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第40話 強くなる方法が分からないなら、分かる人に教えて貰えばいいじゃない

「お願いします! 僕達を強くしてください!」



 冒険者修練場の朝。

 朝露がまだ乾ききらない修練場に、必死な声が響く。


 私とクロは二人揃って、ラウムに頭を下げていた。



「き、急にどうしたんだ? こんな朝から……」



 困惑の色を隠せずに、ラウムは眉をひそめた。

 朝食を済ませるや否や、私たちは彼の元に駆け寄り、有無を言わさず修練場まで引っ張ってきたのだ。


 朝風呂上がりでまだうっすらと髪が濡れている。



「皆さんに認められるくらいに強くなりたいけど、自分達だけで修行するのには限界があります……だから、ずっとレックスさんの隣で戦ってきたラウムさんに、どうしたらこれ以上強くなるのかを教えて欲しいんです!」



 前の二週間で、クロから剣の基本的な振り方は教わった。

 だが、ただ闇雲に剣を振り回しているだけで、試練のドラゴンに勝てるとは思えない。


 勇者に認められるとは、到底思えない。


 ここで鍵になってくるのは、私たち二人がどう連携して強くなるかにある。

 レックスがバディで強くなることを強調したのは、私とクロの二人でしかできないことがあるのではないだろうか。


 それを探るためにも、まずは二人で何ができるか————

 どんな修行をすべきかを考えなければならないのだ。



「むうう……そんなこと言ったってなぁ。俺にも都合が————」


「お願いします!!」



 私は一際大きい声で、ラウムに頭を下げた。


 一国の王女がただの冒険者に頭を下げる。

 本来なら決してあってはならない光景かもしれない。


 だが、そんなところにプライドを持ってなんになる。



「……強くならないといけないんです。私は今まで、強くなるための努力を、何かを成し遂げるための努力を何もしてこなかった————」



 握りしめた拳が、小刻みに震える。


 前世では、何もせずただ傍観して、周りに流されて逃げていた。

 そして、大切なものを失ったんだ————



「でもこのままじゃ————このまま何もしないままじゃ、隣で頑張っている彼に失礼です……!」



 私の脳裏に、いろんな姿がよぎる。


 誰よりも早く起き、薄暗い中でひたすら剣を振り続けるクロの孤独な姿。

 私に逃げるよう叫びながら、一人で冒険者たちの前に立ちはだかった勇敢な背中。


 そして、苦しい生活の中でも私の前では決して弱音を吐かず、温かな笑顔を絶やさなかったお母さん————



 もう、みんなを裏切りたくない。

 私の大切な人を、裏切りたくはない。



「だから、私も強くならなきゃ……ラウムさん、どうかお願いします!」



 心の底からの懇願だった。

 人に対してこれほど真剣に何かを頼むのは、前世を含めても初めてのことかもしれない。


 静寂が流れた。

 隣でクロも変わらず頭を下げ続けてくれている。


 やがて————ラウムが深いため息をついた。



「分かった……マリーの本気度が伝わったよ」



 彼の表情から困惑が消え、代わりに真剣さが宿っていた。


 私達の依頼を受けてくれるみたいだった。


 よかった……


 胸をなでおろす。

 もしかすると断られるのではないかと内心ヒヤヒヤしていたのだ。



「でも、お前達が確実に強くなる方法なんて俺は知らない。あくまでバディを組んでいる冒険者が皆やっているようなことを教えるだけだ。それでもよけりゃ、一個いい訓練を教えてやる」



 そう言うと、ラウムは地面に置かれていた練習用の剣を二本、私たちの足元に放り投げた。

 金属が地面に落ちる鈍い音が響く。


 そして両手を腰に当て、挑戦的な眼差しで告げるのだった。



「まあ、なかなかきついと思うが、ついてこれるか?」


「「はい!!」」



 私とクロの声が完璧に重なった。

 闘志が胸の奥で燃え上がる。



 上等だ。


 やってやろうじゃんよ————本当の冒険者の修行……!



読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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