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第5話 静子様の幸せ

そうと決めるとワクワクしてきた。


街中を隅々まで走り回って転んだ人を助けたり、喧嘩になりそうな人たちの仲裁に入ったり、街のゴミ拾いをしていた。


そうしているうちに夕方になったので結局料理はグラタンにして、家に戻り作り上げて待っていると、七時過ぎに静子様は帰っていらっしゃった。


「お帰りなさいませ。本日もお疲れ様でございます」


「千福こそお疲れ」


木造建築の一軒家。ご両親と妹君がいた頃は賑やかだったそうだ。


だが、九年ほど前、ご家族が旅行をされている最中に事故でみんな亡くなってしまった。


そのとき静子様だけどうしても抜けられないお仕事があってご旅行へは行かれていなかった。


今静子様はこうして笑顔でいらっしゃるけれど、私が誕生する前はあれだけ泣いていたのだ。


時々とても心配になる。癒えない傷はあるはずなのだ。


静子様は洗面台で手洗いを済ませると、リビングの四人がけテーブルの椅子に座った。


一緒にご飯を食べる。お話をすると、とても優しいお顔で聞いて下さる。これは私にとってはとても大切で愛おしい時間だ。


毎晩、なにがあったかを話すのが日課。そうして本題を話すことにした。


「私はこれから神様との人脈作りをしようと考えております。だからしばらくこの街でのおつとめはおざなりになると思いますが・・・・・・」


「それはいい考えだと思うわ。みんな神様修行を応援してくれているから。今日もね、帰りに笠間さんが言っていらしたのよ。千福ちゃんが早く一人前になれるようにって」


「嬉しいお言葉でございます」


「ちょっとした旅を楽しんで来るといいわ」


「ではそうします。パソコンをお借りし、行ける範囲で明日から回って参ろうと思います」


「うん。氏神様にご挨拶してからね」


「はい。ところで・・・・・・」


私が一番幸せにしたい人は静子様だ。これはひいきになるのかもしれないけれど、私の神様は実質静子様なのである。だから静子様を幸せにしたい。


「静子様は今、幸せですか」


意外な質問だったようで、一瞬だけ真顔になり、すぐに笑った。


「千福がいてくれるから、私は幸せ。あなたといられる日々はとても大切なの」


「それならいいのですけれど」


私の存在が少しでも静子様の役に立っているのならよかった。そしてそのような念もしっかり感じ取れる。


でも、静子様はどこか影が差している。本人は無自覚でいらっしゃるけれどトクさんや浩さんや寶田さんのような気楽さが見られず、どこか張り詰めておられる。


やはり苦しい人生を送ってきたせいだろうか。


家族を亡くす前は別の町に住んでおり、空き巣に入られたり、家が放火で全焼したり、親戚が病で次々と亡くなったり、一度通り魔に殺されかけたりと様々な不幸が度重なってあったようだから、そうした過去の思い出も身に染みて影響しているのだろう。


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