第45話 夜這いされるなら、受け入れてもいいじゃない
(ちょちょちょちょちょちょ……ええ〜〜〜!?)
私は突如カーテンを開けて入ってきた侵入者に背を向け、寝たふりをする。
侵入者とはそう————冒険者のバディであるクロ。
クロはマリーが完全に寝ていると思い込んでいるが————
この私————マリーはガッツリ起きていたのだ。
な、何してんのこの人!?
年頃の女の子が寝ているところにやってくるなんて————
(まさか————夜這い!?)
その可能性が頭をよぎって、私の頬は夕焼けのように真っ赤に染まった。
胸の奥で心臓が太鼓を乱打するように激しく脈打ち、まるで全身の血液が一気に頭上へと駆け上がったかのようだった。
もしかして、そういうこと……?
私……これからあんなこととかそんなこととかされちゃうってこと?
脳がさまざまな光景でいっぱいになる。
わ、私、経験とかないんだけど……
前世でも彼氏とかいなかったし、これなんかそういう経験もないというか……
初めては、どんな顔してればいいの?
ね、寝たふりしてた方がいいのかな?
————というか急すぎない?
昼間とかそんな空気に全くならなかったよ?
それが急に夜になって夜這いて……
これもバディとして大切なことなのかな……?
最近の子はそんな感じなの?
ドキドキしながらも、寝たふりをやめられないままでいると————
ついに、私の肩に彼の手が触れる。
「————っ!」
思わず喉の奥から悲鳴が漏れそうになり、私は必死にそれを飲み込んだ。
予想していたよりもはるかに優しい感触に、心の準備ができていなかった私は更なる混乱に陥る。
彼の手は慎重に、まるで壊れ物を扱うかのように私の身体を仰向けにしようとしていた。
瞼を固く閉じているため視覚的な情報は得られないものの、彼の息遣いや体温から、その顔が私のすぐ間近にあることが感じ取れた。
鼻腔をくすぐる彼の匂いが、私の理性を更に揺さぶる。
これから何されるの……?
まずは————キス、とか……?
ど、どうしたら————
————ってか、あれ……?
なんで私————抵抗しないのよ。
「————やっぱ無理!!」
「あいたっ!」
耐えきれなくなった恥ずかしさと困惑が爆発し、マリーは反射的に彼の頬を力いっぱい叩きつけた。
乾いた音が静寂を破り、部屋中に響き渡る。
激しい動悸に合わせて肩を上下させながら、私は勢いよく上体を起こした。
————そうよ。
最初からこうやって拒否ればよかったじゃん。
付き合っても、結婚もしてない相手とこんなこと————
なんで私、覚悟を決めて、受け入れようとしてたのよ……?
「ゴ、ゴーキさん! 起きたんですね!?」
だが、クロの夜這い?はこれで終わらなかった。
彼の瞳には期待と興奮の光が宿っており、まるで獲物を前にした肉食動物のような迫力で私に迫ってくる。
その表情は確かに猛獣を彷彿とさせ、私は思わず身を引いた。
「は、早く修行の続きを————いや、その前にまず王宮から————」
「とっとと出てけケダモノ〜〜!!」
深夜の王宮に、私の平手打ちによる乾いた音が再び響き渡ったのである。
静寂を破るその音は、石造りの廊下にこだまし、夜警の兵士たちの耳にまで届いたかもしれない。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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