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第35話 トクさんのもとへ

はっきり言って成仏させて、お子様のところへ連れて行ったほうが幸せになれる。


そう判断したので、今の年代を伝える。すると女性は口元に手を当てた。


「そんな。もうそんなに経っているのですか。では。では息子は一体どこへ。私はただ一目会いたいだけなのに。私は死んでいるのですね」


女性は私の浴衣の袖を掴んで深刻な表情で言う。


「はい。なんと申し上げればよいのか・・・・・・」


「では私はどうすれば宜しいのでしょうか。どうすれば息子に会うことができますか」


この街で明治の頃に生きていたというのなら多分、誰か子孫がいるだろう。死者にも全うしたいことがある。もとは人間だったのだから怨霊や悪霊でない限りは尊厳もある。


「ご子孫がいらっしゃるかもしれません。ご子息のお名前は。姓から教えて頂けますか」


「松島友重」


松島? もしかして翔君のご先祖様だろうか。松島の姓は全国にたくさんいるけれど、知っているのは翔君とトクさんくらいだ。


まずはトクさんのところへ行ってみようか。


「ちょっと来て頂けますか」


静子様のところに戻り、承諾を得てトクさんのお住まいへうかがうことにした。


今この神社にトクさんの姿はない。仁と寿、女性の幽霊を連れて参道を引き返していると――。


「千福様!」


翔君が私を見つけて駆け寄ってきた。


友達が数人いるようだ。この前言っていた新しくできた友達だろうか。すっかり笑顔も戻っている。


「会えて嬉しい。楠町からわざわざ来たの」


「この街にはおばあちゃんの家があるから、今日は泊まらせてもらうんだ」


あ、そうか。頭の中で全然繋がっていなかった。姓が同じなら翔君がトクさんの御孫

さんであることは十分に考えられた。なぜ気づかなかったのだろう。


「ひょっとしてトクさん?」


「なんで知っているの」


翔君はびっくりしたように目を見開く。


「トクさんにはよくお世話になっているの。それで今からおうちにお邪魔する予定」


「なにか事情があるの」


後ろには幽霊がいる。言うと多分、気味悪がるかもしれない。人間とはそういうものだ。


「ちょっと人から頼まれてお仕事」


「そうなんだ。俺も行ったほうがいい?」


私は首を振った。


「翔君はお友達とたくさん楽しんで。じゃ」


神社から離れて、女性を呼び寄せ、二匹と二人でトクさんの家へ赴く。


窓を軽く叩くと、カーテンが開いた。


「おや、千福ちゃん。いらっしゃい」

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