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第171話 最後なら、伝えたいことを伝えればいいじゃない

「クロ!!」



 胸の高鳴りを抑えられないまま、私は大声で彼の背中に呼びかけた。

 広場の石畳を夢中で蹴り、息を切らす。


 クロ達は出発する直前だった。



「マリー!」



 朝の光を浴びて長く伸びた影が、こちらへと向き直った。


 革の胸当てに剣を腰に下げた、戦い慣れた冒険者の姿。

 私が最初に路地裏で会った時と、同じ姿だった。



「マリイイイイイイイ!!」


「ふごっ!?」



 クロに気を取られていると、レオナが飛びついてくる。



「会いに来てくれたの!? ありがとね!」


「あはは、当然だよ」



 レオナの温もりが腕の中に溢れる。

 その後ろから、レックス達————他の皆も私の方に来てくれた。


 仲間達の足音が近づいてくる度に、胸が熱くなる。



「体調は大丈夫か? マリー」


「はい! 絶好調です!」



 レックスはいつもの優しい笑顔で、私に話しかけてくれる。

 他の皆も、いつも通りだ。


 やっぱり皆の前では、王女ではない本当の私に戻れるような気がした。



「こんなところまで来てどうしたんだマリー、俺達が寂しくなってついてこようってのか?」


「そんなわけないじゃないですか、バカ丸」


「そうよバカ丸」


「「バカ丸」」


「っておい! なんの躊躇いもなく言うようになったなぁ!」



 武者丸のいつものいじりも心地よい。

 笑い声が広場に響き渡り、胸の奥が温かくなる。


 けれど、その温もりが切なさに変わるのを感じていた。


 この時間も長くは続かないのだ。



 私は気を取り直して、皆に向き合う。



「急いで来たのは————どうしても、最後に皆に伝えたいことがあったんです」



 私が声音を真面目なものにすると、皆黙って私の言葉を待ってくれた。

 気持ちの良いそよ風が、正面にいる皆の髪を揺らし、私の頬を撫でる。



 そうだ。


 私は————皆に感謝と、最後のお別れを言いに来たのだ。



「私、皆のおかげで変われたんです」



 レックス達から————最強の勇者達から、色々なことを教わった。



 強くなる方法。

 皆で力を合わせること。


 視点を広くすること。

 こんな私でも、勇者達の役に立てること。



 努力が、無駄にならないって。


 自分の力になるって、教えてくれた————



「これからも————頑張ります! だから、レックスさん達も、絶対グランドクエスト制覇してきてください!!」



「ああ、任せろ」



 レックスは大きく頷くと、私の方に手を伸ばす。

 優しく、頭を撫でてくれた。




読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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