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第80話 仮説を立証したいなら、突っ込めばいいじゃない

「————本気?」


「うん……」



 私の突拍子もない提案に、チカはいつもの真顔で問い返してくる。

 まだ仮説の段階だ。

 それが本当かはっきりさせるために、これを試さなければならない。



「これを試すには、エンシェントドラゴンの目の前までいかないといけないですね……」


「でも……それくらい接近しないと()()()()から……」



 かなり素っ頓狂で無謀なことを言ってしまっている自覚はあった。

 でも、私の今の仮説を実証するには、こうするしかない。


 問題は、この作戦を私一人では実行できないことだった。

 目の前の二人がうんと言ってくれなければ、この作戦は遂行不可能になってしまう。


 張り詰めた空気の中で、三人の呼吸音だけが響いていた。

 一瞬の静寂の後に、クロが意を決したように口を開く。



「やってみましょう」



 そして、チカの方を向いて、強い意志を込めて主張する。



「僕は、マリーを信じます!」


「クロ……」



 クロのまっすぐで迷いのない言葉に、私の胸の奥で暖かいものが広がっていく。

 安堵の笑みが自然と頬に浮かんだ。


 いつも迷わずに、私の味方をしてくれるのだ。



「————分かった————従う」



 チカも深く頷いて、同意した。

 無表情でありながらも、覚悟を決めたような目をしている気がした。


 そうと決まれば————作戦開始だ。



 私、クロ、そしてチカの3人はもう一度作戦内容を確認し合う。


 そして、エンシェントドラゴンの方を見据えた。

 レオナ、レックスの二人と、死闘を繰り広げている。

 硬い鱗と鋼がぶつかり合う音が、戦場に響き渡っていた。


 今まさに命を懸けて戦っている二人のためにも、頑張らなきゃ。



 全員、戦闘態勢に入った。



「————行きます!」



 私達は一斉に走り出した。

 クロが先頭を切って進路を開き、立ちはだかる魔物達を次々と斬り捨てていく。

 血しぶきが宙を舞い、断末魔の叫びが響く中を、私はチカを背負ってその後に続いた。


 三人が動き出したことに、戦場の向こうでレックスも気づく。



「レックスさん! お願いです! 私達をドラゴンの元まで援護してください!」



 私は喉が裂けそうになるほど、ありったけの力で叫んだ。

 レックスは何も言わずに力強く頷く。



「レオナ!」


「おっけー!!」



 レオナとレックスは息の合った連携で、エンシェントドラゴンの注意を引き続けた。

 巨大な爪と炎のブレスをかわしながら、必死にドラゴンの意識を自分達に向けさせている。



 ついに、エンシェントドラゴンの間合いに入る。

 その瞬間————



「————!? マリー! 危ない!」



 まるで精密な機械のようにドラゴンの行動パターンが一変した。

 今まで気を引いていたはずのレオナとレックスを完全に無視し、こちらにぎろりと凶悪な視線を向ける。


 次の瞬間、音速を超えるような速さで尻尾による奇襲攻撃が飛んできた。



「避けろっ!!」



 尻尾攻撃のあまりの質量と速度。

 風圧だけで身体が吹き飛ばされそうだった。


 避けられない————



 クロが咄嗟に私に覆い被さり、被弾を覚悟して目を固く閉じた。


 その時————



「————おるあああああああっ!!」



 横から灰色の閃光が走り抜けた。


 負傷を負っていたはずの武者丸が、渾身の力を込めてドラゴンの尻尾を切り刻んだのだ。

 黒い血液が噴水のように吹き上がる。



「武者丸!!」


「————ったく……足手纏いには絶対にならねえ……」



 包帯で巻かれた傷を苦しそうに抑えながらも、武者丸は血で滑る剣を力強く振り抜いた。

 痛みを堪えながらも、彼は私たちを助けてくれたのだ。



「レオナ!! てめえも意地見せやがれ!」


「言われなくても!!」



 地面に転がりながらも、武者丸は気合いの声をレオナにぶつける。


 その声に込められた信頼と激励。

 それに呼応するように、レオナが渾身の力を込めて、私たちの前で盾を構えた。


 レオナの盾が、ドラゴンの攻撃を真正面から弾き返した。



「ありがとう! 二人とも!」




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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