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第82話 死んでいることを証明したければ、光を当てればいいじゃない

「ドラゴンが死んでる!?」



 私が告げた衝撃の事実に、仲間達は一斉に驚愕の声を上げた。

 石の狭い洞窟に彼らの声が反響して震える。


 それはそうだろう。

 つい先ほどまで凄まじい死闘を繰り広げていた巨大な敵が、実は既に死んでいるなどと突然告げられれば、にわかには信じられない。



「いや生きてんじゃん」


「違います。あれは人形————いや、死体です」



 レオナが真顔で反論するが、それすらも否定する。


 そう、あのドラゴンは死んだまま活動している。

 すなわち、アンデットなのだ。



「説明してくれ」



 レックスが腕を組みながら、私に説明を求める。

 私は咳払いをし、ふらつく体をクロに支えてもらいながら、ゆっくりと話を始めた。



「まず、このダンジョン内に満ちた瘴気です。これが湧き出ているのは————まさしく、あのドラゴンからです」



 なぜあの古龍が瘴気を撒き散らしているのか。


 あのドラゴンが、既に命を失った死体だからに他ならない。

 死体のまま、それでも執念深く動き回っているからこそ、死の瘴気が絶え間なく放出されているのだ。



「そして、あの超再生力。何の代償も無しに、あの力を行使できるはずはないです。だからこそ、腐食の呪いを使って、生物に自身の腐敗を押し付けていると考えられます」



 死体である以上、その身の腐敗は自然の摂理として避けられない宿命だった。

 いくらこの世界がファンタジーと言えど、万物はいずれ朽ち果てていくという自然の掟からは逃れられない。


 腐敗が進まないということは、何かしらを犠牲にして、その朽ちゆく体を無理やり保っていると考えるのが道理だった。

 その犠牲となっているのが、周囲の生物なのだろう。



「確かに……事前情報では、エンシェントドラゴンに再生力も腐食の呪いもなかったはずだ……」



 ラウムが顎髭をさすりながら、思案顔を浮かべる。

 事前情報では、エンシェントドラゴンはただの古龍モンスターという分類であり、アンデッドという情報は調査書のどこにも記載されていなかった。



「だが、それだけじゃまだ推測に過ぎないだろう。マリー、お前はその仮説を立証するために、ドラゴンの目の前まで突っ込んだんだな」



 勇者達の見事な連携攻撃によって、私はあの巨大な竜の目の前まで危険を顧みず突き進んだ。

 そして、命懸けで閃光魔法を発動させ、その後、逃走した。


 その行動の裏には、確固たる理論的根拠があったのだ。



「はい、閃光魔法を発動して、あのドラゴンの()()を確認しました」


「瞳孔?」



 私は自身の黄金の瞳を指差して、そう告げる。

 ここから先は、剣と魔法の異世界ファンタジー的な話ではない。


 前世から持ってきた、生物学の原理に基づく科学的な話だった。



「生物は目に光を当てれば、瞳孔が縮まります。これは瞳孔反射と呼ばれる、どの生き物も持っている生物反応の一つです」



 生物における反射とは、生き物が外からの刺激に対して無意識にすばやく反応するしくみだ。

 人間で言えば、熱いものに触れた時に、考える前に勝手に手を引っこめるのもそれである。


 危険を避けたりその身を守るための、大切な働き。


 瞳孔反射も、生き物の目を守るため、目に入る光の量に応じて瞳の大きさが変わる反応である。

 明るい時は瞳が小さくなり、暗い時は大きくなるはず————



「すなわち、これが起こらないということは、あのドラゴンはすでに死んでいる可能性が高いということです」



 チカが『フラッシュ』の魔法を放つと同時に、私の目に遮光の魔法を使用した。

 光を当てた時の反応を間近で確認したのだ。


 目が潰れるほどの閃光魔法を目の前で発生させたにも関わらず、エンシェントドラゴンの瞳孔の大きさは変わらなかった。



 すなわち————あのエンシェントドラゴンは、すでに死んでいるのだ。




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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