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第57話 グランドクエストに挑戦したいなら、前提クエストから攻略すればいいじゃない

 アンドレアス王国に存在する『グランドクエスト』

 世界最大規模で、最高難易度を誇ると言われている特別なクエストだ。


 しかし、その道は誰にでも開かれているわけではない。

 グランドクエストに挑むには、まず、前提となるダンジョンの攻略が必要となる。



 この王国は四方を山に囲まれており、その東西南北には、それぞれに異なる性質を持つダンジョンが口を開けている。

 四方向にあるそれぞれのダンジョンには、試練を越えた者にだけ与えられる鍵が眠っているのだ。


 この四つの鍵をすべて揃え、組み合わせることで、東ダンジョンの最奥に封じられた扉————『エンシェントドラゴン』へと通じる門が開かれる。



 よって、勇者達はすぐに伝説の竜へ挑むことはできない。


 まずは、四つのダンジョンを巡り、それぞれの鍵を手に入れること。

 それこそが、これから始まる冒険者としての旅の第一歩であり、本格的な冒険の幕開けとなるのである。





 *





 ひんやりとした湿気を帯びた空気が肌に絡みつき、不快な粘着感を残していく。

 石造りの古い壁からは絶えず水滴が滴り落ち、その単調なリズムが静寂を破って洞窟内に響いていた。



 ここは人の領域ではない、モンスター達の縄張り。


 僕達は、今まさにその魔の巣窟の中心部へと足を踏み入れていた。



「うぅ……やっぱり暗いの苦手……」


「大丈夫、大丈夫! マリーは私が守るから!」



 か細い声で不安を漏らすマリーに対して、レオナが持ち前の快活さを全面に出して励ましの言葉をかける。

 チーム全体の士気を支える彼女の明るい性格は、こういう状況でこそ真価を発揮するのだ。



 僕も横目でマリーを見る。


 つい先日、王宮での貴族たちとの不愉快な諍いで、マリーは見たこともないほど取り乱していた。

 あんなマリーの姿は見たことがなかった。

 表面上は平静を取り戻したように見えるものの、心の奥底に残った傷は完全に癒えているのだろうか。


 それ以来、マリーはいつもの調子に戻り、こうしてダンジョン攻略に参加している。



 もう、大丈夫なのか?


 いや————そうじゃないだろ。

 そこで僕が励まさなくてどうするんだ。



 僕もマリーに寄り添い、声をかけた。



「大丈夫ですよ。マリーは……僕が守りますから」


「う、うん……ありがとう……」



 マリーは薄っすらと頬を染めながら、小さく頷いて感謝の言葉を紡ぐ。



「……なんかさー、そこイチャイチャしてない?」


「し、してません!」



 レオナが眉をひそめて茶化すような指摘をすると、僕とマリーは慌てて同時に否定の声を上げた。

 それを見てレオナはくすりと愉快そうに笑い、再び前方へと向き直る。


 やっぱり、マリーの調子はいつも通りに戻っていると感じられた。



 勇者一行は周囲の気配を絶えず警戒しながら、薄暗いダンジョンの奥深くへと慎重に歩を進めていく。

 探索を開始してから既に一時間近くが経過しようとしていた、まさにその時であった。


 ズシン……と、地鳴りのような音が響く————



「————っ……来たぞ!」



 洞窟の奥から、巨大な影が姿を現した。


 それは天井に頭が届きそうなほど巨大な人型の怪物で、筋骨隆々とした体躯からは原始的な野性の力が溢れ出ている。

 虚ろで血走った双眸は理性の光を宿しておらず、ただ破壊への渇望だけが燃え盛っていた。



「トロル!」


「全員、配置につけ!」



 レックスの鋭い号令が洞窟内に響き渡る。

 仲間達は即座に反応し、それぞれが担当する戦闘ポジションへと素早く移動を開始した。



『ウオオオオオオオオオオッ!!』



 トロルが咆哮を上げながら、巨大な腕を叩きつけてくる。


 それにいち早く反応したのが、ラウムとレオナだった。

 盾を構えた二人が前に出て、巨体のトロルの攻撃を正面から受け止める。


 後方からは、魔法使いのニカとチカが詠唱を開始。

 魔法の光が暗闇を照らし、砲撃となってトロルに突き刺さった。



『グオオオオオオオオオオッッ!!』



「————今だ! 行くぞ!」



 そして、アタッカーであるレックスと武者丸が素早く斬りかかる。

 トロルの死角となる左右から電光石火の速さで斬撃を加えていった。



 阿吽の呼吸で繰り出される途轍もない連携力。


 しかし————



「僕達は……どこにいればいいんだ……?」



 完璧に統制された戦闘の渦中で、僕とマリーのバディだけが、まるで迷子のように立ち尽くしてしまっていた。

読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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