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第79話 もう戦えないなら、誰よりも頼れるバディに任せればいいじゃない

 作戦は明確だ。


 レオナとレックスが前に出て、ドラゴンの注意を引きつける。

 その間に、私とクロで、ドラゴンの弱点を分析する。



 気合を入れて、戦場に立ったつもりだったが、私の見込みは甘かった。


 体は既に限界に近づいており、頭がぼんやりとして息も苦しい。

 まるで深い霧の中を歩いているかのような意識朦朧とした状態だ。


 すぐにでも目を閉じ、その場に倒れたくなってしまう。



 しっかりするんだ。


 こんな戦えない、何の役にもたたない私でも、頼ってもらえた。


 だから、立たなきゃ。



 私はなんとか踏ん張って、漆黒のドラゴンの観察を続けた。


 鱗一枚一枚が夜よりも深い闇色に染まり、その巨体からは不気味なオーラが常に立ち上っている。

 今まで見てきたモンスターの何よりも禍々しい個体だった。



 すると、その時————



『オオオ————アアオオオオオ————————』



 ドラゴンが奇妙な鳴き声を上げた。

 それは地の底から響いてくるような、聞く者の魂を震わせる咆哮だった。


 その叫びに呼応するように、無数の影が現れる。

 モンスターの群れが、四方から私達に向かって迫ってくる。



「新手です!」



 クロの叫びが聞こえる。


 まずい。

 まさかモンスターを呼び寄せられるなんて。


 こいつらは、ドラゴンに召喚された兵士のようなものだ。

 私達はこの敵からチカと武者丸をなんとしてでも守らなければならない。



 どうすれば————


 気づけばモンスター達に囲まれていた。

 鋭い牙を剥き出しにした狼のような魔物、触手を蠢かせる軟体の化け物、骨だけになってなお動き続ける不死の戦士たち。


 私は腰元の剣に手をかけるが、手が震えて落としてしまう。

 私にはもう、剣をまともに握る力もなかった。



 ああ、もうだめだ————


 そう思った————その時だった。



「マリーは絶対大丈夫です!」



 声と共に、クロが目の前のモンスターを斬り捨てる。

 一閃の剣撃で魔物を両断し、クロが私の前に立った。


 大きく広げた腕で私を庇い、真っ直ぐな瞳で前方を見据える。


 あの時と同じだ。

 闘技場で、私を守ると宣言した、あの時と————



「大丈夫……マリーは絶対、大丈夫です!」



 クロの大きな背中。


 そうだ。

 私にはクロがいる。


 大切なバディが、全てを任せることのできる相棒が。


 彼がいるだけで、私は何でもできる。



 だから、私も————信じてみよう。



 仲間達を、クロを。


 そして、自分自身を。



 再び、私はドラゴンを見ることの集中する。


 先ほどよりも深く。

 熱暴走しそうになる頭を何とか押さえつけながら。


 思考を止めない。


 順番に整理していこう。

 冒険者としての経験が薄い私には、全てが新鮮だ。


 このステージは、瘴気に満ち満ちており、ニカチカの魔法なしには生きられない。

 グランドクエストとはそういうものなのか。

 それとも、何か仕掛けが……?


 エンシェントドラゴンは無制限の再生力を持っている。

 それは本当に無制限?

 生物としてそんなのあり得るの?


 エンシェントドラゴンは腐食の呪いを持っている。

 超再生力と対照的にある腐食の呪い。

 あるいは、自身の腐食を相手に押し付けているとも考えられる……?


 エンシェントドラゴンの生物を超越した動き。

 攻撃されても痛みも恐怖も感じない心なきモンスター。

 ただ純粋に、目の前の敵を屠ろうとする殺戮マシーン。



 これって————



「まさか————」



 必死に観察して、とある可能性に気づく。



「チカ!」



 私は迷わずにチカの名前を呼ぶ。

 小さな体の彼女に近づいて、耳打ちした。



「ちょっとやってみたいことがあるんだけど————」



 これは、あのドラゴンに勝利する可能性————いや。



 私たちが生き残る可能性だ。




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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