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第79話 神前式

「ご結婚されたらこの家はどうするのですか」

 

静子様は私をゆっくりと離し、言った。


「多分、銀次さんがここに住むことになると思う」


ここもきっと笑い声で溢れた家に変わる。


「ちょっと気が早いけど美穂ちゃんも家族になるのよ」


そうか。美穂さんも静子様の家族になって下さるのだ。


「それはすごくいいことですね」


「あら、わかっている? 千福の家族にもなるということよ」


「え?」


「たとえ見えなくなっても、私と千福は家族。もし結婚が上手くいけば、末廣のご家族、みんなと家族になるの」


「末廣さんと家族・・・・・・私も?」


「未来永劫、ずーっと家族」


家族。静子様と私は家族だったのだ、と今更気づいた。そして私にも、他の家族ができる。そう思うと嬉しい。そしてそれは、末廣と小網の一族を幸せの呪いにかけるということだ。私が一人前になれば、もう嫌なほうの呪いは誰にもかからない。


「なら。なら、これから家族のために一生懸命働きます」


「千福神様、どうぞよろしくお願いします」


頭を下げられてしまった。





瞬く間に半年が過ぎて、五月になった。


姿が完全に見えなくなるまで、静子様に札を使いながら脳と体のメンテナンスを続け、睡眠を司る脳の神経を治癒した。


そうして静子様は睡眠薬を手放すことができたのだ。


神社も立派に建てられた。白い鳥居に、白い外壁の社殿。私はそこを依代として生活するようになっているし、仁と寿も狛犬の銅像を依代として境内の中を見守っている。


しかし巫女さんが集まらず、おみくじやお守りの製造も間に合っていないので、完全には調っていない。


お参りに来て下さるかたもまだまだ数える程度しかいないけれど、トクさんは本当に毎日いらっしゃる。ヤエさん親子は夏頃には来るとの報告が稲荷の使いの者から届いている。 


他にも邪悪さの一切ない妖怪はお参りに来る。


静子様の神前式が花松神社で執り行われる。そんな爽やかな初夏の風が吹く中で、私

は大山咋命様より天様を通じて式に招待された。


天様も白様も、もう私や仁、寿にはなにも言わずに今では嫌味のない丁寧な敬語を使う。


彼らも正式に私のことを神と見なし、仁と寿のことも神使と認めて下さっているのだ。


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