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14話1話丸々抜けていたので、追記しました。すみません。
誤字脱字ご指摘どうもありがとうございました。
わたしは辺境の貧乏子爵家の次女として生まれた。
お父様、お母様、お兄様が2人とお姉様が1人いる。4番目の末っ子である。
優しく真面目なお父様は細マッチョで金髪碧眼でイケオジ。更に強くてとっても働き者だ。
お母様は穏やかで基本優しい。ピンクっぽい金髪に緑の目をしていて、こども4人産んだとは思えないぐらい可愛い。びっくりするぐらい若く見える。
ルーカスお兄様はお父様に似た金髪碧眼の細マッチョでこれまたイケメンの14歳だ。頭もいいし優しい。少し腹黒いところもあるっぽいが、貴族の嫡男だしそこは仕方がない。わたしのことも可愛がってくれている。
ヒューゴお兄様は12歳なのにルーカスお兄様と同じぐらい大きい、マッチョになるんだろうなっと思えるぐらいぐんぐん大きく強く逞しくなっていっている。赤味がかった金髪に緑の目をしていて凛々しい顔つきだ。性格は素直で裏表がなくまっすぐだ。
フレイヤお姉様のピンクっぽい金髪はお母様と同じでお父様と同じ碧眼でとても可愛い。10歳になったばかりだけど、面倒見が良くてしっかり者の世話焼きである。物凄くわたしを可愛がってくれている。小さくて可愛いものが大好きなお姉様である。
そしてわたしは今月8歳になる。髪はヒューゴ兄様より赤が強い金髪、目は青と緑を足したような青緑色をしていて、顔はやや平凡かもしれない。お母様やお姉様は可愛いらしい系だけど、わたしはどっちかといえば、お父様やお兄様方のようなきりりとした系統だと思う。
そして、前世を思い出してしまった転生者だ。
ある日、お腹が空いて、裏庭で木の実を取ろうとして木から滑って落ちて頭を打ってしまった。
痛さで目を閉じてしまったら浮かび出てくる走馬灯。
死ぬ瞬間に見ると言われている、生まれてきてから死ぬまでの出来事が頭に浮かぶ走馬灯、あれ?え、これ今世の出来事ちゃうで?前世?前世だ。
前世の、生まれて死ぬまでを走馬灯で見てしまった。思い出してしまった。わたし日本でアラサーまで生きていた。死因ははっきり走馬灯には出てこなかったけど、多分過労死だと思う。
朝から夜まで働いていたのが見えた。そうか、死んじゃったんだ。
うっすら読み取った前世では両親の仲はあまりよくなく、わたしは放置気味で大学卒業後にすぐに1人暮らししてそれから実家とは疎遠だった。ぼっちだったんだよね。趣味こそ楽しんでいたけど、誰にも心を開かず寂しく死んでいったのか。
今世、せっかく家族仲はいいんだもの、大好きな家族と幸せに暮らしていきたい。そのためにも打倒貧乏!
領地は、500人規模の村が二つ、東村と西村、正式名はあるらしいけどとりあえずほとんどこう呼ばれている。二つの村の他は山や川に、痩せた土地と広大な森。森には魔物も多いので、それもあって隣国とは戦争にもならない。森が深すぎて行き来ができないのだ。うちの領地にとっては、魔物も食料や素材になるし、木やきのこ、木の実など実りも与えてくれているので、森があるのは悪いことばかりではない。
我が家のご先祖様が、魔の森と呼ばれている、その森の魔物が氾濫した時に、勇敢に戦うことで功績をあげて子爵位をいただいたと聞いている。今もお父様と従者の人や村の冒険者たちが魔物を間引いている。最近ルーカスお兄様やヒューゴお兄様も森の浅いところで訓練していると聞く。ヒューゴお兄様は魔物を狩るといつも自慢げに報告してくれている。まだ12歳なのに凄い。
我が家のお隣の領地は辺境伯領であり、うちよりも広く、海にも面しており、土地も豊かで辺境だけど潤っている。子爵領が岩手県ぐらいだとすれば、辺境伯領は北海道ぐらいの大きさである。規模が違う。
そこを治めるご当主をはじめ辺境伯領は豪快なお人柄の方々が多く、富もパワーも持ち合わせているからこそ、下位貴族を虐めたりすることもなく、大変有難い寄り親様である。
この寄り親様がお隣にあるからこそ、うちが貧乏でも領民が飢えることなく暮らしていけているのもある。ここ数年の不作の時にも支援してくださったそうだ。ありがたやありがたや。
今世は、両親からも兄姉からも大層愛されているからこそ、この貧乏を何とかしたい。
痩せ気味の土地で小麦の収穫もぎりぎりで、他はジャガイモが多い。領主館でも、パンよりも蒸したジャガイモが出る方が多いと思う。蒸しただけのジャガイモに塩が振ってあるだけなのが主食なんて少し寂しい。そういえば豆も多い。時々お父様方が狩ってきた魔物のお肉が出てくる。
村では小麦とジャガイモとカブに人参に豆、キャベツや白菜っぽい葉物系も育てているらしくて、良くスープの中に入っている。時々村からの差し入れで卵の料理が出てくるのが嬉しい。
薄い塩味のスープには少し飽きた。
飯テロもしたいけど、材料がそもそもないし、まだ8歳。まだまだ打倒貧乏に打ち勝つものが足りない。
でも、来月、スキルの授与がある。この世界8歳になった時にスキルが授与される。【生活魔法】と後ふたつ、全部で3個もらえるそうだ。神様はふとっ腹みたいだ。
ここは転生者!チートあるんじゃないだろうか。少しわくわくしてしまう。
お父様は【鑑定】と【剣技】、お母様は【水魔法】と【回復魔法】、ルーカスお兄様は【経営】と【槍技】、ヒューゴ兄様は【剣技】と【土魔法】、フレイヤお姉様は【回復魔法】と【調薬】、あと、【生活魔法】は全員が持っている。
わたしも多分、最低【生活魔法】は使えるようになるはず。それ以外に、この領地に必要なスキルが得られますように!
「アスタ、準備はできたかい?」
お父様が声をかけてくれる。
部屋から出て、もう一度自分の身だしなみを確認して、良し。
「お父様、大丈夫。準備できました。」
「じゃ行こうか。」
「お母様、ルーカスお兄様、ヒューゴお兄様、フレイヤお姉様行ってまいります。」
「可愛いアスタ、行ってらっしゃい。どんなスキルでも大丈夫よ。楽しみに待っているわ。」
気持ちよく送り出してくれたけど、緊張でどきどきしている。変なスキルだったらどうしよう。期待と不安を胸に持ちつつ、お父様に手伝っていただいて馬車に乗る。
スキルの授与は隣の辺境伯領の町まで行かないといけない。そこの大きな教会で授与していただける。うちの領地の小さな教会では授与してくださるクラスの司祭様がいらっしゃらないのだ。
領地内の8歳のお誕生日が来る子どもが、うちの馬車に乗っていくことになる。わたしも今日は1人だけではなく、同じく今月8歳になる領民2人と一緒だ。
領民は2つの村合わせて1,000人ほどなので、8歳になる子は全員で20人ぐらいで、お誕生日月に授与されるのは1~2人でお父様がいつも送り迎えをしている。
なんて素敵なお父様!と絶賛すると、
「アスタ、これは領主のお仕事だよ。」
と、苦笑される。
それでも毎月付き添うのは偉いよー。もっと大きな領地ならどうするんだろうと聞くと、もっと大きな領地なら、自分の領地の教会で授与していただけるから送り迎えはいらないから大丈夫だそうだ。そうりゃそうだ。
馬車の中では一緒に授与される、エマとマシュー。小さな村2つなのでどっちにも遊びに行っていればだいたい顔見知りになるらしい。わたしはまだ1人で村に遊びにいけていないけど。
ちなみに領主館は2つの村のちょうど真ん中あたりに建っている。どっちにもすぐに駆け付けられるように。
窓の外を覗いていると、遠くに見える山にひたすら続く草原、時々川が見えたと思ったら、今度はカラカラの大地の荒野で、次は一面緑の草原、そしてだんだん道が石畳になっていって、町が見えてきた。うちの村とはぜんぜん違う。立派な町、というより街かもしれない。辺境伯領の領都らしい。
3人ともカチカチに緊張したまま教会に着いたみたいだ。お尻が痛い。
「さぁ着いたよ。皆、手を貸すからゆっくり降りておいで。」
お父様の手を借りて教会の前に降りる。
村と違って足元が石畳だ。周りも背の高い建物が多そうだ。どこかのテーマパークのアトラクションの中にいるような感じすらする。へーなんか凄い。ってきょろきょろしているとお父様に誘導される。
皆と一緒に教会の中に入る。うぁー大きい。ステンドガラスはないけれど、吹き抜けで宗教画みたいな絵が壁に書かれている。天井には天使の絵がある。綺麗。
順番に呼ばれて、司祭様が水晶のような球の上に手を乗せるようにと教えられた。最初はエマだ。
「スキル【裁縫】と【水魔法】と【生活魔法】励むように。」
「はい!」
次はマシュー、かなり緊張している。かくかくしながら前まで歩いていく。
「スキル【土魔法】と【剣技】と【生活魔法】励むように。」
やったーっと小さな声でガッツポーズをとっている。いいな。2人ともいいな。わたしはどうなんだろう。
最後にマシューよりもかくかくとしながら前に歩いていった。
「スキル【ようこそわたしの農園へ】は?・・・と【イベントリ】、【生活魔法】・・・。は、励むように?」
司祭様も首をかしげておられる。
え、何?なんなのわたしのスキル?【ようこそ、わたしの農園へ】ってわたしが前世やっていた農業ゲーム?なんで今ゲーム?なんで、なんで?
こんなんじゃ領地を助けられない。転生チートはないの!?
子どもの体にひっぱられたのか、涙が止まらない。エマもマシューも何がなんだかわからないまま、わたしのスキルが普通のスキルじゃないことだけ理解したようで、慰めてくれている。お父様も抱っこしてくださって、
「アスタ、アスタのスキルが何なのかまだ本当のところわからないから、家に帰ってしっかり確認をしよう。それにどんなスキルでもアスタを愛しているよ。」
お。お父様―。小さな子どもみたいで恥ずかしかったけど、涙が止まらないのでお父様に抱き着いたまま、馬車に乗った。
前世のわたしは、ずっとぼっちだったせいもあって、悲しい時も苦しい時も辛い時も泣いたことがなかった。ずっと我慢してきた。
今世、自然と涙が出て止まらない。心が体が、泣いても大丈夫、お父様はわたしを全部受け入れてくれると信じている。凄い前世にはまったくなかった感覚だ。自分が何であったとしても受け入れてくれるだろうとお父様のことを信じている。
けれど、打倒貧乏ができないという悲しみや絶望、役に立てない悔しさ、なんでチートじゃないんだ。なんで大切な人生を左右するスキルがゲームなんだという理不尽さで感情が渦巻く。
帰りの馬車の中で、えぐえぐと泣きながら、もう一度自分のスキルを意識してみると、目の前に半透明の画面が見える。タブレットより一回り大きな感じ。ノートパソコンのディスプレイぐらいか。
やけくそで、その半透明の画面を指でタップすると、
<ようこそ、わたしの農園へ>というメッセージが表示される。まんまゲームだ。
更にタップすると、案内役のボールみたいなお手伝い君がぼよんぼよんと飛びながら“さぁ 畑に小麦を植えてみよう”と案内している。
「チュートリアルだ!」
思わず叫んでしまうと、お父様やエマたちが興味深く聞いてくる。
「“ちゅうとある”って何?」
チュートリアルは、ゲームなどの基本的な操作方法や知識を、段階的に説明してくれるものだけど、この世界にゲームはない。画面って他の人に見えるのかな?
「ここに画面があるんだけど見える?」
全員首を横に振る。見えないのか・・・。
「ここに、わたしのスキルの半透明の画面があって、チュートリアルは、そのスキルの使い方を教えてくれるものかな。」
「アスタのスキルってほんと変わっているのね。でも使い方を教えてくれるなら便利かも。」
「そうだね。アスタ。“そのちゅうとあり”というものは便利かもしれないけど、馬車の中で下を向いていると酔いやすくなるから家に帰ってからにしなさい。」
「はい、お父様。」
チュートリアルを途中で置いておくのは気になるけど、実際わたしが馬車に酔いやすいので、我慢しよう。これ以上3人に醜態な姿は見せたくないからね。
村の入り口で2人と別れ、お父様と領主館へ。
もう泣いていないけど、虚無感でいっぱい。
転生したことを知ってから、このスキル授与を聞いて、絶対転生チートがあって、無双できるに違いないって、変な自信があったのが、ぺっしゃんこになった感じだ。
「ほら、着いたよ。アスタおいで、また抱っこしようか?」
「お父様、大丈夫です。」
一緒に館に入ったら、他の家族が全員出迎えてくれた。どうしよう。いいスキルじゃなかったのに!
みんなを助けられるスキルじゃなくて悲しい。何でゲームなんだろう。娯楽の無い世界のゲームは楽しいと思うけど、ゲームはゲームで生産性がないのだ。
なんだかまた悲しくなってきて、えぐえぐしながらスキルについて報告すると、お母様が抱っこしてくださった。前世では誰かに抱かれたことなんてない。温かくて安心する。
「アスタ、大丈夫よ。アスタのスキルがどんなスキルだろうと、みんなアスタを愛しているわ。良いスキルを持っているから愛しているわけじゃなくて。アスタだから愛しているのよ。」
「お母様―。」
「アスタ、わたしもアスタを愛しているよ。」
「俺も俺も。」
「わたしもアスタが大好きよ。」
ああ。なんていい家族なんだろう。心から思う。転生して幸せ!でも、だからこそ、こんないい家族に本当に報いたかったのだ!!
また、少し泣きそうになったのを見て、お父様が頭をなでてくださる。
「アスタ、ほら、“ちゅうとあり”とかいうものを途中までだっただろう。アスタのスキルがどんなものか、試してみたらどうだ。」
おお、そうだった、チュートリアルが途中だった。
スキルに集中する。半透明の画面が目の前に現れる。本当不思議だ。そこへタッチする。
最初の畑は6面。植えることができるのは小麦だけ。小麦を植えて、5分待ってみると、小麦が6面で実っている。
“小麦を刈り取ってみよう”案内役のメッセージが出る。
指でなぞるように刈り取ると12束の小麦が採れた。1面で1個植えたら2倍になるようだ。
ここはゲームと同じ。収穫できた小麦12束中、6束を6面に植える。そして5分で刈り取る。全部で18束。
するとレベルアップして、畑が3面増えた。
“今度はトウモロコシを植えてみよう”
レベルアップすると新しい作物が、倉庫に勝手に入るのか、トウモロコシ6個があって、それを植えるようにと指示される。
6面トウモロコシを植えてみる。残り3面は小麦だ。
トウモロコシは実るまで10分かかるみたいなので、画面の中の倉庫とか販売所を見てみる。ゲームよりも畑の場所は広々としている。倉庫はゲームの時と同じだけど、販売所は、誰が買うの?ゲームでは同じゲームをしていた他のプレイヤーが遊びにきて買えたけど、こっちの世界でこんな変なスキル持っている人って他にいないと思うんだけど、どうなんだろう。
そうこういろいろ確認しているうちに、トウモロコシが6面で実った。
今度は小麦を9面に植えて、5分後収穫してみる。27束になる。ここまでは前世のゲームと同じだ。このまま農業ゲームが出来るだけのスキルなんだろうか。悲しすぎる。
刈り取った後に、再度小麦とトウモロコシを植えた後、20束ほど増えた小麦の半分を、少しやけになって、画面にある販売所が謎なままなので、試しに販売所に指で押して移動させてみる。どうなるんだろう。
“購入しますか?”
“お金をチャージしてください。”
というメッセージが出た。
これは前世のゲームでも見なかったメッセージだ。
おっ、お金?小麦10束は前世のゲームでは20リルだった。前世の価値だと20円。今世のスキルでも20リルだ。チャージする場所がきらきら光る。
「お父様、20リル下さい。」
「ん?どうした。20リルが必要なのか?」
「試してみないとわからないのですが、20リルチャージするようにとメッセージが出てきたのです。」
「“ちゃあじ”というのがよくわからないが、セバス、20リルを。」
セバスから20リルを貰って、ゲームの画面のきらきらしている投入口みたいなところに押し当ててみると入った。お金。吸い込まれた。びっくりした。
わたしを見つめていた家族もびっくりである。途中でお金が消えたように見えただろう。
びっくりしながら販売所の小麦の欄に浮かぶ“購入する”を選択してみる。
そして、小麦10束がばさっと足元に落ちた。は?
ゲームの小麦が現物になって表れた?実体化した?どこから出てきたのー。小麦だよね。これさっき販売所に置いてお金払った小麦。
呆然となりながら、小麦を拾って、お父様に差し出す。
「お父様、鑑定してください。」
「ああ、わかった。【鑑定】・・・これは小麦だな。」
やった。スキルはゲームだけど、ゲームじゃない。いやゲームなんだけど、作ったものが実体化する!食べ物が増える・・・。嬉しい!
前世遊んだ農業ゲームと同じものが次々作ることができるんだろうか。わくわくしてきた。
「うちで取れる小麦と同じ?」
「いや、領地の小麦より質は良さそうだ。」
「10束20リルって安い?」
「ああ、相場より安いよ。」
「相場って、この領地の?」
「辺境伯領の小麦より良質で安い。アスタ、この小麦はたくさん買えるのか?」
「頑張って、スキルをレベルアップしていけばもっと収穫できると思う。」
「じゃ、無理しない範囲で試してくれるか。」
「うん、植えて収穫するだけなら簡単。他はどうか気になるからトウモロコシも買ってみたいです、セバス30リル下さい。」
会話しているうちに、トウモロコシも小麦も実ったので、刈り取って、再度植える。そして余剰分となったトウモロコシ10個を販売所に置く。ゲームの時と同じ30リルだ。
お金をチャージして、“購入する”を選択すると、今度はトウモロコシが10個足元にばさりと落ちた。
丸々としている。
それをルーカスお兄様が拾い上げ外皮を剥いて、生のまま齧ろうとする。お父様がちょっと待てと止めて鑑定し、普通のトウモロコシだと確認をした。
それを聞いて、そのまま齧ったルーカスお兄様は、
「つぶが大きくて甘くて水分も多い。めちゃくちゃ美味しい!うちの領地でも作ってみたい。これが10個で30リルか・・・。アスタ他にもスキルで栽培ができるのか?」
「このスキルって小麦やトウモロコシを植えて収穫していけばレベルアップするみたい。レベルアップするたびに何か新しい野菜を育てることができるみたい。」
実ったトウモロコシと小麦を刈り取ると、レベルアップして、次は大豆が植えられるようになった。ゲームどおりだ。
「次は大豆が栽培できるようなったよ。植えてから20分必要だって出ている。小麦は収穫まで5分だから、どんどん育って在庫が出来てきているみたいだけど、さっきみたいに買って実体化した方がいい?」
「大豆か。領民に馴染みのあるものだから受け入れてもらえるな。小麦は粒も大きい良質なものだから、これを領地に植えられるか試してみたいな、余剰になった分は全部スキルから買って実体化できるか?」
「セバスお金下さい~。」
セバスが面倒だと思ったのか、金貨を差し出してきた。金貨1枚で10,000リルになるので、これで当分余剰分が買えると思う。
バサバサと小麦の余剰分をあるだけ購入する、その間もトウモロコシを植えて、大豆を植えて、小麦を刈り取って収穫することを繰り返す。
大豆がようやく10株以上の余剰が出たので、購入してみる。大豆は1束5リルで10束で50リルとなった。
ばさばさ。と足元に落ちる。
ヒューゴお兄様が大豆を手に取っている。
「アスタ、この豆、まだ緑色だけど、食べられるのか?」
「ヒューゴお兄様、これは大豆だけど緑色のものは枝豆で、茹でて塩を振るだけでエールのおつまみにぴったりです。」
そうか、と呟き、メイドに茹でてもらうよう指示を出している。素早い。
あ、またレベルアップした。ゲーム始めたばかりの初期はレベルが上がりやすい。
次は3面また増えて、カボチャが植えられるようになった。
「アスタ!この豆、うまいぞ!」
ヒューゴお兄様の声で、皆が茹でた大豆の方へ移動する。
わたしの足元は小麦とトウモロコシと大豆でいっぱいだ。
大豆を食べながらも操作を続けていたら、鶏と牛が飼えるようになった。これで卵と牛乳が手にはいる。うちは土地が痩せていて草もあまり生えないから、牛は飼っている牧場が1か所ぐらいしかないと聞いているから、牛乳は嬉しい。卵は村では、それぞれの家で飼っているところがあり、お裾分けで貰えたりする感じだ。
金貨を投入したから、工房も作れるようになった。飼料を作る工場のようなものと、小麦の加工ができる工房。それぞれ2000リル必要だ。ちょっとお高い。
小麦の加工工房に出来上がった小麦を1束投入するとパンが出来るみたいだ。見た目はロールパンのような小さい丸いタイプだ。
小麦1束を加工工房に投入し、5分待つとパンが出来る。前世ゲームをしている時はそんなものなんだと思っていたけど、小麦からパンが5分って実際凄いよね。一束の小麦でパンが1個出来る方が凄いのか。どっちにしてもこういうゲームだからと思うしかない。
セバスに頼んでパン用の籠を用意してもらう。出来たパンが足元に落ちないように籠でキャッチする。
「なんだ、パンも出来るのか?」
「畑だけではなく工房も作れるようになりました。セバスからお金をいただいたので2軒工場と工房が作れました、飼料を作る工場と小麦の加工工房です。この小麦の加工工房に小麦を投入するとパンが出来るのです。」
「アスタ、俺、それ食べてみたい。」
「お父様、念のため鑑定お願いします。」
「ヒューゴ大丈夫だ、パンだと【鑑定】できだ。」
「良し、おお、柔らかい。ふわふわだ。これはうまい!」
「ヒューゴだけ、ズルいぞ。アスタ、パンはもう無いのか。」
「大丈夫ですよ。ルーカスお兄様。パンは5分で1個焼ける感じです。はい。次焼けました。」
「ありがとう。アスタ。うむ。これは美味しい。確かに美味しいね。」
パンを食べていない他の三人の目がこっちを見ている。
「お父様、お母様、フレイヤお姉様、5分で1個焼けますので、しばらくお待ち下さい。」
そう話している間も、小麦を植え、トウモロコシを植え、大豆を刈り取り、カボチャが出来た。
パンも出来た。パンはすぐさま。食べていない三人に順番に渡していった。
あ、卵も収穫できそうだ。卵は落としたら割れるよね。どうしよ。
「アスタ、何、悩んでいるんだい?」
「ルーカスお兄様、卵の収穫ができそうなんですが、落としたら割れるからどう購入しようかと。」
「おお。卵も収穫できるのか。それはいいね。落ちると割れるのであれば、落ちないように、アスタが座って操作すれば大丈夫じゃないか?」
あー確かに。
セバスに今度は卵を入れる籠を持ってきてもらうと、座って低い体勢から卵を購入した。籠に5つ卵がおさまる。どっから実体化するのかはわからなかった。でも割れなくて良かった。
少しぐらりと目が回る気がした。
「アスタ、スキル使い過ぎじゃないか。スキル授与された初日だというのに、無理をさせてしまった。」
「そうね、これだけ使ったらふらつくのも無理はないわ。今日はもう寝なさい。」
うん、もうふらふらになってきた。夕飯も食べずにばったんきゅー。
眠さに意識が薄れていく中、今日いただいたスキル、最初はただのゲームだと思って泣いたけど、領地のために使えるものになりそうな可能性にほっとする。良かった。チートじゃなくてもいいです。お腹いっぱい食べられるなら。そう思いながら寝入ってしまっていた。
【今日のスキル】
レベル 4
畑 15面
栽培できるもの 小麦 トウモロコシ 大豆 カボチャ
工房 飼料工場…鶏の飼料、牛の飼料 小麦加工工房…パン
牧場 鶏の飼育所…卵 牛の飼育所…牛乳