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成功した藍染デビューの春から6年経って、わたしは15歳になった。ルーカスお兄様は学校を卒業してイングリッド様(ご本人にはちゃんとイングリッドお義姉様と呼ばせていただいている。)と結婚されて、先日赤ちゃんも生まれた。甥っ子だ。可愛い。久しぶりに身近な赤ちゃん。壊れるかなと思うぐらい小さくて可愛い。もう泣き声すら可愛い。イングリッド様に迷惑かなと思いつつ毎日会いに行っている。
ルーカスお兄様とイングリッド様のお名前をとって、ルイと名付けられた。安直だけど可愛いから許す。
ルーカスお兄様はお父様と発展した領地の管理に飛び回っている。砂糖と青い布を売り出して一時激務になったけど、まだまだ忙しいみたいだ。イングリッド様も社交よりも内政の方が楽しいみたいで、ルーカスお兄様と領地の管理をされている。
ヒューゴお兄様はなんと学校で仲良くなった人と結婚した。学校で困っていた人を助けたら懐かれたそうだ。
お相手の方は、寄り子仲間じゃないけど、男爵家の長女でリネア様。なんとなく雰囲気がお母様に似ている、ほっこりまったり穏やかな感じの人だ。可愛いものがお好きだということで、フレイヤお姉様と話が合うのかよくお話されている。わたしにも優しくしてくださるので、一緒に楽しく過ごしている。
ヒューゴお兄様はルーカスお兄様の手助けをしていて、昔から管理してきた東の実験農場や醤油工場もそのまま管理しているし、イングリッド様とも一緒に魔の森に狩りにいったりもしている。素直で働きものの良いお兄様だ。
フレイヤお姉様は例の伯爵家の嫡男さんときちんと婚約されてラブラブらしい。フレイヤお姉様の方が2個年上なので、今年やっと一緒に学校に通えると楽しみにされている。ご嫡男さんは、成長してもごつくならなかったし下手したら女の子にみえるぐらい華奢だ。人見知りもあまり直っていないみたいで、フレイヤお姉様が世話を焼きたいと待ちわびている。
ちなみにフレイヤお姉様はピンクっぽい髪に碧眼でめちゃくちゃ可愛く育ったうえに、【回復魔法】の持ち主だけど、変な王族に引っかからず、乙女ゲームは始まらなかったようだ。
婚約者大好きアピールしてガードは堅かったとも聞いた。まぁフレイヤお姉様、俺様系大嫌いだもんね。無事で良かった。
領地については貧乏からしっかり立ち直った。辺境伯家の威光をもろに受けて砂糖事業でも、青い布も、寄り子で結集して盛り上げたこともあって、どんどん北の大地は豊かになってきている。まさにわたしが小さい頃願ったとおりになってきている。
畑も当初の広さの2~3倍になって、地平線まで広がる麦畑に感動する。お陰で人も増えてきた。行商人やお店も増えたし、美味しい料理も増えたから、冒険者もたくさん流れてきて、魔の森の間引きも上手くいっている。
東村、西村って呼んでいたけど、そのうち合併して一つの大きな街になりそうな感じ。頑張れお父様、ルーカスお兄様。ヒューゴお兄様!
従者は独身だったものは全員妻帯者になった。あの軽薄っぽい雰囲気のダグはハチミツ酒の更なる進化を求めてドノパンさんのところへ通い、そこでお孫さんと仲良くなって結婚した。ブルーノは最初から仲の良かったメイドの1人と結婚した。よそ見はしなかったのね。メイはまだ独身だ。わたしが辺境伯家へ嫁ぐ日を心待ちにしている。
わたしはというと、イケオジのお父様の遺伝子と可愛い女子お母様の遺伝子が成長とともに主張してきたので、幼い頃平凡だと思っていたのに、何故か美少年系に育った。綺麗系なんだけど、一切甘さというのか可愛げがないままに凛々しく育った。何が悪かったんだろう。
今は、王都の学校の寮に入っている。フレイヤお姉様も同じ寮にいるけど、学年が違うからなかなか会えないけど、そこまで寂しくない。
仲のいい友達も出来たし、アルヴィン様もいる。
アルヴィン様はある意味順調に育っている。15歳なのに190センチはある。幅もある大きい。少々いかついし強面だ。辺境伯様に似ているがまだプロレスラーではない。プロのスポーツマンぐらいの筋肉のつき方だと思う。イケメンというより美丈夫なせいか、飛ぶ鳥落とす勢いの辺境伯家のご嫡男様だというのに、アルヴィン様に近寄ってくる女性はいない。にらまれると怖いからね。フリーの女の子たちは、ふたつ上にいる第二王子殿下に夢中だ。まさに正統派王子様だ。
アルヴィン様もよく見れば端正なお顔をしているし、カッコいいんだよ。それに彼は嘘をつかない。魔の森で魔物と戦う男だからかもしれない。嘘をつけば全滅するような過酷な環境にいるからこそ、真っ向勝負で望んでくる。
これは愛とか恋とかとは違うかもしれないけど、わたしはアルヴィン様を信用している。
お誕生日にいただいた小さな真珠。それが今年で7個。毎年本当にご自分で採って送ってくれる。その小さな積み重ねがアルヴィン様なら大丈夫だと思える。
「何、俺の顔じろじろ見てんだ。アスタ。」
「いや、アルヴィン様かっこよいなと思って。」
「そうか、アスタは俺の良さをよく知っているな。よくわかっているやつはいいやつだ。俺はアスタのことも面白いやつだと思っているぞ。」
「だーかーらー。そこは“アスタのこと可愛いと思っている”っていう台詞でしょ。」
「ははは。アスタは可愛いかもしれないが、面白いが勝っているんだよ。」
「アルヴィン様、酷いな。せっかく作った干し柿あげないよ。」
「なんで、ここで干し柿なんだよ。」
「美味しいのに。」
「確かに美味しいけどな。ここは手作りクッキーとかじゃないのか。」
「魔の森で見つけた、えぐいと嫌われていた渋柿を手間暇かけて美味しくしたのに。今後の売れ筋商品だよ。こっちの方が凄いと思わない?」
「確かに、干し柿はうまいよな。魔の森で捨てるぐらい見かけるのに、今まで食べられなかったものに、また価値がついたな。やっぱりおまえは面白いよ。」
ははは。って、アルヴィン様が笑うから、つられて笑ってしまう。
学生時代のたいていの時間はこんな感じで過ぎていった。
夏の長期休みには辺境伯領の海に一緒に行って、魚料理食べに行ったり、魔の森で魔物を間引いては大量の干し肉作ったり、一緒に勉強もしたし、空いている時間にゲリラ的に露店でスキル産の余っているものを売って小遣いを増やしたね。増えた小遣いで甥っ子にお土産を買ったりした。
もちろんスキル操作は毎日続けており、できたものは定期的にお父様から預かったマジックバックにせっせと詰め込んでいる。
お父様は無理しなくていいよって言ってくれているけど、無理じゃなくてスキル操作はもう日常の一部わたしの一部になってしまっている。
もちろん辺境伯領にも肥料とか作り続けて渡している。
アルヴィン様には”無理はするなよ”って頭ぽんぽんされると、なんかそれが嬉しかった。
お互い異性にモテない2人は不戦勝のまま突き進むかって思っていたけど、後で友達に聞いたら、あんたたち仲良すぎて他人が入る隙なんてなかったからねって苦笑された。
まぁそんな感じの3年間だった。
【今日のスキル】
レベル 71
畑 236面
栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ サトウキビ 菜の花
きゅうり 人参 綿花 ジャガイモ トマト 玉ねぎ
レタス 茶葉 桑の葉 アボカド きゃべつ
工房 飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料、ミツバチの飼料、羊の飼料
小麦加工工房…パン、食パン、パスタ サトウキビ加工工房…砂糖
牛乳加工工房…チーズ、バター 肥料工場…肥料
製糸工房…青い糸、青い布 製油加工工房…植物油
大豆加工工房…醤油、麺つゆ 卵加工工房…マヨネーズ、ゆで卵
トマト加工工房…トマトソース 茶葉加工工房…紅茶
カカオ加工工房…ココア、チョコレート
牧場 鶏の飼育…卵 牛の飼育所…牛乳 養蜂施設…ハチミツ
釣り場…魚 羊の飼育所…羊毛 蚕の飼育所…シルク
果樹園 リンゴ ブドウ コーヒー イチゴ
桃 オレンジ 栗 カカオ 梅