第7話 神様との人脈づくり
家には空いた部屋が三室あるので、私は二階の一部屋を頂いている。
神って寝るのだろうか。
七福神様は夜、寝るときもあれば寝ずに宴会をしていることもあると仰っていた。
神は基本眠くはならないのだそうだ。だが、私はやはりまだ力不足なので疲れもするし眠たくもなる。
朝五時に起きて、静子様に朝ご飯を作りラップをかけて書き置きをして家を出る。
神社を巡るのは午前中のほうがいい。午後は人々の邪気が多くなり、魔も近づいてくる。
傘を持って家を出た。六月なだけあって外は明るいが、蒸し暑く今日は雨も降りそうだ。氏神様にご挨拶をしたあと、駅へ向かう。移動手段は電車。
静子様のパソコンを借りてインターネットで調べて、回る神社をチェックしておいた。
まだ通勤前の時間帯なので人々は少ない。切符は一応買っている。
電車の中で座っていても、誰も私のことが見えていないようだ。街から一歩離れれば、私の存在を知る人は一人もいない。他の街では信仰を集められていないので姿を見て頂けないのだ。
どんどん人のために役に立って、認知してもらわなくちゃ。そんな期待も持って、最初に東京大神宮へ向かった。縁結びで有名な神社だけれど、こちらには最高位の神様がいらっしゃる。
神社はまだ人々のために稼働している時間帯ではない。階段を登ると、ツンとした空気を感じた。敷地内で飼い放されている狛犬が二匹、ちらりとこちらを見る。
「おはようございます」
言ってもそっぽを向かれた。
「幸福神である千福と申します。ご挨拶をさせて下さい。よろしくお願いします」
狛犬達はまるで反応して下さらない。ただ追い出される気配もないからここにいることは許されているようだ。
拝殿に立ち、お賽銭を入れると失礼のないように人間と同じく二礼二拍手をした。狛犬以外誰にも聞こえないから声に出して言う。
「天之御中主神様、高御産巣日神様、神産巣日神様、天照大神様、豊受大神様、倭比命様、初めまして。幸福神の千福と申します。今日はご挨拶に参りました。以後お見知りおき頂けますと幸いでございます」
神様の名前を一柱ずつ言い頭をしばらく下げる。突如強力な向かい風が吹いた。
これは。
顔を上げる。多分「帰れ」という意味だ。どうも私の存在がお気に召さなかったらしい。
でもここで引き下がるわけにもいかない。
「あなたがたに認めて頂けますよう全力で日々精進して参ります。私ごときでは話し相手にすらなれないかもしれませんが、人々のお役に立てるよう頑張りますので見守っていて下さい。何卒これからもよろしくお願いします」