第11話〜買過自〜
ジユとソクは、消えた2人を追いかけず、ウロボロスの
記憶管理庁へ向かう。
「…ジユさんなんであんなに声荒らげてたんですか…?」
ソクは酒が抜けたのかシラフで問いかける。
「…昔ちょっとな…」
「ヴァーネに彼女を攫われて人(自主規制)にかけられてな…」
「……ごめんなさい。失礼な事聞いてしまって…」
「良いんだ。もう250年前くらいの話や…」
ージユの目は、酒場では決して見せなかった“過去”の奥を見据えていた。
「いまは……どうお考えで?」
「……ハハハ……面白いこと聞くな、お前。」
ジユは空を仰ぎながら、わずかに目を細める。
「赦せねぇよ。自分にも、ヴァーネにも――」
ジユ「……250年間、たくさんの死を見てきたが――」
間を置き、目を伏せる。
「彼女の死だけは……耐え難くてな。今でも、夢に出るんだ。」
そう告げたジユとソクは記憶保管庁へ辿り着く。
その時に光龍と練と遭遇するー
その時、扉が開き、出てきたのは――光龍と練だった。
「ジユさん?どうしたんですか。酒瓶は持ってないですよ?」
「マジかよ……持ち込み禁止とは……世知辛い世の中やな……」」
「えぇぇ…ないんですか……」
(体を震わせ始める)
「禁断症状か…病院を勧めるぞ」
光龍がため息をつきながら、口を挟む。
光龍「…練、少し真面目な話を。」
光龍は声を潜めて続ける。
「ヴァーネの構成員が、ウロボロス内部に侵入してる。」
練「……有り得ない。ここは世界で最も堅牢な国家だぞ…?」
ジユ「だが事実じゃ。ワシが前に対峙した女…ヘイラって名だった。」
「以前は“空間にヒビが入るように”消えていった。」
「だが、今回は違う。」
光龍「……」
ジユ「音も気配も無く、スッ…と消えたんや。まるで“その場に存在してなかった”ようになー」
練「……つまり、より精度の高い“気配遮断”能力を持つ失記者が存在している…と?」
ジユ「それもヴァーネ内部に。そりゃウロボロスも無防備じゃいられんわな。」
「……調査が急務だ。」
練の目が静かに鋭くなるー
「はー…漏ちゃん無理しすぎよ…」
――ウロボロス内、医療整備棟。
泊が溜め息をつきながら、漏の身体を診ていた。
「ネズミサイズの排水溝に、人工骨格バラして侵入とか、常識的におかしいのよ……」
「セイムさんが「無茶は失記者の特権」ってゆーてたのに!」
「あの人ならそう言うね…」
笑みが少し引きつる。
「で、僕の体どうなってるんですか…」
泊はタブレットを指でスクロールしながら、眉をしかめる。
「…正直いって分からないのよ。」
「失記者の理では10代の内に発現して魂の形式に結びつくのに…」
「あなたの場合赤子で記憶の継承をうけて、それに耐え切ってる…」
「その時点で理外。」
「しかも……出生前のエコーでは“正常な関節”があったのに」
「そうだったんですか!?へーなら後天的に消えたんすか?」
「消えたのか、進化したのか、再構築されたのか……今の科学じゃどこも原因不明とでるわ。」
「なら俺は骨格を失って影に潜み続ける理外の存在…」
「厨二病感あってかっこよくないですか?!」
「そのポジティブさがうらましいよ…」
「でも。これだけは分かる。」
「死後の記憶の継承により、受け継いだ者は…」
「記憶…つまり過去に左右される…」
「健常者も失記者も障特者も…」
「記憶という縛りを受けて生きている…」
「で、また奴らに見付かって逃げたんか?」
記憶の墓場と呼ばれる旧東京都の一部屋にてー
ウカがヘイラと息子に虐待を行い続けてるー
「偽装は完璧だった…」
「息子がヘマをしなければ…行けたのよ!!父様!!」
「今更父様と呼ぶな!気持ち悪い!!」
ウカは手にした鉄パイプで、ためらいもなく打ち据える。
「やめ…て…ください…!!」
ウカが背後から誰かにしがみつけられる。
「ちぃ…ロメか…はぁ…」
「お前長男だぞ…ロメが兄弟達を躾とけよ…」
そう言い、ウカは鉄パイプを下ろし、
積み上がったダンボールの上に座る。
「お前達。失記者の本質は…わかるか?」
「ええ。記憶の呪いを受けた者…」
ヘイラが口から血を吐きながらそう答える。
「少し違うな…」
「記憶というのは元々健常者にも障特者にある。」
「文献、伝承、歴史、書譜。あらゆるものが存在しとる。」
「なら何故神は失記者という概念をつけた?」
「人が作った物を理へと繋げたかった…でしょう?父さん。」
ロメが話に入るがー
ウカは躊躇ないもなくロメへ引き金を引いた。
その銃弾は左耳を貫いたー
「…失礼しました。黙ります。」
「ワシはこう思っている。」
「記憶という縛りの中でー」
「無限の迷宮を歩み続ける…人の根源的行動…」
「ワシはメモリーダンジョンと呼んどる。」
同刻ー
「……私はこの事象を“メモリーダンジョン”と名付けてる。」
泊は記録端末に視線を落とし、静かに続けた。
「記憶に縛られ、生き方を変えざるを得なかった者たち……それが失記者。
迷宮に似た記憶構造を彷徨いながら、“自我”を模索し続ける…」
「メモリーダンジョンを体現してるのが失記者そのものの在り方と捉えてる。」
医師の言葉にしては、どこか詩的でありー
ウカと泊の見解による発言は偶然にも
同じ名前を呼称したー




