第157話 勇者が揃えば、もう怖いものなしじゃない
「「来た」」
一番後ろにいたニカとチカが、同時に声を上げた。
仲間達全員が、後ろを振り向く。
遠くから響く馬蹄の音が、次第に大きくなる。
地面を蹴る力強い馬の足音が戦場に響き渡る中、二つの人影が空中に舞い上がった。
疾走する馬から軽やかに飛び降りた二人の姿————
冒険者クロ。
そして、冒険者マリー。
二人の新たな勇者が、レックス達に合流した。
「————お待たせしました! マリーを連れて、合流しましたよ!!」
クロが大声で報告する。
戦況を打開するかもしれない希望の声だった。
これによって、勇者8人が勢揃いしたのである。
グランドクエストを共に制覇した、8人が————
「調子はどうだ! マリー!」
「絶好調だよ!」
————私はレックスにそう答えながら、腰に差した剣をゆっくりと鞘から引き抜き、眼前の恐るべき敵を見据えた。
ダンジョンの奥深くで初めて遭遇した時と何ら変わらない、圧倒的で凶悪な存在感。
その邪悪なオーラは空気そのものを重くし、近づく者全てを威圧していた。
呪いの強さは肌を刺すような感覚となって伝わってきて、思わず萎縮してしまいそうになる。
「見ての通り、戦況はあまりいいとは言えない」
王国の敷地————国民の生活領域まであと数十メートルといったところまで押し込まれていた。
6人だけでは、魔物達の全てを食い止めることはできず、一部のモンスターに王国への侵入を許してしまっている。
たとえ私とクロが満を持して加勢に駆けつけたとしても、たった二人が増えただけでは根本的な戦力差は埋まらない。
数の上では依然として圧倒的不利な状況に変わりはないのだ。
普通に考えれば、そう結論づけるところだが————
「だがその顔————何か策を持ってきたって顔だな」
「……!」
私は真っ直ぐな瞳を見つめ返しながら、確信に満ちた表情でこくりと頷く。
そう————私達はこのアンデッド・エンシェントドラゴンの正体、そして、討伐方法を教えられていた。
私のお母様、王妃クセルから————
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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