第173話 伝えたければ、ちゃんと伝えればいいじゃない
「ごめん、私の口からちゃんと言うね」
ふうう……と、特大の深呼吸。
胸に溜まっていたものが、一気に吐き出される。
そして、ゆっくりと口を開き始めた。
「私、自分に自信がなかったんだ」
この世に生まれた時から。
いや————この世に生まれる前からもずっと、自分に自信がなかった。
努力しても無駄だという考え方が、小さい頃から染み付いてた。
この世は運と才能なんだって。
いつしか、どこか諦めていた。
「諦めて、投げ出して、絶望してた————でも、その時に出会ったのが、クロなんだよ」
胸の奥から込み上げてくるものを、何とか言葉に変える。
鳥籠から出してくれたのは、クロだ
クロに出会わなければ、ずっと王宮というカゴに閉じ込められたままだった。
「私を変えてくれたのは勇者の皆だけど————私をそこに連れ出してくれたのは、間違いなくクロだよ」
感情が溢れ出す。
堰き止めていたものなどとうになくなり、全て決壊する。
唇が震え、目は潤う。
熱い胸の内を全部伝えたくなる。
クロの瞳を、ずっと見ていたくなる————
すると、彼も大きく深呼吸をした。
震える瞳で、私をまっすぐと見つめてくる。
「僕も————マリーに、独りよがりな自分を変えられました」
ずっと一人で戦うことにこだわっていた。
それが、二人で戦うことの強さを覚えた。
だからこそ、君を救い出せた。
二人なら、なんでもできると思ったから————
「————僕に新しい世界を見せてくれて、本当にありがとう」
クロの言葉が、心の奥底まで届く。
彼の言葉に、胸が温かい想いで満たされていく。
頬を染め、綺麗な笑顔を浮かべるクロ。
その姿は何よりも素敵で、私の感情を昂らせた。
私とクロの視線が絡み合う。
二人の距離が、近く感じられた。
次の言葉はお互い————自然に漏れていた。
「僕は、マリーのことが好きです」
「私も、クロのことが大好き!」
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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