第164話 ドラゴンを倒したいなら、本気を出せばいいじゃない
「その宮廷魔法士より————私達の方が————」
「優れてるって————証明————」
死と腐敗の臭いを纏った黒い瘴気が、まるで生き物のように空間を侵食していく。
漆黒の巨体————アンデッド・エンシェントドラゴンが眼前に降り立った。
大地が悲鳴を上げるような咆哮をあげ、周囲の空気が凍りつく。
その圧倒的な存在を前に、ニカとチカ————双子の魔法使いが一歩も引かず詠唱を開始する。
二人の唇が同じリズムで動き、魔力の奔流が身体から溢れ出していく。
「「とっておきの————大魔法————」」
詠唱が重なった。
足元から青と紅の魔法陣が展開され、それらは複雑な幾何学模様を描きながら螺旋状に絡み合っていく。
魔力の密度が臨界点に達し、空間そのものが軋みを上げ、歪み始めた。
『ディザスター・エクリプス』
魔法名の宣言と同時に、天地を貫く破壊の奔流が解き放たれる。
青白い光条と深紅の炎が一体となり、流星群のような輝きを放ちながらドラゴンへと殺到した。
直撃の瞬間、光と闇が激しく反応し、竜の胴体を完全に呑み込んでいく。
纏わりついていた闇の瘴気が、竜の叫びと共に四散していく。
『グオオオオオオオオ————』
だが、それだけではまだ終わらない。
光の裂け目から、再び巨大な爪が這い出し、唸り声を上げていた。
「あとは————任せた————」
ニカチカの大魔法によって、アンデッド・エンシェントドラゴンとの最終決戦の火蓋が切られる。
双子の背後から、二つの影が稲妻のように飛び出した。
銀の毛並みを風になびかせ、両手に刀剣を携えた獣人————そして、煌めく橙色の鎧と巨大な盾で武装した女冒険者。
武者丸とレオナ。
戦場を駆ける二人の戦士だ。
「武者丸! たまには足引っ張らないでよね!」
「うるせえ! こっちのセリフだ!」
互いを鼓舞する怒号が戦場に轟く。
次の瞬間、武者丸の身体が弾丸のように前方へと跳躍した。
獣人特有の跳躍力を活かし、一息に距離を詰めると、双剣を交差させて振り抜く。
二筋の閃光が空気を裂き、ドラゴンの左前脚の骨に深々と食い込んだ。
その隙を逃さず、レオナが突き進んだ。
ドラゴンの尾が鞭のようにしなり、横薙ぎに襲いかかってきた瞬間、レオナは盾を構えて正面から受け止める。
金属と骨が激突し、火花が散った。
「おらぁああああっ!!」
盾が尾を弾き返し、衝撃波で地面の砂塵が爆発的に巻き上がった。
銀と橙の閃光が、ドラゴンの足元を削りながら、踊るように舞っていた。
レオナの防御が武者丸の攻撃を可能にし、武者丸の速度がレオナの間合いを作る————
信頼に裏打ちされた一瞬の共鳴。
まさに、神技の連携であった。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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