第49話 ドラゴンを倒したければ、バディを信じればいいじゃない
「来るよ!」
ドラゴンが喉奥で炎を溜め込み、煮えたぎる火球を勢いよく吐き出した。
灼熱の球体は空気を焼き焦がしながら、轟音と共に僕達へと迫ってくる。
ドラゴンと言えばの炎攻撃。
その身に喰らえば、ひとたまりもない。
「右です!!」
僕とマリーは息を合わせるように右へと身を躍らせ、間一髪で炎の軌道から逃れた。
焦げた草の匂いと熱気が頬を撫でていく。
ドラゴンの必殺技。
火を吹いた後は、絶好のチャンス————とはいかない。
脳裏にゴーキさんの厳しい声が響いた。
『遠距離で敵の飛び道具を受けた後はチャンスとは限らない。敵との間合いを見極めろ』
僕達は突撃しない。
以前までの僕だったら、このタイミングで敵の懐に飛び込んでいったことだろう。
だが、その時の僕とは、もう違う————
「マリー! この位置をキープします!」
「うん!」
ドラゴンの様子を慎重に見極めて前進し、距離を測りながら適切な位置で足を止めた。
この距離なら先程の火球を放った瞬間に反撃を叩き込める。
だがドラゴンもまた僕たちの意図を見抜いているかのように火は吹かない。
代わりに————途轍もないスピードでその鋭利な鉤爪を威嚇するように伸ばしてきた。
二人は地を蹴って左右に分かれ、なんとか致命的な一撃を回避する。
だが、それすらも読まれていたかのように、ドラゴンは体を捻りながら巨大な尻尾を鞭のように振り払った。
「!?」
視界いっぱいにドラゴンの岩のように硬質な尻尾が迫ってくる。
空気を切り裂く風切り音が耳を劈き、その攻撃が真っ直ぐマリーの方へと迫った。
咄嗟に前に出て庇いたいという衝動が頭を駆け巡る。
でも————そうじゃない。
僕はマリーの背後に回り込むように走り、その華奢な背中を両手でしっかりと支えた。
信頼の証として、僕の力を彼女に託す。
「ぐうっ!!」
マリーは剣を胸前で水平に構えて防御体制を取ると、迫り来る尻尾を必死に受け止めた。
銀色の刀身が衝撃で震え、金属の擦れる音が響いた。
しかし、ドラゴンの攻撃を完全に受け止めることはできず、マリーの体は宙に舞い上がり、僕もろとも後方へと激しく吹き飛ばされてしまう。
僕はマリーを抱きしめるように庇い、自分の背中で地面との衝撃を受け止めた。
石ころと土埃にまみれながら、二人はかなり後方まで吹き飛ばされた。
背中に痛みが走り、マリーの重みが胸に食い込む。
「クロ! ごめん……受け止めきれなかった……!」
「いえ、違います。僕の反応が一瞬だけ遅れて、支えきれなかったんです」
頭を切り替えよう。
まだ戦闘は始まったばかりだ。
すぐさま、二人は泥と草を払いながら体を起こし、剣の柄を握り直す。
ドラゴンは余裕を見せつけるように、翼を広げて威嚇の咆哮を上げていた。
「少しでも連携が崩れると一気に持ってかれる……もっと動きを合わせますよ!」
「分かった!」
マリーの返事には迷いがなく、その瞳には再び闘志の炎が宿っていた。
僕たちの絆は、この程度で折れるほど脆くはない。
二人は肩を並べ、決意を新たにしてドラゴンへと立ち向かっていった。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
もしよければ↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
ブックマークもお願いします!
あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




