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第159話 踏み躙られたら、復讐すればいいじゃない

 30年前、王宮に宮廷魔法士がいた。


 彼女は周囲の誰と比べても群を抜いて魔法に長けており、百年に一度現れるか否かという稀代の逸材だと称されるほどの、まさに天才的な魔法士だった。


 先代の国王がその類稀なる才能に深く感銘を受け、特別に王宮住まいの専属魔法士として迎え入れたのだという。


 そして————彼女はそこで生涯をかけて魔法の研究をしていた。



 当時、彼女と肩を並べられるほどの実力を持つ魔法使いは、王国のどこを探しても存在しなかった。


 宮廷という華やかな場所でありながら、ただ一人研究室に籠もり、黙々と魔法の探求を続ける日々————



 それはきっと、想像を絶するほどの孤独なものだっただろう。


 誰も彼女の見ている世界を理解できず、誰とも魔法について対等に語り合うことができなかったのだから。



 それでも彼女は、揺るぎない信念を持って魔法に心血を注ぎ続けた。


 王国の発展のため、人々の幸福のためにと、日夜新しい魔法の研究に励んでいたのだ。



 睡眠時間を極限まで削り、時には何日も研究室から一歩も出ずに実験を繰り返す。


 ただひたすらに、国王に認められたい、自分の価値を証明したいという一心で、努力を重ね続けたのである。



 だが、貴族出身でもないその宮廷魔法士は、当時の宮廷では居場所がなかった。


 平民出身のその宮廷魔法士は、当時の厳格な身分制度が支配する宮廷社会では、決して受け入れられる存在ではなかったのだ。



 むしろ、どうして下賤な者が王宮に出入りしているのだと、忌み嫌われるようになった。



 こうして、その宮廷魔法士は、貴族達から迫害を受けることになったのである。



 彼女が受けた仕打ちは、常人であれば精神が崩壊してしまうほどの、想像を絶する苛烈なものだったという。



 研究室に忍び込まれ、何年もかけて蓄積した研究資料が灰になるまで燃やされた。


 食事には毒が盛られ、何度も生死の境を彷徨った。


 街を歩けば石を投げられ、汚物をかけられ、「魔女」「悪魔の手先」と罵声を浴びせられた。



 しまいには————家族を殺され、愛する人も殺された。



 どうして、こんな目に遭わなければならないのか。


 どうして、真っ当に努力しているのに、こんなにも虐げられないといけないのか。



 彼女は世界を呪った。



 努力しても意味がない。


 自分は身分の低い者だから、認められない。



 だからって————こんな仕打ちは、あんまりだ。


 次第に彼女の中で、復讐の気持ちが高まっていった。



 そんな中、アンドレアス王国に勇者が来訪した。


 この地方のグランドクエスト制覇————エンシェントドラゴン討伐のためだ。



 困難極まるクエストを攻略するため、勇者たちは最高峰の実力を持つ魔法士を強く求めていた。


 その要請を受けた国王は、迷うことなく宮廷魔法士に依頼することを決定し、彼女はその期間に限り、勇者の一行に加わることとなったという。



 宮廷魔法士は、この機会こそが自分の復讐を果たせる千載一遇のチャンスだと直感した。


 エンシェントドラゴンという、人知を超えた強大な力を持つ存在————


 それを利用すれば、憎き貴族たちに復讐し、王国そのものを完全な滅亡にまで追い込むことができる。



 そんな邪悪な計画が、彼女の歪んだ心の中で形作られていったのだ。



 そして————勇者達はエンシェントドラゴンを討伐した。



 その時に、宮廷魔法士は討伐したエンシェントドラゴンに不死の呪いをかけたという。


 いつか王国を滅ぼせと、単純な命令を含ませて————



 ダンジョンが閉じ、20年の封印の中で、呪いは強さを増していった。


 そして、今回、レックス達による攻略によって、再びダンジョンの扉が開かれたことで————長い眠りから目覚めた呪いが、ついに解き放たれてしまったのである。



 こうして、アンデッド・エンシェントドラゴンという、死すら超越した究極の破壊者が、この世界に解き放たれた。



 長きにわたる復讐を果たすため————





読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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