【第1章】 未来人、婚活セミナーに乱入する
「それでは本日も、理想のパートナーを見つけるための“自己プロデュース力”を──」
──ガチャ。
唐突にドアが開いた。というか、ぶち破られた。
「失礼しまーす! 未来から、制度ぶっ壊しに来ましたー!」
司会の女性が口を開けたまま固まった。
未来人(俺)は、スーツも着ずにTシャツ一枚。
しかも胸にデカく「恋愛=幻想」って書いてある。手書きで。
「えっと……どちらさまでしょう?」
「未来人です。あと婚姻制度が時代遅れだって気づいてない現代社会を救いに来ました!」
「警備──!」
しかし俺は構わずステージへ。
「まず質問です! 結婚とはなんですか!?」
「え……えっと、人生の伴侶を──」
「ブッブー!!それ、制度です!
あなたが欲しいのは“相手”ですか?“契約者”ですか?
本当に求めてるのは、“共同体”ですか?“保険”ですか?」
「じゃあ聞きますけど──なぜ、“1対1”なんですか?」
「いや、それは……」
「“愛が重なる”って幻想に、社会保障をくっつけただけじゃないですか!?
制度と感情、勝手に合体させて地獄になってません!?」
会場、笑いながら若干引いている。
【未来人の初期提案資料(雑に手書き)】
『婚姻制度v1.0 → v2.0 提案』
・結婚は“スマート契約”で実行
・「愛してる」ボタン付きNFT(有効期限1年)
・離婚=「関係の非対称性」自動検出による契約解消
・扶養制度の廃止/役割オークション制導入
「ちなみにこの“婚姻NFT”、定期的に“再契約申請”が必要です」
「通知来んの!? “再愛してますか?”みたいなやつ!?」
「はい。“一緒にいる根拠を明示してください”って通知が飛びます」
「地獄か!!」
未来人はにっこり笑う。
「本当の地獄は、“問いを失った関係”ですよ。
結婚は“安定”じゃない、“問いの継続契約”なんです」
その日、婚活セミナーは中断された。
が、数日後、SNSにこういう投稿がいくつも見つかった。
「婚姻NFT、ちょっと欲しいかも」
「“愛してる”を契約化したら、自分が本当に愛してるかわかりそう」
「何あの未来人……正気なのに狂ってた」
未来人は、また何かを仕込んでいた。
次の制度爆破に向けて、ランドセルの中に。
【次章予告】
第2章:婚姻制度はNFTでええやろ制度
感情の契約化が始まる。誰が、どこまで、何を担うのか?
「“愛”って曖昧だから、制度にしまーす!」という地獄編。
次回、感情がメタマスクに接続される。