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第47話 試練を超えたいなら、がむしゃらに頑張ればいいじゃない

 夜明けよりもわずかに早く、レックスは目を覚ました。


 ベッドから勢いよく身を起こすと、無駄のない動きで装備の確認と身支度を始めた。

 シャツの襟を整え、ベルトを締める。

 その腰には、日々使い込まれた剣がしっくりと収まる。


 身支度を終えたレックスは、静かに階段を下りて一階の食堂へ向かった。

 窓の外はまだ薄暗く、朝の光がわずかに差し込むだけの静かな時間帯。

 食堂の中もまた、まだ人の気配はほとんどなかった。



 それでも食卓には、しっかりとした朝食が並んでいた。

 湯気の立つ味噌汁と、竹の皮に包まれたおにぎりが人数分。


 温かい香りが立ち上り、丁寧に準備されたことが一目でわかる配置だった。



 厨房から顔を出した宿のオーナーが、気配を察したようにこちらを見た。



「マリーは?」


「今朝も早くに来ましてね。朝食を整えたら、すぐに出ていきましたよ」


「そうか」



 レックスは椅子を引いて腰を下ろし、おにぎりを一つ手に取った。

 ぱくりと口に運び、ひと噛み。



「……うん、うまい」



 素朴な味だが、丁寧に作られているのを感じる。

 この数日、以前のような豪華な朝食は出てこなく、このような軽食が多くなっていた。

 だがこんなおにぎりでも、マリーが丹精込めて作っているのが伝わってくる。


 冒険者の朝食であれば、こっちの方が合ってるしな。



 ふと、窓の方に目を向ける。

 薄い雲の切れ間から、朝の光が街の屋根を照らしていた。



 マリーとクロの試練の日まで、あと一週間。


 二人の様子は、明らかに変わってきている。

 以前までのどこかギクシャクしたアンバランスさは影も形もない。

 そう、二人で頑張るという覚悟に近いものを感じるのだ。


 目の奥に火が灯ったようだった。

 自分達に何ができるのかを模索し、行動に移し、諦めずに継続している。



 いい傾向だ。

 私が何か言わずとも、彼らは動いている。

 気づき、動き、鍛えている。



 だが————試練をクリアできなければ、勇者の仲間にはなれない。

 私達は仲良しクラブではないのだ。



 壁を越えた者だけが、その先へ行ける。



 それでも——


 二人なら、きっと———



「ああああっ! またレックスがおにぎり全部食べた〜〜!!」



 レオナの声が、食堂に響き渡った。






 *




 冒険者修練場。

 金属同士がぶつかり合う乾いた音が、広い空間に反響している。



「はあああっ!!」


「ふんっ!」



 マリーの剣が弧を描いて振り下ろされ、クロがそれを受け止める。

 火花が散り、二人の足が間合いを一定に保とうと、床を踏みしめる音が響く。


 だいぶ様になってきた。


 数週間前とは見違えるほど、剣の動きに無駄がなくなっている。

 かなり早いペースで剣を振ることができている。


 この数日間、迷うことなく、余所見もすることなく、ただこの真剣組手に集中してきた結果だ。


 相手の動きを読み、それに合わせて自分の剣を動かす。

 互いを信頼し、連携することが徐々に出来てきた。



 だが、まだ足りない————


 勇者という一級冒険者のあの人達に追いつくには、もっと————



「もっとペース上げますよ!」


「いいよ!」



 二人の声に迷いはなかった。

 むしろ、より厳しい鍛錬を求める強い意志が込められている。


 汗が頬を伝い落ちても、息が荒くなっても、彼らは剣を止めることはない。



 そうして、日はあっという間に過ぎて行き————



 ついに試練の日になった。

読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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