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第172話 告白したければ、人格を変えればいいじゃない

「————うん、じゃあ邪魔者は先に行ってるね〜〜」


「え?」



 すると、急にレオナが後ろに振り返り,足早に立ち去ろうとする。

 その動きがあまりにも唐突で、私は思わず声を上げてしまった。


 え? そんな急にドライ?



「あ? おいどういうことだ? ちょ————引っ張るんじゃねえ!」


「「いいから————武者丸は邪魔————」」



 ニカチカが、困惑した表情の武者丸の両腕を掴む。

 訳のわからないという表情の武者丸を強引に引っ張っていった。



「先に行ってるぞクロ! ゆっくりでいいからな!」



 ラウムとレックスも広場を去っていってしまった。

 彼らの背中が小さくなり、やがて見えなくなる。


 静寂が訪れ、風の音だけが耳に響く。

 残されたのは、私とクロの二人きりとなった。



「えっと……」



 心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

 急に2人きりにされて、戸惑いのあまり声が出ない。


 さっきまであんなに伝えたいことがあったはずなのに————

 いざとなると、何を話していいか分からない。



 顔が熱い。


 煙が出そうだ。



 よく見ると、クロの顔も赤い。

 目線がキョロキョロとしていて、落ち着きがなかった。



 クロも、同じ気持ち……?


 私は、クロに何を伝えようとしてたんだっけ?



 感謝? お別れ?


 それとも————



 気まずいような、歯痒いような空気に包まれる。

 時間だけが、ゆっくりと流れていく————



「そ、そうだ!」



 その時、クロが苦し紛れに声を出した。

 後頭部を掻き、明後日の方向を見ながら、口を開く。



「ゴーキさんにも挨拶しよっかな〜〜なんて……」



 提案の内容も予想の斜め上だった。

 あんた、ゴーキさん好きすぎだろ。


 まあ、お世話になったみたいだし、お別れを言いたくなるのも分からなくない。



「分かったよ。ちょい待ち」



 クロの妙な提案で、私も落ち着くことができた。


 思考を切り替えて、意識を集中させる。

 先の騒動を経て、私は自身の人格をある程度自由に切り替えることができるようになっていた。


 トリガーは、昔————前世のことを思い出すことだ。



「少年」



 私————ゴーキは、低く凛とした声を出す。

 空気が一変し、纏う雰囲気すら別人のものになった。



「ゴーキさん、僕は————」



 クロが何かを言いかけたところを、ゴーキは手を突き出して遮った。

 そして、真剣な顔でクロに話し始める。



「少年、男から告白しないとはどういうことだ……!」


「え?」



 ポカンとクロが口を開けた。

 目を見開き、完全に思考が停止している様子だった。



「この子のことが好きなら、お前から告白するべきだ」


「ちょちょちょ……ゴーキさん!?」



 ゴーキの言葉の意味を理解した瞬間、クロの顔が茹でダコのように赤く染まった。

 何を言っているかを遅れて認識したクロは、顔をこれでもかと赤くさせて、ゴーキを止めようと慌てふためいている。


 だが、ゴーキは止まらない。



「なぜなら、この子はお前のことが————ちょっと!! 何言い出そうとしてんのよ!!」



 その時、私が無理やり意識を取り返した。


 人格が変わった瞬間、ブワッと汗が漏れ出る。

 一気に体の熱が上がった気がした。


 そして、徐にクロと目が合う。


 彼の瞳が、私の顔を真っ直ぐ見つめていた。

 視線を逸らしたくても逸らせない。



「————今の聞いてましたか…?」


「う、うん……クロも私が何を言おうとしてたか————」


「はい……なんとなく分かりました」



 お互いに顔を赤くする。


 風が吹いて、髪が揺れた。

 再び、静かな時間が流れる。



 こんなんじゃダメだ。


 最後なんだから、もっとちゃんと伝えよう。



「ごめん、私の口からちゃんと言うね」




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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