第9話〜生死邂〜
セイムがベランダで涙を流し続け、嗚咽を漏らしてるー
その時場面が転換する。
「…久しぶりだなここも…」
見慣れた光景に、セイムはすぐに悟った。
その場所に、ひときわ異質な——鎖で封じられた扉が静かに佇んでいる。
記憶の奥底に沈んだ「なにか」が、そこにあるのを知っていた。
「…こんなところでウジウジしてられない…」
「白。社医の言う通り、空の死を受け入れよう。」
「そして、、ワシの過去も全て受け入れようー」
「よく言ったね。セイム。」
話しかけてきた人はセイムと類似してた。
たが、唯一違う点は黒髪で瞳が赤色だったー
「なんじゃお前、、」
「僕?前のセイムだよ。」
「いや、前の人格のセイムと言うべきかな?」
「…そうか。わしが空が生まれる前の記憶も無く、空の母親すらも思い出せなかったのは…」
「うん。全部僕が持っている。」
「僕でも始祖の人格の記憶までは辿り着けれなかった。」
「お互い出生は不明だろう?不明な理由は1つ。」
「失記者の始まりの頃から生きている…じゃろう?」
「ハハ!!勘がいいね。最新のセイム!!」
現在のセイムは黒髪のセイムに掴みよる。
「わしじゃって…もう大体察しておるわ!!」
「源ノ失記者によって生死の力を与えられ、人格の崩壊する度に新たな人格を作り出される。」
「その度に記憶を封印している。」
「そうじゃろ!!答えてみぃ!!お前が知っている事を!!」
「本当に勘がいいね…」
「正解。」
「流石、子を授けれただけある。」
「今までの僕たちが子を授かれなかったのは恐らく。」
「……救済のようにな…複数の魂の混合体であるからだろう。」
前の人格のセイム…いやアカシと呼ぼう…
アカシの目元には、夥しい死の影が見えた。
「どうやら…ワシたちは苦しみ過ぎたのじゃろう…」
「じゃが!こいう時こそ!!タイマンで語り合おうじゃないか!!」
「HAHAHA!!セイムらしいよ!!」
語り合いは無くなり、忘却の荒野に火花が咲いた。
セイムはいつものように拳を握り、殴り掛かるー
しかし、アカシは違った。
「…見るといい…これが僕達の本来の力だ…」
アカシは血塗れた指先を見つめると、静かに囁いた。
「記憶――再現。」
手から吹き飛ぶように血肉が散り、それらは空中で蠢き、ねじれ、やがて剣となった。
「なんじゃあ?手品か!?冗談も程々にせぃよ!!」
セイムは真正面から拳をぶつけた。
血剣と拳が激しく衝突し、衝撃が虚空に爆ぜる。
しかしアカシは、薄く笑ったまま動じない。
「もっと面白いのを見せてあげようか……記憶、再現。」
再びアカシの両手が裂け、血肉が舞う。
今度は、それが“人”となって現れた。
肉の影が立ち上がる。
目の前に現れたのは――
空によく似た女性だった。
セイムの目が大きく見開かれる。
「…空を再現しようとしたのか?」
「こんなのじゃないぞ!!もっと空は可愛いぞ!!」
セイムの親バカっぷりに、アカシは少し目を丸くし——
しかし、すぐに薄く笑った。
「……記憶が無くとも、この子だけは、分かってて欲しかったなぁ。」
「この子……? まさか……」
「そうだよ。」
「空の――母親さ。」
「……そうか…どおりで、ワシ似じゃない訳じゃ…」
「母親似じゃったんだな…」
セイムは拳をそっと解き、彼女に静かに歩み寄る。
「……すまんな…忘れてしまって…ワシはとんだ大馬鹿者じゃ…」
セイムはその場に膝をつき、頭を垂れる。
背中で語る。という言葉があるがー
まさにセイムはその背中で。
すべてを忘れた事を赦しと願うように。
失った時間の重さと、愛の形を。
後悔とそれに比例する愛の重さを語ったー
それを見たアカシは、かつて他者の親子を恨んでいた自分を思い出す――
「……セイム。試すような真似をして、すまなかった。」
「認めよう。君は、これまでの人格たちの中で――もっとも…」
「愛の重みを知り、生を、他者に委ねることができた人格だ。」
「…君なら私達の記憶全てを受け入れれる…」
アカシはボロボロと散っていったー
同時に扉にかけられていた鎖もボロボロに崩れていき
ガタガタと震えだす。
セイムは後引かずに、扉に向かって歩むーー
しかし、現実のセイムはそのまま倒れてしまう。
セイムが倒れたと駆けつけた白達が着き、
セイムへ語りつける。
「うぅん…なんじゃ…」
セイムは目を覚ます。
「セイムさん髪色が!!」
今まで白髪だったのが、突如黒と赤と白のストライプにー
それは、彼の抱えてきた過去と、現在と、未来へと繋がり、
新たな自分の確立を示すようだったー
「あぁ…思い出したからじゃろう…」
「社医。白。世話をかけたな。」
「…ええ。本当に…良かったですね…」
社医は一筋の涙を流すー
つづく




