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お父様が最近激務だ。サトウキビ栽培、サトウキビ工場、砂糖の販売。ワインの実験工場、肥料と腐葉土の実験、藍の研究、紡績工房と染織工房の拡大管理、菜の花の製油加工工房、スキル産の小麦、トウモロコシ、大豆、カボチャ、ジャガイモ、綿花、菜の花、トマト、リンゴ、ブドウ、コーヒー、桃と、種の取れたものが育てられるかの実験。辺境伯家より対価でいただいたお金で村の修復、設備の更新、数々の新しい料理や調味調のレシピの管理。これ以外に、魔物の間引き、税の計算、村の陳情への回答などがある。

ルーカスお兄様は長期休暇しか戻ってこられないし、お母様は家の中と社交を頑張っておられる。半分以上わたしのスキルのせいだ、ごめん、お父様!


「お父様、目の下に隈ができています。お仕事が激務なのは、わたしのせいでもあります。どうか、お仕事を分けてください。」

「あ、父上、俺、醤油工場作ることにしたけど、野菜の実験農場も【土魔法】持っているからちゃんと面倒みるぜ。魔物の間引きももっとできるから任せてくれ。」

「お父様、わたしは藍の研究と染色の研究をしたいです。紡績工房も染織工房も引き受けますわ。」

「わたしは肥料と腐葉土の研究ですね。後は新しい料理や調味料の関係は研究も含めて管理していきます。」

「あなた、わたくしも、砂糖の販売等のお手伝いさせていただきますわ。」

「そうか・・・。みんなありがとう。わたしは幸せものだな。」

「旦那様、工場や農場の働くものを管理する管理者を雇いましょう。辺境伯様へお伺いを立てて、子爵家の遠縁の騎士爵3男のロベルト様あたり如何でしょうか。幸い豊作に砂糖事業とこの地はだんだん潤ってきており、給与を支払うことは可能でございます。」

「ああ、ロベルト。真面目で優秀な彼か。騎士の家なのに、武芸はいまいち苦手な子だったな。そうだな、彼なら任せられるかも。ルーカスの5歳上だったか。上手くいけばルーカスの執事にしても良いか。セバス連絡を辺境伯様へも。」

「承知いたしました。」

「お父様、任せられるところは全部任せて、お父様は決定しないといけないところを決定するお仕事を中心に、お父様しかできないことだけ処理してください。」

「わかったよ。いきなり全部投げだすことはしないけど、みんなの様子を見ながら少しずつ任せていくようにするよ。」

「父上、大丈夫だぜ。どーんと任せてくれ!俺、領主の息子だし!」

「ヒューゴのマナーはまだまだだけど、気持ちは嬉しいよ。ありがとう。」

「父上、マナーは苦手だけど、やる時はやるから学校行く頃にはうまく擬態できると思うからきっと大丈夫だ。」


ヒューゴお兄様はカラカラ笑っている。お父様とお母様は苦笑されている。フレイヤお姉様も笑い出した。わたしも笑う。みんなで笑うとなんだか楽しくなる。あーほんと、ヒューゴお兄様はこのまま素直に成長して欲しいな。


それにしても打倒貧乏は誓ったけど、急激な変化はダメだな。もう少しでお父様を過労死させてしまうところだった。危ない危ない。


貧乏は本当に遠ざかってきたような気がする。今日のご飯は、朝はフレンチトーストにスクランブルエッグとベーコンにポテトサラダ。お昼はキュウリと卵とチキンとトマトのサンドイッチと、夜はパンに、野菜たっぷりクリームシチュー、ソーセージとポテトのチーズ焼き、サラダ、デザートにシフォンケーキだ。


前世の記憶が蘇った時は、硬いパンか茹でた塩味のジャガイモ。塩味の野菜スープ。これが三食だった。お父様が不作の時にすべての蓄えを放出したせいだと聞いたので責められない。それよりあの量でヒューゴお兄様の大きな体はどうやって育ったのか謎だった。後で間引いた魔物をその場で焼いて食べたり、魔の森で食べられそうな果物とか食べていたと聞いた。逞しい。


わたしのスキルのレベルアップに時間がかかるようになってきた。1か月で1上がるかどうかだけど、それぐらいゆっくり成長する方がいいな。日々作業は続けているけど、ここまでましになってきたから、ゆっくりでいいよ。ゆっくり。


そうこうしているうちに、お誕生日がやってきた。9歳になった。

スキル授与から1年経ったんだ。

へんてこなスキルだといって泣き、チュートリアルで小麦を6面の畑に植えたのが遠い昔のような気がする。あれから毎日休みなくスキル操作はしている。今年の分の小麦や肥料もぬかりなく、ジャガイモもカボチャもスタンバイしている。各種調味料もキッチンのマジックバックにいつも在庫が無くならないように入れているし、最近収穫できるようになった桃は取り合いになるぐらい人気だ。貧乏がましになった今、更なる発展のため、まだまだ役に立つなら頑張りたい。


この日、お父様からは素敵な羽ペンを、お母様からは綺麗なお花の髪飾りを、ルーカスお兄様からは王都からいい香りのするノートが届き、ヒューゴお兄様からは村で咲く可愛いお花を、フレイヤお姉様からは草木染で刺し子模様の入ったハンカチをいただいた。

「「「アスタ、お誕生日おめでとう」」」

「ありがとうございます!!」

前世で誕生日を祝ってもらったことなんて無かった。自分が生まれたことを喜んでくれる人がいることが、どれだけ心強いか。

胸がいっぱいになって、アンナと一生懸命作ったイチゴケーキはヒューゴお兄様が一番たくさん食べてくれた。

素敵な一日をありがとうございます。前世の自分も癒された気がする。


わたしのお誕生日から数日後、ロベルト様が我が家に来られた。すらりとした結構イケメン。うちのメイド軍団がそわそわしている。メイドの一人はブルーノといい感じじゃなかったのか。

真面目で優秀ということで、セバスについて一通りうちのことを学んでから管理の仕事をするそうだ。うちのこと、特にわたしのスキルについては、しっかり契約してもらった。

これでお父様の負担が減るといいな。



そろそろ藍の研究も佳境に入り、辺境伯家からは来年の春の社交シーズンでご披露する旨、連絡が入った。青い布の解禁である。辺境伯家ではマミーナ様、ご長男と次男さんの奥様たちが青い布でドレスを作るそうだ。

うちのお母様もうちで研究した藍で染めた布を使うことになった。フレイヤお姉様が猛烈に張り切っている。【調剤】のスキルはポーションを作ることだと思っていたのに、意外と染色に使える草木は薬草の効力があったりするものが多いので、【調剤】スキルでなんとかできることが多いらしい。フレイヤお姉様は下手すればマッドサイエンティストになりそうな気質の匂いがするので注意が必要だと思う。


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