第71話 恵比寿様
恵比寿様は真面目な表情で私の両肩に軽く触れる。
「これからは神として頑張りなさい。天津神も千福殿を認めるだろう。そして十月、神無月の時は神々が出雲へ出かける。我々は留守神としてそれぞれの土地を代わりに守ろう」
恵比寿様は留守神として神無月は人々をお守りしている。私はまだまだ位が低く認知度もないから出雲へは行けない。
私も留守神となるのだ。
「おつとめは頑張ります。が、千幸神社に恵比寿様も祀られることになったようです」
「なんと。それはまだ聞いていなかった。本当か」
「はい」
恵比寿様は満面の笑みを浮かべた。
「なら共に、この街の人々を見守っていけるな」
「はい。今後、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます」
恵比寿様に頭を下げる。七福神様は今も全国津々浦々、学校を回っているそうだ。
私から言い出したことなのに、しばらく忙しくて何もしていなかったので、予定がない時に再び宝船で学校を回ることにした。
ふと人の気配を感じた。赤ちゃんを抱いた夫婦がやってくる。
「これから祈祷の時間だ。私は仕事があるから去るぞ」
言って、姿を消されてしまった。夫婦は寶田さんだった。無事赤ちゃんが生まれたのだ。
「夏樹、いい子にしていてね」
寶田の奥様がそう赤ちゃんに語りかけている。名前を夏樹にして下さったのだ。
「これはおめでたいところに参ったな」
毘沙門天様が寶田夫婦を見て言った。
「なら少し見ていきません?」
弁財天様が言う。大山咋命様から神の座にあがることを許され、私は赤ちゃんのご祈祷を見届けた。
大山咋命様が産土神となり、七福神様にも見守られて、この赤ちゃんはきっと幸運でいい人生を歩めるに違いない。赤ちゃんは私たちに気づき、にっこりと笑った。
笑顔を返す。すると更に喜ぶ。そうして、私はこれから神の世界に本格的に入っていくのだと思い、覚悟を決めた。
神の世界に入れば、まだお会いしたことのない神様との出会いがある。




