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第83話 生き残る可能性があるなら、それに賭けるしかないじゃない

「マリー、一つ確認していいか?」


「はい、何ですか?」



 一通り、説明が終わり、静寂が訪れたところに、レックスが口を開く。

 気づけば、そこにいる全員の視線が私に集中していた。


 目を点にして、珍しいものを見るような目で。


 なんだ? 私まさか的外れなことを言って————



「「なんでただの王女様が、そんなこと知ってるんだ?」」



 思考が完全に停止する。

 なんでって————そりゃ前世で医者の勉強してたからって……あっ————



「あ————ああ〜〜えっと……それはその————」


「マリーは昔、お医者様を目指していたらしいですよ」


「そ、そうそう! そうなんですよあははは〜〜!」



 あっぶねええええ……

 思わず現実世界の話をするところだった〜〜……


 こんなツッコミを受けるのは久しぶりだったから油断していた。


 一人勝手に焦っていると、レックスはふっと笑みを漏らす。



「なるほど、理解したよ。マリーが熱がある状態で必死に頑張ってくれた結果だ。私達はマリーを信じるよ」



 ありがとうな。


 レックスは私の頭の上にポンと手を置く。

 彼女の温かい体温がそこから伝わってきて、心の奥深くに安らぎが広がった。

 その瞬間、チームの役に立てたんだという実感が胸の中に湧き上がってくる。


 よかった……


 こんな私でも、少しは皆の役に立てたんだ。



「てか、そうだった……私、体調悪いんだった」


「意外と今大丈夫そうですよね」


「信じられないくらいのアドレナリンが出てて……でも気を抜いたら倒れそう……」



 なんなら、つい数十分前まで気絶していたのだ。

 もはや自分の体が自分のものではないような、浮遊感のある不思議な感覚が続いていた。


 体調が悪いことに、気づかないふりを続けなければ……



「じゃあ、どうするんだ? つまりあの死体ドラゴンは無敵だってことだろう?」



 ラウムの重い言葉に、パーティメンバー全員の表情が少し暗くなる。


 そうだ。

 やり遂げた気になっていたが、事態は何も改善していない。


 未だ、私達はこのダンジョンという巨大な迷宮に閉じ込められている。

 ここから脱出するためには、このダンジョンのボス————エンシェントドラゴンを討伐しなければならないのだ。



「グランドクエストの達成方法がいつもと違うのかな? 封印とか成仏とか……」



 ラウムの問題提起に対し、レオナがアイデアを出す。

 確かにアンデットであれば、魔法で封印したり浄化したりなど、ただ戦う以外の要素が必要に思える。


 だが、レックスが首を振った。



「いや、グランドクエストの達成条件は、確かに『エンシェントドラゴンの討伐』だ。これは間違いない」


「だがなあ……標的が死んでいたら倒すも何もないだろう」



 むう……とラウムが唸り声を上げる。


 あの無敵のドラゴンを討伐できるとは到底思えない。

 何とか全員生存しているとは言え、もしもう一度戦えば、確実に負ける。



 誰しも、再びあの死地に赴きたいという人間はいなかった。


 沈黙が、再び私達を絶望感で包み込もうする————



 その時、隣のクロが何かを思いついたように顔を上げた。



「あの死体ドラゴンとは別に、本体がいる……?」



 クロの発言に、まるで暗闇に差し込んだ一筋の光のように、皆が希望に満ちた表情で顔を上げる。



「本体を倒せば、クエストはクリアできる……?」


「つまり、あのアンデットドラゴンは無視して、本体を倒しにいけばいいってこと?」



 他のメンバーも新たな可能性に気づき始めた。


 すると、レックスが何かを決断したように、立ち上がる。

 そして、パーティの比較的奥で、ちょこんと座っているニカチカの方を振り向いた。



「ニカチカ。まだ魔力は残っているか?」


「————余裕」


「————楽勝」



 無表情ながらも、頼もしい返答をする双子の魔法使い。

 その返答に、レックスも笑みを浮かべる。



「よかった。このダンジョン内の生物反応を探ってくれ」



 そして、レックスは他のメンバーとも一人一人視線を合わせた。

 その瞳には、私達に残された最後の可能性に立ち向かうための、決意が燃えていた。



「エンシェントドラゴンの討伐、これを達成できなければ、このダンジョンからは出られないんだ。だから、少しでも生き残る希望がある方に賭けよう」



読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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