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第95話 別世界の彼女とは、話しにくいじゃない

 マリーの登場によって主役が全て揃い、パーティは本格的に始まった。

 まもなく給仕達が銀の盆に載せた豪華絢爛な料理の数々を運んでくる。


 会場のテーブルには、王宮の料理長が腕によりをかけた極上の美食が次々と並べられていく。


 黄金色に焼き上げられた丸鶏のロースト。

 色とりどりの野菜で彩られたサラダ。

 デザートテーブルには、砂糖細工で装飾された繊細なケーキ。


 全ての料理が、見る者の目を楽しませている。


 乾杯の音頭と共に響くグラス同士の澄んだ音色が、祝祭の調べのように会場に響き渡っていた。



 僕は少しずつ出された料理をいただきながら、マリーの方をチラチラと見ていた。


 しかし、マリーはずっと貴族達に囲まれていて、僕が介入する隙がなかった。


 彼女もグランドクエストを達成した一員。

 貴族達にとっては話題の種なのだろう。


 彼女を中心とした社交の輪は、まるで見えない壁に囲まれているかのように、僕には近づき難い雰囲気を醸し出している。



 ————仮にあそこに割って入れたとして、何を話せばいいのだろうか。


 ドレスが綺麗?

 髪型や化粧が綺麗?


 そんな話をする間柄だっただろうか。

 冒険の途中で交わした飾らない会話や、焚き火を囲んでの素朴な語らいをするような仲だったはずだ。


 でも、冒険者のバディの時のようなカジュアルさで、この格式高い王宮のパーティで話しかけるのはどうなのだろう。



 思えば、グランドクエストが終わってから、全然話せていない。


 僕は、マリーとどのように話していたんだっけ……?



 マリーと話したい。

 前みたいに、ただ心が安らぐような会話をしたい。



 彼女は、僕をどう思っているのだろう……?

 僕と、話したいと思ってくれているだろうか……?



 悶々と考えてしまっていると、照明が切り替わり、会場の雰囲気が変わる。

 先ほどまでの温かく華やかな光から、より幻想的で洗練された照明へと変わり、会場全体が神秘的な美しさに包まれる。


 黒いスーツに身を包んだ司会の執事が、再びマイクを手に取って壇上に立った。



「ただいまより————舞踏の刻といたします。今宵の舞、最初に踊られるのは、マリナス・アンドレアス王女殿下と、今回、グランドクエストを達成した伝説の勇者、レックス殿です!」



 会場に盛大な歓声と拍手が湧き上がる。

 人々の期待に満ちた視線が、舞踏会の主役となる二人に注がれていた。


 すると、マリーが椅子から優雅に立ち上がり、軽やかな足取りで僕の隣に座っていたレックスの元へと進み出る。

 彼女の纏うドレスの裾が、まるで夜空に流れる雲のように美しく舞い踊っていた。



「レックスさん、いや————伝説の勇者殿。私と踊ってくださいますか?」



 マリーが上品に手を差し出す仕草は、まさに王女としての品格が滲み出る、絵画のように美しい光景だった。

 その優雅で女性らしい所作に、会場の誰もが息を呑んでいる。


 その時————レックスに横目でちらりと、僕の方を見られた気がした。

 ————嫌な予感がした。



「ちょっと————」



 しかし、レックスは立ち上がることなく、司会の執事を手招きで呼び寄せた。

 執事が差し出したマイクを受け取ると、拡大された声を会場全体に響かせる。



「————彼女がこの場で最初に踊るべきなのは、私ではない」


「え?」



 突然の言葉に、会場全体がざわめき始める。


 そして、レックスは迷いなく僕の方を指し示した。

 その瞬間、会場にいる全ての人の視線が僕に集中する。


 先ほど感じた嫌な予感が、的中したのである。



「この数ヶ月間、彼女と共に鍛練を重ね、強くなり、そしてグランドクエスト攻略に大きく貢献してくれた————冒険者、クローム・ノアにこそ、彼女と最初に踊る資格がある!」



 え、ええええええええ〜〜〜〜!?




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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