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第85話 最強の勇者がいるなら、彼女を守り切ればいいじゃない

 洞窟の奥深くで、空気そのものが荘厳な重みを帯びていた。


 真の古龍————エンシェントドラゴン。

 威風堂々とした威厳を纏い、その巨体は鎮座している。


 深海のような濃紺の鱗が一枚一枚、まるで星座のように煌めいていた。

 鱗の表面には古代の叡智が刻まれているかのような神秘的な紋様が浮かび上がり、太古の昔から蓄積された魔力が虹色の光となって空気中に漂っている。

 先ほど対峙した不死のドラゴンとは、完全に別の存在だった。



 古龍の神秘的な鱗の色、オーラ。

 先程の禍々しい不死のドラゴンとは全く別物だった。


 洞窟の入り口から、一筋の光が差し込む中、一人の挑戦者がゆっくりと姿を現した。

 ここに彼女が現れるのは、もはや運命である。


 白銀の鎧が輝きを放ち、青いマントが微風に舞っていた。

 腰に佩いた剣の柄から、神々しいまでの黄金の光が溢れ出している。


 それは単なる武器ではない————勇者にのみ扱うことを許された、この世界の希望そのものが形となった聖剣だった。

 刃身全体が黄金の炎に包まれ、その輝きは闇を切り裂き、邪悪なものを浄化する力を秘めている。

 まさに勇者の証として、選ばれし者にのみ応えるのだ。


 伝説の勇者レックスが今、太古の叡智を宿すエンシェントドラゴンと、運命の対峙を果たした瞬間だった。

 空気が張り詰め、時が止まったかのような静寂の中、両者の視線が交錯する。




 *




「プロテクトレックス?」


「ああ、それが俺達の最後の切り札だ」



 レックスの剣は勇者にしか扱えない剣であり、勇者の力を溜めて、解放することができるものだ。


 この剣は勇者の魂の力を蓄積し、臨界点に達した時にその全てを一気に解放することができる。

 長年の修練によって磨き上げられたレックスの精神力と、聖剣に宿る魔力が融合した時、その威力は一撃必殺————如何なる邪悪も完全に滅ぼし去る絶対の力となる。


 だが、勇者の力を根こそぎ使い果たすこの技を放った後は、レックス自身が完全に無力化してしまう。

 身動きすらままならない状態で、敵の反撃を受ければひとたまりもない。


 だからこそ、レックス以外のメンバーが盾となり、必殺の一撃が確実に敵の急所を貫く絶好の機会を作り出すまで彼女を守り抜かねばならない。


 先ほど私とクロとチカで、アンデットドラゴンの正体を暴くために、チーム全員の息の合った連携でドラゴンの鼻先まで肉薄した時と根本的には同じ作戦である。



「正直に言えば……冒険者の連携としては下の下の戦法だ。それに、敵を倒せるかどうかは、全てレックスの技に頼ることになってしまう」



 すなわち、これで倒せなかったらもうどうにもならない。

 このチームが生き残れるか、全責任をレックスに押し付けてしまう、苦肉の策だ。



「大丈夫だ」



 それでもレックスは、その杞憂を振り払うように、力強く言う。

 チーム全体の生死が、仲間の命運が、全て彼女に背負わせてしまうというのに。


 自分の役割を理解しているかのように、レックスは冷静だった。



「一撃で敵を倒せる。私の力を信じてくれ」



 瞳の奥で金色の光が宿り始め、聖剣との共鳴が徐々に高まっていく。

 周囲の空気が震え、彼女から発せられる威圧感は、まるで嵐の前の静寂のように重く、そして圧倒的だった。


 作戦開始だ————

読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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