Track1
鳴り止まないアンコール。ファンの煌びやかな笑顔。
改めて実感する。国立競技場に立っているということを。
「アンコール、ありがとう。では聞いてください。【青写真】。」
○
僕の名前は瀬川 音弥。2020年夏。5歳の時にテレビでやってた音楽番組を見た。その瞬間から自分の人生がまるで花が咲くような感覚になった。とてもかっこよくて尚且つ花があって。それが僕が音楽活動を始めた原点なのかもしれない。
そこで初めてバンドをやりたいという感情を持ち始めた。
○
その旨を家族に伝えた。当時、両親はとても驚いていた。こんな年齢でバンド活動?売れるかも分からないんだぞ。そんなことを言われた。
両親は、自分がとても頭がいいのを理由に、東京の進学校に行かせようとしていた。それも、バンド活動を反対する理由の一つだったのだろう。
それでも、僕は何度もお願いした。バンドに懸ける想いも、必死に伝えた。
○
結果的に学校と両立することを前提としてバンド活動を許可してくれた。でも、両親は少し不満そうだ
○
「嘘!音弥君。幼稚園辞めちゃうんですか!?」
「はい…本人がどうしてもというので…」
いま自分母と共にが通っていた幼稚園に来ている。退園手続きをしているそうだ。契約書類に印鑑を押して署名をしている。
「ではこれで退園手続きは終了となります。今日までありがとうございました。また時間があればお越しください。」
そう言われながら幼稚園を後にした。
「ちょっと待って!」
「え?」
友達である蒼羽 陸翔が僕に話しかけてきた。彼は僕と同じ進学校を志望していて、よく話すし、親友でもある。
「お母さん、ちょっと待ってて」
そう言って彼の元に行く。
「急にどうしたのさ。」
「いや、さっきの話に興味を持ってね。盗み聞きみたいなもんだよ。ほんとにごめん。それで、俺もそのバンド入れてくれないか?」
「えっホント!?」
正直、彼を誘おうと思っていた。彼はベースを1歳の頃からやっていて、プロ顔負けの上手さだ。きっと彼も合格するだろうから、その時に。嬉しい誤算だ。
「うん、これからもよろしく。」
そうしてハイタッチをして連絡先も交換した。僕らの家庭が比較的裕福なのもあるのか今年の初めにスマホを持たされていたので交換した。
「音弥、そろそろ行くよ。」
母に呼ばれ、幼稚園を出る。
○
夜、早速陸翔と連絡と取り合った。
音弥:よろしく!
送ると直ぐに既読が着いた。
陸翔:こちらこそヨロシク!
陸翔:でさ、
彼から質問がくる。
陸翔:音弥ってボーカル?あと、やるならうち来なよ。地下に楽器部屋あるから。
音弥:まじ!?ありがとう!明日空いてる?
陸翔:空いてる!じゃあ明日俺ん家集合で!
結局、陸翔の家に集合することになった。
ー翌日ー
「ほーここが陸翔ん家か!でかいな…」
「だろ!ってお前の家もこんぐらいだろ!じゃ早速行くか。」
そう言って地下の楽器部屋に案内してもらう。
「すっご…」
「だろ。マイク、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、キーボードなんでもありだ!」
彼の言うとおり楽器が沢山ある。高そうな楽器も沢山だ。
「俺がいつも使ってるベースは…これ!YAMAHAのBBP34 Vintage Sunburstだ!」
黒をベースに木の模様がある。ベースだ。カッコよすぎる…
「んじゃ演奏するか。とりあえず青と夏で。歌詞覚えてるよな。」
陸翔そう言って演奏がスタートした。