のお館には5時間ぐらいかかる。
ご先祖様がいかに、辺境伯家にすがってきたのかがよくわかる。
フレイヤお姉様と一緒にご先祖様と辺境伯家に感謝したよ。
夜にスキルの畑に何を植えるのか配分を考えた。
今日もレベルは1個上がってトマトが新しく作れるようになった。だんだん料理の幅が広がってきそう。でも、調味料が足りないんだよね。塩とお酢に、お砂糖と作ったばかりのマヨネーズ。醤油も味噌もない。ソースも麺つゆもない。飯テロ無双はまだまだだね。
小麦は備蓄用とパンを作りたいから作る。サトウキビと砂糖は辺境伯様とのお約束で作る。卵や牛乳にバターにハチミツは作り過ぎたら時間停止の【インベントリ】に入れとけばいいので、飼料が足りれば作る。その他の野菜も美味しいから作るし、糸も布も綺麗だから作りたい。肥料も今回は小麦畑分しか間に合わなかったので、他の野菜の畑用にも配布したい。リンゴとブドウは順調に数を増やしている。外せるものないやん・・・。
仕方がないので、全部作り続けることに。配分としては辺境伯様への恩があるのでサトウキビと砂糖が多めっていうぐらいで落ち着いた。
【今日のスキル】
レベル 16
畑 51面
栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ サトウキビ 菜の花 きゅうり 人参 綿花 ジャガイモ トマト
工房 飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料、ミツバチの飼料 小麦加工工房…パン、食パン サトウキビ加工工房…砂糖 牛乳加工工房…チーズ、バター 肥料工場…肥料 製糸工房…青い糸、青い布
牧場 鶏の飼育所…卵 牛の飼育所…牛乳 養蜂施設…ハチミツ
果樹園 リンゴ ブドウ




