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次の日、起きたら復活していた。ふらつきはなかった。
目覚めてすぐにスキルに集中する。
昨日植えたものはすべて収穫できるようになっていたし、工場や工房に投入したものはすべて完成していた。とりあえず収穫しては倉庫に入れて、次のものを植える。牛乳も取れるようになったので、牛乳の加工工房も設置する。最初はチーズだ。
カボチャもたくさん、出来ていたので、刈り取ったら、レベルアップした。次はサトウキビだ。サトウキビ!砂糖が作れる。サトウキビを増やす前に、サトウキビ加工工房も設置しておく。
そこまで作業すると、侍女のメイが朝の準備にと部屋に入ってきた。
「アスタお嬢様、おはようございます。」
「メイ、おはよう。」
「今日はしっかり起きていらっしゃいますね。ではお顔を洗って下さい。」
丁度よい湯加減のお湯を用意してくれていたので素直に顔を洗う。こういう時、お嬢様に生まれたんだなって実感する。
「昨日はスキルの授与おめでとうございます。皆、アスタお嬢様のスキルに興味津々なんですよ。」
「え、そうなの?」
「ええ。昨日小麦やトウモロコシや大豆をスキルで作られたとお聞きして興奮しました。」
「あら。メイは、そこまで聞いたのね。」
「トウモロコシと大豆を茹でた物は、昨日使用人にも振舞われたのです。美味しかったです。皆も喜んでいました。」
「そうか、トウモロコシも大豆もたくさんスキルから買ったものね。皆が喜んでくれたのなら嬉しい。」
「使用人にまで振舞ってくれるような領主様だからこそ、皆、一生懸命働こうって気になります。でも、アスタお嬢様、無理はしちゃダメですよ。スキルの使い過ぎは危ないですからね。」
「はは、メイわかったわ。気をつけるわ。」
「はい。そうしてください。」
貧乏で小さな領主館で働く人は少ないけど、皆、気心知れた者ばかりで居心地は凄く良い。ほんと今世のわたし恵まれている。皆がお腹いっぱい食べられるように頑張ろう。
「お父様、お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様おはようございます。」
「「おはよう。アスタ。」」
「アスタ、もう疲れは残ってないか?」
「はい、もう大丈夫です。だから、今日もスキルを使おうと思っています。お父様、次はサトウキビがスキルで作れるようになったので、お砂糖が出来ます。たくさん作った方がいいですか?」
「な、何?!砂糖だと!!」
「朝、起きて、作業したらレベルアップして、サトウキビが植えられるようになりました。サトウキビ加工工場もスキルの農場の敷地内に設置することができたので、そこにサトウキビを投入したらお砂糖ができます。」
「サトウキビは聞いたことがある。唯一南の方の領地で栽培が可能だとか。砂糖はそこでしか採れぬ、貴重なものだ。」
「そうですよね。わたし生まれてから一度も味わったことないです。」
「お砂糖はわたしが子供のころ病気した時食べたことがありましたわ。ほんの少しでしたが甘くて苦いお薬も頑張って飲んだ思い出があります。アスタ、お砂糖はいつ頃できるの?」
「お母様、サトウキビは朝起きてすぐに植えたので、朝食後には出来ていると思います。あと、サトウキビを収穫してから、お砂糖を作るので、お砂糖はその20分後です。」
「そんなに早くできるのですね。楽しみです。」
「ああ、砂糖は楽しみだけど、家の中で使うのは良いとして、外に出したらたちまちアウトだ。これは、辺境伯様の相談案件だな。アスタ砂糖はどのぐらい作れるんだ?」
「他の小麦、トウモロコシ、大豆、カボチャを植えるのを保留にして全部サトウキビにすれば、30分で15束できます。お砂糖は1束で手のひらいっぱいぐらいが20分ぐらいで出来ます。」
「であれば、スキルで砂糖にできない余剰分のサトウキビは購入してうちの敷地で砂糖加工工場を作るのもありですね。」
「ルーカス、アスタのスキルを使わせ過ぎてはならぬ。しばらくは様子見になるな。」
「ごめんね。アスタ。そうだね。一日中サトウキビ作らせるのはダメだね。他にもすることがあるし、昨日みたいにふらつかせるのは望んでいないよ。」
「とりあえず、本当に砂糖ができるのか、アスタのスキルを確認してからだ。」
「わかりました。朝食後にサトウキビ刈り取って、加工工房に入れてみます。他のものは倉庫に入れて、しばらくサトウキビだけ作ってみます。」
「いや、アスタ、昨日の豆。あれはまた食べたい。豆もちょっと作ってくれ。」
「ヒューゴお兄様。わかりました。大豆も作りますね。」
「今日は昨日の小麦を領地で植えられないか父上と試してみようと思っているんだ。」
「ああ、あれほど良質な小麦が収穫できるようになれば一気にこの地は潤うからな。」
「あ、お父様領地に小麦を植えに行かれるのであれば、少し待って下さい。もうすぐ肥料を作ることができます。さっき肥料工場が設置できるとありました。」
「なに?肥料か。」
「はい、トウモロコシとカボチャと大豆を使って作れるのです。肥料工場もすぐに設置します。」
「あい、わかった。朝食後昨日の小麦を種籾にしながらルーカスと検証しているから、出来たら教えてくれ。」
「わかりました!」
朝食後、スキルに集中する。朝植えたものはすべて収穫できるようになっている。大豆を3面、残りをサトウキビにして、小麦とトウモロコシとカボチャを倉庫に入れる。
刈り取って増えたサトウキビを加工工房に持っていく。画面上でついっと触れて移動させるだけで、投入できている。
砂糖は20分。その間に、卵と牛乳とを収穫する。鶏と牛は収穫後にちゃんと飼料を上げないと次が収穫できないようになっている。
飼料工場で作った飼料を鶏と牛の飼育所に投入する。いつの間にか蜂蜜も設置できるようになっていたので、すかさず養蜂施設を設置する。
砂糖と卵に牛乳。プリンが作れる!!
転生初甘味!
あ、でもその前に肥料を作る工房を設置しないと。
あ、工房や牧場等の施設の設置って2000リルかかるから、もうお金が足りなくなってきた。セバス―追加を~。
セバスから、また金貨を1枚受け取りチャージする。
肥料工場も設置し・・・そうか、肥料作るんだったら、トウモロコシとカボチャと大豆がそれぞれ1個ずついる。全部サトウキビにしてしまったら、すぐに在庫が無くなってしまう。
前世でゲームしている時もそうだった。だんだん作りたいものが増えてくると畑が足りなくなってしまう。
無計画だとすぐに在庫が無くなったり、逆に余剰分が増えすぎたりするから、上手く調整しながら植えていた。ゲームなのに、かなり真面目に計算していたな。頭を使わずぼーっとできるゲームだと思ったのに、これは5分で収穫できる。これは30分かかるからこっちが先だ。とか、結構時間配分にも悩んだりもした。
でも、今は現実。効率重視のゲーム脳はいったん忘れて必要なものから確実に、小さなとこからこつこつとだよ。
肥料は1回の投入で3個できたので、お父様のところへ行く。砂糖も出来たけど、お父様が待っているので、後回しにして、再度サトウキビ加工工房にサトウキビを投入し砂糖の数を増やしておくことにした。なんか何もしていない状態を作るのは勿体ないのだ。畑も工房も牧場も全部フル稼働。それでやっと安心する。効率重視を忘れようって言っていた端からこれだ。あうあう。
「お父様、ルーカスお兄様、肥料が出来ました!」
「そうか、肥料ができたのだな。ここに出してくれるか。」
「はい。今、購入しますね。肥料は3個で30リルです。」
どさっと足元に肥料が落ちる。これは重そう。麻袋にどっさり入っている。これが1袋だと10リル、安すぎないか。
ゲームだと、この肥料を使うことで2倍作れるところが3倍の収穫にすることができた。
その代わり、肥料の加工工房を敷地内に2000リルかけて設置しないといけなし、トウモロコシとカボチャと大豆も1個ずつ使って30分経って3個しかできない。肥料は畑1面に1個使うから、3倍にするのは、1個作るのに2時間や3時間かかる貴重なものに選んで使っていた。使いどころが難しくてゲームではあまり使っていなかった。
でも、よく考えればゲームではなくここは現実、この肥料は1面だけではなく結構広範囲に使えるのではない?
お父様が鑑定を使って肥料を確認している。
「アスタ、なかなか良い肥料みたいだ。これは期待できるぞ。植物の成長を助け、収穫量を増やすことができるらしい。」
「アスタ、【インベントリ】もスキルで手に入れたって言っていたよね。とりあえずここに出してもらったけど、いったん仕舞ってもらえる?重くてこのままじゃ父上もわたしも運べないや。ごめんね。」
「大丈夫です。ルーカスお兄様。【インベントリ】に入れときますね。で、どこまで運んだらいいですか?」
「トム爺のところの荷馬車の上かな。庭師のトム爺の知恵も借りようと思って一緒に行こうと思っているんだ。」
トム爺の荷馬車なら裏庭から行った方が早い。裏庭は雑草が生い茂っていないだけの何もない場所だ。お父様とルーカスお兄様と一緒に裏庭に行き、トム爺の荷馬車を目指す。庭師の作業場の隣に荷馬車は置いてあるのでわかりやすい。
「トム爺~。荷馬車貸してね。」
「おお、旦那様、お坊ちゃま、お嬢ちゃま。皆さんお揃いで。」
「トム爺、いきなり押しかけてすまぬ。今から小麦を植える実験をしようと思ってな。トム爺にも手伝ってもらいたい。」
「ええですよ。どの辺りに植えなさる?」
「館の東側かな、東村まで行く道以外なにもないから場所も広い。そこにしようかと思う。」
「あの辺は、あまり土地が肥えておりませんが、よろしいのでしょうか?」
「アスタのスキルで肥料が作れた。それを試してみたい。」
「お嬢ちゃまのスキルはそっち系でしたか。ようございました。新しい肥料楽しみでございます。」
「小麦もアスタのスキルで作ったものだ。ここで取れるよりも身も大きくてしっかりしておる。」
「なるほど…。これは旦那様。楽しみでございますね。」
「ああ、わたしも楽しみだよ。」
「ルーカスお兄様、今、思ったのですが、館の東側で作業するのであれば、肥料は荷馬車に乗せずに、東側に到着してから出せばいいのでは?」
「それもそうだけど、アスタまで実験に付き合うことになるぞ。」
「ここまで来たら付き合いたいです。」
「そうか、じゃ一緒に行こうか。」
4人でてくてくと館の東側に行く。東側は村に行く道がある以外何もない。村までは子どもの足で徒歩6~7分ぐらい。村の近くには畑が広がっているが、館の近くはトム爺が前庭を綺麗にしてくれているのと裏庭がぼうぼうにならないようにしてくれている以外何もない。
貧乏なんだから、館の近くも畑作っても良かったんじゃないかとふと思ったけど、痩せた土地でトム爺にそこまで負担をかけるのは遠慮したのかもしれない。
「トム爺は【土魔法】と【水魔法】と【生活魔法】が使えるのよね。」
「そうですじゃ。旦那様、この辺で良いかの。」
「ああ、トム爺、この辺を耕してくれないか。」
そうお父様が言うとぼこぼこと土が耕される。さすが経験40年の御業。
「アスタ、じゃこの辺に肥料を出してくれ。」
「はーい。」
どさどさと肥料を出す。さっきまた3個出来たので全部で6個。積んだらわたしの背より高くなるんじゃないかという厚み。思ったよりたくさん入っていそう。
お父様とお兄様とトム爺が袋を開けて魔法を唱えると、肥料が巻き上げられ出来上がったばかりの畑に降り注ぐ。
え、何?お父様やお兄様、トム爺、【風魔法】持っていたの?
1人で驚いていたらお兄様が笑いながら、
「アスタこれは【生活魔法】だよ。【生活魔法】は浄化、洗浄、着火、手当、生活水、送風、光源が使えるだろ、そのうちの送風の魔法を使ったんだ。最初はそよ風ぐらいしか使えないんだけど、わたしも父上も村の畑仕事手伝いをしたりして、練習しているうちにこれぐらいは使えるようになったんだよ。我が家はみんな魔力量が多いからアスタも練習すればできるようになるよ。」
そんなものなんだろうか。トム爺は経験年数豊富だから驚きはしなかったが、我が家のお父様とお兄様もチートでないか。送風で肥料が巻き上げられるとは想像していなかった。
この後、トム爺の【土魔法】で肥料は鋤きこまれた。30坪ぐらいの広さで肥料は1袋ぐらい使ったようだ。いい感じ。土がふかふかしたようにみえる。
「良い土になりましたのお。」
ルーカスお兄様が、種籾として準備したという小麦を取り出した。一粒ずつ外してばらばらになっている。ちまちまと作業をしたのだろうか。お父様もお兄様も偉い!
「小麦はちょうど種まきのシーズンに入ったところだから間に合って良かったよ。」
トム爺が【土魔法】で種まきをする。【土魔法】が凄いのか、トム爺が凄いのか。きっと両方なんだろう。
種まきを見ながらも、時々スキルの状態を確認して、収穫できるものは刈り取り、刈り取った後の畑に新しく植え、収穫したサトウキビ等を工房に投入と作業は続けている。
砂糖も3袋できたし、へへへ。
あ、レベルアップしたら果樹園が作れるようになった。リンゴを果樹園に植えてみる。リンゴは植える時にお金がいるみたいで1本280リル。その代わり他の農作物のように1回ずつ植えなくて良くて1日1回収穫できるようになるみたいだ。果樹は時間がかかるね。リンゴはきっと皆も気に入ってくれるだろうから、30本ぐらい植えてみた。
わたしが自分のスキルの畑の世話をしている間も、お父様とルーカスお兄様とトム爺で実験農場の方も順調に進んでいたようだ。【水魔法】で水撒きもしている。
「いい感じだな。これを村の畑にも撒いてみたいし、村の種籾もアスタのスキルの小麦にしたいな。アスタ、無理はしなくてもいいが、村に渡そうとしたらどのぐらい時間がかかりそうだ?」
「お父様、村の農業をされているおうちはどのぐらいあるのですか?」
「ああ、ごめん。数を言っていなかったね。2つの村で115世帯が農業に従事しているよ。だいたい全体の7割ぐらいかな。」
「115世帯ですね。最低1世帯に1個肥料がいるとして、1回に肥料は3個できるので、39回頑張れば行き渡ります。39回は1回30分なので、1170分それを時間で割ったら19.5時間。わたしが起きている時間が朝の7時ぐらいから夜の8時ぐらいまでの13時間なので、多めにみて二日でしょうか。一世帯に2個必要ならその倍ですね。」
「あ、アスタ?今、暗算で計算していたよね。いつのまに計算できるようになったんだ。」
お兄様がびっくりしている。へへん。暗算は前世得意だったのです。
「アスタ2日で一袋・・・。その計算、アスタのご飯食べる時間とか他のことをする時間計算に入れていないんじゃないか。それに昨日は4時間ぐらいでふらついたしな。起きている時間全部使う計算は却下だな。1週間でできるだけで良い。足りない分は今までの種籾を使えばいいし。肥料だけでも少し早めに作ってくれればありがたい。」
「普通に収穫したり植えたりする分はあまり疲れないです。それを販売所で買って実体化する回数が多いと疲れるような気がします。」
「そうか、じゃ作るだけ作っておいてもらって、出す時無理しないように様子見しながらにしよう。それと、早目にアスタのスキルは辺境伯様に報告した方が良いと思っている。セバスに頼んで、辺境伯様へのお目通りのアポイントを取ってもらおう。アスタも一緒に行くからそれなりに準備しておくように。」
「はい。お父様。」
偉い人のところへ行くのは緊張するけれど、堂々とスキル使えるようになりたいから我慢かな。メイにお出かけの準備してもらっておこう。
午前中は東の実験農場での作業だったので、午後はプリンだ。
なんだかんだお砂糖も12袋出来ている。頑張ったわたし。牛乳は1回1時間かかるけど、1回5瓶できるので、20瓶ぐらいある。卵も1回20分で1回5個できるから、60個ぐらいできている。今日は砂糖を作りたかったので、結構頻繁にスキルを気にしていたので途切れなく頑張れた。
プリンのレシピは簡単だ。だから異世界あるあるで必ずといっていいほど出てくるんだろう。卵2個に牛乳が400cc、そして砂糖が80g、カラメル用の砂糖は別に60g。
砂糖に大匙1の水を入れて茶色くなるまで煮詰めたらお湯を大匙1入れてカラメルの出来上がり。
プリン本体は、卵をほぐして砂糖を入れて混ぜて牛乳入れて温めて沸騰しないように気をつけて、混ぜて、カラメル入れた容器に濾しながら注いで蒸したら出来上がり。
前世で好きだったから良く作った。うん、本当は一番好きなのは、プリンの粉にお湯をいれて冷蔵庫で固めるだけのお手軽のプリンミクス系だったりする。つるつるの触感が好き。
でも、今世でそんな便利なものはないから普通のプリンを作ってみる。
今は8歳なので、セバスに頼んで料理人のアンナを呼んできてもらう。アンナにレシピを渡して、一生懸命説明して、卵と牛乳と砂糖を渡す。
「アスタお嬢様、わたしこの白い粉、おさとう?は使ったことがありません。失敗したら首になるんでしょうか?」
「アンナ大丈夫よ。お砂糖はまだまだたくさんあるの。失敗しても大丈夫。ゆっくり丁寧に作ってね。本当はわたしが作りたいんだけど、わたしがキッチンに入ると邪魔でしょ。」
「アスタお嬢様はお邪魔じゃないですよ。作っていただくのは旦那様の許可がないとダメだと思いますが、横で指示していただければ心強いです。」
「そうね。それでいいなら、口出しさせてもらうわ。」
アンナに横に付きっ切りで指示を飛ばし、どうにかプリンが出来た。家族みんなにも使用人にも食べてもらいたかったので、結構頑張ってたくさん作った。
「アスタお嬢様、卵と牛乳が綺麗に固まりました。なんて美味しそうなお菓子でしょう。」
「アンナ!出来たね!嬉しい。ありがとう!」
「アスタお嬢様、新しいレシピのお料理は楽しかったです。」
「アンナ、これは基本なのよ。牛乳の量でぷるぷるになったり、卵も黄身だけ使うか全部使うかとかでいろいろ変わるの。作ってからも、生クリームで飾ったり、果物で囲ったりするとプリンアラモードになるの。」
「アスタお嬢様、いろいろ作って試していきたいと思いますが、練習にお砂糖は使っても大丈夫でしょうか。」
「ええ、アンナ、キッチン用のマジックバックの中に、お砂糖と卵と牛乳は入れておくわ。お父様も館の中だけなら使ってもいいって言ってくださっているの。」
「アスタお嬢様、ありがとうございます。もっともっと美味しくしてみせます!」
「アンナ、ありがとう。一緒にこれからもよろしくね。」
出来たプリンはすぐに味見がしたいけど、みんなとも食べたい。
セバスに頼んで家族をサロンに集めてもらった。
「アスタどうしたんだ?何かスキルでまた作ったのか。」
「お父様、お砂糖が出来たので、デザートを作って見ました。」
「え、デザート!甘いお菓子ですか?」
「はい。お母様。美味しいプリンを作ってみました。」
「“ぷりん”ってなんだ?」
「見ればわかります。アンナ持って来てね。」
みんなの前にプリンを置いてもらう。ガラスの容器はなかったので、陶器の器だけど、ぷるぷるのプリンが美味しそうだ。
「この器の下にカラメルが入っていますので、少し底にスプーンを入れてみてください。」
自分のプリンにスプーンを突き刺してカラメルが出てくるのを見せる。美味しそうなカラメルの香りがするー。
お母様が一番に口につけた。
「んーんー。甘いー。柔らかいー。つるつるー。美味しいわーー。」
それを聞いて他の皆も一斉に食べだす。
「うわ。なに。これ。口に入れたら溶ける。」
「うまいっ!」
「美味しいです。ほんと美味しいです。」
「1個じゃ足りねえ。アスタおかわりはあるのか?」
「おかわりありますよ。アンナに頑張ってもらいましたから。でも、お砂糖使っているので食べすぎ注意ですよ。」「【インベントリ】には、時間停止はついているか?」
「お父様ちょっと待って下さい。スキル集中してみます。んん・・・。時間停止ついているみたいです。丁寧に注意書きがありました。」
「そうか、じゃ辺境伯様のところへ行く時に、このプリンは持って行った方がいいな。辺境伯様には、今作れるもの全部をお見せする予定だったが、砂糖で作れるプリンは衝撃的だ。これは外に出す前に、絶対に辺境伯様にお披露目した方がいい。美味しすぎる。」
「お父様、【インベントリ】から出したりするのはあまり疲れないようなので、スキルの方から収穫して余剰になったものは【インベントリ】へ移動させておきます。スキルで疲れても寝たら復活していたので、移動は寝る前にしようと思います。」
「アスタ、くれぐれも無理はしないように。お前はまだ8歳なんだからね。」
「はい。お父様、気をつけます。」
「アスタ、お砂糖はどんな感じで増えているの?」
「お母様、お砂糖は1袋がサトウキビ1本使って20分で出来るので、今は30袋ぐらいあります。1袋はこれぐらいです。」
お砂糖1袋を出してみる。大人の両手のくぼみに収まるぐらいの大きさでそう大きくはない。300gぐらいかな。
「アスタ、お砂糖の管理はきちんとしないとね。それだけで金貨数枚はするわ。」
数枚っていうことは2万から3万リル。高い!
「王家とか高位貴族しか口にできぬと聞く。もっといくだろう。ほんと、辺境伯様に後ろ盾になっていただかないと、アスタが危険だ。これほどのスキルだとバレたら搾取するために誘拐されるかもしれぬ。前にルーカスの言っていたように、サトウキビから砂糖を作る工場を建てて、アスタのスキルだとわからないように工作した方がいいのかも。ただし、現在はサトウキビすら手に入らないから、これも全部辺境伯様にご相談しよう。使用人に口外しないように契約魔法の締結も必要になってくるだろう。」
「旦那様。わたし契約魔法していただきたいです。あんな貴重なお砂糖を使った料理をしたのをずっと黙っているのは苦しいので、契約で話せないようにしてもらった方が安心です!」
「そうか、昨日はトウモロコシと枝豆だけだったが、今後どんどん何が出てくるかわからんしな。卵にしても牛乳にしても、どこから仕入れてきたんだと疑問に思うものも増えてくるだろう。変な噂が出回る前に、皆に協力してもらおう。アスタを守るためにも。」
セバスが【契約魔法】のスキルを持っているということで、使用人一同わたしのスキルを言いふらさない。秘密にする旨契約をして、とってもご機嫌でプリンを食べたそうだ。
こんな美味しいものが食べられるのであればどんどん契約すると言ったものがいたとかいないとか。
それにしても、砂糖がこんなにもやばいものだなんて。前世記憶では珍しくなかったから、甘味が食べたい一心でプリン作ったけど、危険だったんだ。やばいやばい。誘拐は嫌だ。
早く辺境伯様に全部投げてしまいたい。それが終るまでスキルから買ったものをお父様のお願い以外では外に出すのをやめておこう。しばらくは【インベントリ】の中で保管かな。
とりあえず、領民のために肥料と小麦を作る。肥料を作るのに、トウモロコシとカボチャと大豆が1個ずつ必要。肥料工場に投入すれば30分で3個できる。
小麦は5分で収穫できるから、他のものは倉庫に入れて一気に作ってもいいけれど、鶏用の飼料は小麦とトウモロコシ、牛用の飼料は大豆とトウモロコシ、ミツバチ用に小麦と菜の花ときゅうりがいる。材料は謎だけど、卵と牛乳と蜂蜜が欲しければこれらの材料も作る必要がある。
養蜂施設が設置出来る時に菜の花も栽培できるようになっていたし、今日のレベルアップできゅうりも作れることになった。ああ。作りたいものが多すぎて農地が足りない・・・。計算しないと。卵はしばらくいいか。牛乳はもう少し欲しいしなぁ。あーフル稼働じゃないと気持ち悪い。ゲーマーとして。でも今は現実、効率化を忘れてわたし!お父様、領民のために頑張らないと。
絶対必要なものを最優先。まずは肥料と小麦!
その次がサトウキビと砂糖。
ということで、トウモロコシとカボチャと大豆とサトウキビと小麦多めで植える。
トウモロコシとカボチャと大豆がそれぞれ3面ずつ。サトウキビを6面。残りを小麦。
残念だけど、卵と蜂蜜は後回し。菜の花ときゅうりも次回へ。パンの生産もいったん中止。砂糖は作り続ける。
作った小麦を販売所に移動させ、購入して【インベントリ】に保管する。ゲームと違って倉庫がいっぱいにならないのがストレスにならないのが良い。ゲームだとすぐに倉庫がいっぱいになって、地味にストレス。まぁその地味にストレスを解消するのが課金。遊びでゲームを運営しているんじゃないから仕方がないんだろうけど。わたしは微課金派だ。普通のゲームを買ったと同じぐらいの金額までなら課金しても良いと思っていた。遊ばせてもらっているからね。それ以上は無理。
別に強くなりたいとか無双したいわけじゃないから。ほんの少し空き時間がつぶせたらそれでいいと思っていた。それが今世でどう化けるのか。人生どうなるかわからないもんだね。
ふあぁー。眠い。スキルもたくさん使ったものね。今日も頑張りました。おやすみなさい。
【今日のスキル】
レベル 7
畑 27面
栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ
サトウキビ 菜の花 きゅうり
工房 飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料、ミツバチの飼料
小麦加工工房…パン サトウキビ加工工房…砂糖
牛乳加工工房…チーズ 肥料工場…肥料
牧場 鶏の飼育所…卵 牛の飼育所…牛乳 養蜂施設…ハチミツ
果樹園 リンゴ